[ON-1-1] Self Assessment Burden Scale-MotorとFIM-Mの関連
【はじめに】患者の日常生活活動(以下，ADL)能力を回復期病院入院中のみならず，自宅復帰後も把握し続けることは，患者の安定した在宅生活の継続に重要である．入院中のADL評価は，Functional Independence Measure(以下，FIM)が主に用いられる．しかし，退院後のFIMの継続実施は相応のコストがかかるため困難との報告がある（yamada et al,2006）．そのため，我々はADL能力のスクリーニングを目的に介護者が簡便に使用できるADL評価尺度としてSelf Assessment Burden Scale-Motor(以下，SAB-M)を開発した．SAB-Mは7項目(食事，下衣更衣，移乗，入浴，移動，階段，排尿管理)を全介助の1点から自立の各4点の4段階で評価し，得点をlogitに変換できる間隔尺度であり，信頼性と妥当性が確認されている(Kaneda et al,2020）．
開発後，SAB-Mを用いて回復期病院退院後の患者の追跡調査を行い，ADL能力低下時には回復期病院へ再入院してリハビリテーションを実施し，自宅復帰を促進する取り組みを行っている．SAB-Mは，間隔尺度であるため2回実施することで能力変化が有意か否かを検討可能である．しかし，回復期病院退院後初回調査では比較のための前回評価が退院時FIM得点となり，変化の有無を検討困難であった．そのため，SAB-M logitsからFIM-Motor(以下，FIM-M)得点を予測可能であれば運動的側面においては退院後初回調査時から退院時能力との差異を検討できると考えた．今回はSAB-M logitsからFIM-M得点の予測式が作成可能かを検討した．
【方法】対象は，回復期病院に入院し，本研究に同意した患者198名とその主介護者であった．患者の内訳は，平均年齢72.6±14.0歳，性別は男性84名，女性114名，脳血管疾患98名，運動器疾患71名，廃用・その他の疾患29名，退院時FIM-Mは平均73.6点，退院時FIM-Cognitiveは平均28.9点，SAB-M得点は平均1.75 logitsであった．主介護者の内訳は，年齢61.7±12.8歳，性別は男性85名，女性113名であった．方法は，主介護者が退院間際に患者のSAB-Mを実施し，当該患者の担当療法士がFIMを実施した．分析は，従属変数にFIM-M得点，独立変数にSAB-Mの各項目logitsとする重回帰分析を強制投入法で実施した． なお，統計処理にはSPSS Statisticsver.24（IBM社製）を用い，Durbin-Watson比で残差の正規性，Variance Inflation Factor（VIF）で多重共線性を確認した．有意水準は5％とした．
【結果】移乗（β＝0.36），排尿管理（β＝0.26），下衣更衣（β＝0.2）が有意であった．Durbin-Watson比は2.23，VIFは3.3～4.1であった．自由度調整済みR2は0.84であった．重回帰式は予測FIM-M得点＝（0.53×食事logits）＋（1.26×下衣更衣logits）＋（3.25×移乗logits）＋（0.37×清拭logits）＋（0.42×移動logits）＋（0.86×階段logits）＋（1.96×排尿管理logits）＋55.23であった．
【考察】Durbin-Watson比より正規性が確認でき，VIFより多重共線性は認められないことが分かった．自由度調整済みR2より高い精度でSAB-M logitsからFIM-M得点を予測可能と考える．移乗，排尿管理，下衣更衣項目が有意に選択された理由は，津坂ら(2013)はトイレ移乗やトイレ動作を和泉ら(2012)は排尿の失敗がFIMの予測因子に適していると報告している．小川ら(2013)は，下衣更衣はトイレ動作との関連が強いとの報告もあり，トイレ動作に関連がある項目が予測しやすい因子として選択された可能性を考える．
開発後，SAB-Mを用いて回復期病院退院後の患者の追跡調査を行い，ADL能力低下時には回復期病院へ再入院してリハビリテーションを実施し，自宅復帰を促進する取り組みを行っている．SAB-Mは，間隔尺度であるため2回実施することで能力変化が有意か否かを検討可能である．しかし，回復期病院退院後初回調査では比較のための前回評価が退院時FIM得点となり，変化の有無を検討困難であった．そのため，SAB-M logitsからFIM-Motor(以下，FIM-M)得点を予測可能であれば運動的側面においては退院後初回調査時から退院時能力との差異を検討できると考えた．今回はSAB-M logitsからFIM-M得点の予測式が作成可能かを検討した．
【方法】対象は，回復期病院に入院し，本研究に同意した患者198名とその主介護者であった．患者の内訳は，平均年齢72.6±14.0歳，性別は男性84名，女性114名，脳血管疾患98名，運動器疾患71名，廃用・その他の疾患29名，退院時FIM-Mは平均73.6点，退院時FIM-Cognitiveは平均28.9点，SAB-M得点は平均1.75 logitsであった．主介護者の内訳は，年齢61.7±12.8歳，性別は男性85名，女性113名であった．方法は，主介護者が退院間際に患者のSAB-Mを実施し，当該患者の担当療法士がFIMを実施した．分析は，従属変数にFIM-M得点，独立変数にSAB-Mの各項目logitsとする重回帰分析を強制投入法で実施した． なお，統計処理にはSPSS Statisticsver.24（IBM社製）を用い，Durbin-Watson比で残差の正規性，Variance Inflation Factor（VIF）で多重共線性を確認した．有意水準は5％とした．
【結果】移乗（β＝0.36），排尿管理（β＝0.26），下衣更衣（β＝0.2）が有意であった．Durbin-Watson比は2.23，VIFは3.3～4.1であった．自由度調整済みR2は0.84であった．重回帰式は予測FIM-M得点＝（0.53×食事logits）＋（1.26×下衣更衣logits）＋（3.25×移乗logits）＋（0.37×清拭logits）＋（0.42×移動logits）＋（0.86×階段logits）＋（1.96×排尿管理logits）＋55.23であった．
【考察】Durbin-Watson比より正規性が確認でき，VIFより多重共線性は認められないことが分かった．自由度調整済みR2より高い精度でSAB-M logitsからFIM-M得点を予測可能と考える．移乗，排尿管理，下衣更衣項目が有意に選択された理由は，津坂ら(2013)はトイレ移乗やトイレ動作を和泉ら(2012)は排尿の失敗がFIMの予測因子に適していると報告している．小川ら(2013)は，下衣更衣はトイレ動作との関連が強いとの報告もあり，トイレ動作に関連がある項目が予測しやすい因子として選択された可能性を考える．