第57回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-2] 一般演題:地域 2

Fri. Nov 10, 2023 1:10 PM - 2:20 PM 第2会場 (会議場A1)

[ON-2-2] ユニバーサルデザイン地図作成における作業療法士の視点と実践

赤松 智子1, 吉田 彩子2 (1.佛教大学保健医療技術学部作業療法学科, 2.無所属)

【はじめに】
作業療法は,人々の健康と幸福を促進することである.対象者が,安心・安全に過ごせる住環境整備をはじめ,外出先で過ごす環境に関する情報提供や対策を検討することは,作業療法士の役割となる.これまでに,パーキンソン病の人が名所・旧跡地で過ごす活動に関わり(倫理審査委員会の承認を得ているH26-8),訪問先のバリアフリー・ユニバーサルデザイン情報を蓄積してきた.この情報を利用者に伝達する手段には,言語や図記号で表現された地図は見られるが,作業療法士の視点で,環境の様子や状態を段階づけて捉えた地図は少ない.そこで,バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する情報を,視覚的に確認できる地図を作成したので報告する.開示すべき利益相反はない.
【目的】
京都の名所・旧跡地におけるバリアフリー設備やユニバーサルデザインに関する情報を精査分類し,インフォグラフィックを取り入れたユニバーサルデザイン地図を作成することが目的である.
【方法】
対象は,京都市内に所在する名所・旧跡地の管理者に対して,書面を用いて口頭で趣旨を説明し,書面による同意の得られた場所である.手順は,名所・旧跡地の拝観案内図を参考にして訪問調査を実施した.拝観可能な経路の階段や段差,坂・スロープ,手すりの有無やトイレ様式,休憩場所,路面状況である.階段や段差は,段数や蹴上げの高低差を,坂・スロープは勾配を測定した.さらにトイレ設備,休憩場所の屋内外の様子,路面状況や溝幅,設備などを調査した.
【結果】
<調査内容の精査と分類>
階段や段差の高低差は,国土交通省「建築基準法の階段に係る基準について(2017)」を参照し,3段階;低い16センチ以下,公共施設レベル17~23センチ,高い24センチ以上に分類した.坂やスロープは,傾斜角度で3段階に分類し;車いす自走可能レベル5度以下,車いす介助走行6~10度,急斜面11度以上に分類した.路面は,舗装・土砂地・砂利敷(少ない,多い)・石畳(平ら,起伏)・飛石(均等,段差含)に分類した.堂内は,土足禁止の有無や板・畳間,トイレ様式は,和,洋,車いす対応,ベビーシートやオストメイト対応の多機能設備の4種に分類した.
<インフォグラフィック記号の検討とイラストおよび地図の作成>
地図記号は,案内用図記号(JIS Z8210)(2019)のピクトグラムを参照した.トイレ記号では,和・洋・車いす対応・多機能を区別するために,背景色を変更して判別した.色の選択には,カラーユニバーサルデザインを参考にして配色した.案内用図記号に含まれない段差や敷居,路面は,それらをイメージするイラストを作成して記号化した.車いすの貸出やエレベータ―運営時間,堂内を安全に移動できるように杖先カバーの提供については,メモを記載した.さらに,AED設置や緊急避難広場,広域避難場所,御朱印受付場所を把握できる絵記号を追加した.国土地理院地図,およびゼンリン地図を参考にして地図を作成した.
【まとめ】
作成した地図は,名所・旧跡地の管理者に確認していただくことを通して精度を高め,その上で,一般の人に利用されることを意図してWebサイト:ウェルビーイング活動・京都,https://wellbeing-activity-kyoto.bukkyo-u.ac.jp/を公開した.これにより,名所・旧跡地の環境に変更が生じた場合には,アップデートが容易となる.また,ユニバーサルデザイン地図を実用化するために,利用者と施設との相互の交流を継続することが大事である.
今後の課題は,地図内容の把握のされ方や利用方法について検証することが必要だと考えている.