[ON-1-3] 作業療法士が障害者福祉施設でコンサルテーションする意義
【はじめに】日本作業療法士協会は,2018年に公表された「第三次作業療法5か年戦略」に医療専門職である作業療法士が医療機関以外の場においても作業療法(OT)の提供を掲げている.当院は精神科が母体である病院の為,障害者福祉施設よりコンサルテーション(コンサル)の依頼を受け,月1回7時間の施設訪問を筆者が担当している.今回,強度行動障害者のコンサルにより不適応行動の修正だけでなく支援者や他の利用者への波及効果も見られたので報告する.本発表は,当院の倫理委員会で承認を得ている.本報告に際し開示すべきCOIはない.
【対象】40代男性,BMI30,最重度知的障害・自閉症スペクトラム障害と診断.特別支援高等学校高等部卒業後,生活介護事業所に通所していたが両親の高齢化によりグループホーム入所.その後,落ち着きがなくなり大声,自傷(抜毛,皮膚掻爬),粗暴行為,不眠等の不適応行動が頻繁にみられるようになった.介入前の強度行動障害判定基準は47点であった.
【経過】不適応行動に対し精神科治療が必要と判断した.当初,精神科医療は薬物療法が中心で副作用が心配という支援者もいたため誤解を修正し受診に繋いだ.そして,それを機に薬物療法やOT,皮膚科の訪問診察の導入ができた.不眠の要因は,肥満による睡眠時無呼吸症候群を疑い栄養指導が導入された.通院2カ月目,皮膚掻爬・大声・粗暴行為の緩和と睡眠・食事の安定が認められた.受診スタイルを構造化し,本人が治療を受ける習慣化を試みた.限られた診察時間で支援者・家族に実践的な心理教育ができるよう,各施設と家庭の情報を集約するシートを作成した.薄暗い場所を好む,頻回な唾吐き,道具使用の拙劣さがみられたためSP感覚プロファイルを実施した.結果は,感覚探求75,感覚過敏62,感覚回避75と非常に高く,感覚処理の問題が行動や情動面に影響を及ぼしていた.感覚特性に配慮した環境調整を各施設へ提案した.仕事内容は,はさみを使用する作業からカーテンのカタログについた端切れを手ではがす作業に変更した.それにより,作業中にみられていた大声,唾吐き,離席が激減した.療育活動にセラバンド体操と触圧覚マッサージを取り入れた事で,粗雑な扉の開閉がみられなくなった.表出スキルの修正としてPECSを取り入れた.学習が進むにつれ,スケジュールに注目するようになり切り替えが円滑になった.支援者に対し障害特性や治療について理解を深める研修を月1回の訪問時に行い支援の統一化ができた.通院3ヶ月目,粗暴行為は消失し,唾吐きの頻度が激減した.通院11ヶ月目,症状改善と治療スタイルの定着が認められため近隣の病院へ転院となった.
【結果】強度行動障害判定基準は47→14点,異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)は,興奮性74→6点,無気力19→4点,常同行動21→2点,多動77→3点,不適切な言語12→1点と減少した.本人や家族・支援者に穏やかなくらしをもたらした.
【考察】強度行動障害は,障害からくる苦手さと人的・物的環境のミスマッチから生じる.今回,障害者福祉施設から精神科病院へ勤務する作業療法士にコンサル依頼があったことで,①感覚-運動機能に配慮した対応や環境調整を具体的に提案できる②精神科医療への抵抗を薄める③家族や支援者の障害特性理解がくらしを介して深まる④本来受けるべき適切な医療が受けられるようになる⑤経験主義の支援から正しい論理に基づいた支援へと支援力が向上し,他の利用者へ支援の般化が認められる.1施設1例介入するだけでも,症状改善以外の波及効果はあると考えられる.
【対象】40代男性,BMI30,最重度知的障害・自閉症スペクトラム障害と診断.特別支援高等学校高等部卒業後,生活介護事業所に通所していたが両親の高齢化によりグループホーム入所.その後,落ち着きがなくなり大声,自傷(抜毛,皮膚掻爬),粗暴行為,不眠等の不適応行動が頻繁にみられるようになった.介入前の強度行動障害判定基準は47点であった.
【経過】不適応行動に対し精神科治療が必要と判断した.当初,精神科医療は薬物療法が中心で副作用が心配という支援者もいたため誤解を修正し受診に繋いだ.そして,それを機に薬物療法やOT,皮膚科の訪問診察の導入ができた.不眠の要因は,肥満による睡眠時無呼吸症候群を疑い栄養指導が導入された.通院2カ月目,皮膚掻爬・大声・粗暴行為の緩和と睡眠・食事の安定が認められた.受診スタイルを構造化し,本人が治療を受ける習慣化を試みた.限られた診察時間で支援者・家族に実践的な心理教育ができるよう,各施設と家庭の情報を集約するシートを作成した.薄暗い場所を好む,頻回な唾吐き,道具使用の拙劣さがみられたためSP感覚プロファイルを実施した.結果は,感覚探求75,感覚過敏62,感覚回避75と非常に高く,感覚処理の問題が行動や情動面に影響を及ぼしていた.感覚特性に配慮した環境調整を各施設へ提案した.仕事内容は,はさみを使用する作業からカーテンのカタログについた端切れを手ではがす作業に変更した.それにより,作業中にみられていた大声,唾吐き,離席が激減した.療育活動にセラバンド体操と触圧覚マッサージを取り入れた事で,粗雑な扉の開閉がみられなくなった.表出スキルの修正としてPECSを取り入れた.学習が進むにつれ,スケジュールに注目するようになり切り替えが円滑になった.支援者に対し障害特性や治療について理解を深める研修を月1回の訪問時に行い支援の統一化ができた.通院3ヶ月目,粗暴行為は消失し,唾吐きの頻度が激減した.通院11ヶ月目,症状改善と治療スタイルの定着が認められため近隣の病院へ転院となった.
【結果】強度行動障害判定基準は47→14点,異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)は,興奮性74→6点,無気力19→4点,常同行動21→2点,多動77→3点,不適切な言語12→1点と減少した.本人や家族・支援者に穏やかなくらしをもたらした.
【考察】強度行動障害は,障害からくる苦手さと人的・物的環境のミスマッチから生じる.今回,障害者福祉施設から精神科病院へ勤務する作業療法士にコンサル依頼があったことで,①感覚-運動機能に配慮した対応や環境調整を具体的に提案できる②精神科医療への抵抗を薄める③家族や支援者の障害特性理解がくらしを介して深まる④本来受けるべき適切な医療が受けられるようになる⑤経験主義の支援から正しい論理に基づいた支援へと支援力が向上し,他の利用者へ支援の般化が認められる.1施設1例介入するだけでも,症状改善以外の波及効果はあると考えられる.