第57回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-2] 一般演題:地域 2

2023年11月10日(金) 13:10 〜 14:20 第2会場 (会議場A1)

[ON-2-4] 高齢者に対する作業の価値調査票の信頼性・妥当性の検討

岩崎 純平1, 山田 孝2,3, 會田 玉美4 (1.東京天使病院リハビリテーション科, 2.日本人間作業モデル研究所, 3.東京保健医療専門職大学作業療法学科, 4.目白大学大学院リハビリテーション学研究科)

【はじめに】作業の重要性や意味を表す概念に価値がある.筆者は先行研究にて,地域在住高齢者が作業に対して多様な価値を持っていることを明らかにした1)が,作業の価値を簡便にとらえることができる調査運用に適した自記式質問紙はみあたらない.地域在住高齢者の作業の価値を簡便にとらえることができれば,疫学的調査において「作業の価値」を変数として取り入れることが可能となり,作業と健康の関連性を明らかにする研究が促進される.
【目的】地域在住高齢者の作業に抱く価値をとらえる調査票を作成し,信頼性,および妥当性を検討することである.
【方法】先行研究の価値カテゴリー1)を参考とし,地域在住高齢者に対する作業の価値をとらえる高齢者作業の価値調査票(Questionnaire of Occupational Value for Elderly people : 以下,QOVE)を作成した.Lynnが提案したContent Validity Index2)に従い,専門家基準に該当した10名の作業療法士によるQOVEの質問項目の内容妥当性を検討した.内容妥当性の確認後,QOVEを用いて,グループ活動に参加する地域在住高齢者393名を対象に質問紙調査を行った.質問項目の天井床効果を確認し,最尤法による探索的因子分析を行った.生成された作業の価値の因子構造に対し,AMOSを用いた共分散構造分析を行い,QOVEの構造妥当性を確認した.また,質問項目のCronbach’s α係数を算出し内的整合性の確認を行った.あわせて,Ikigai-93)を外的基準とした相関関係を確認することにより併存的妥当性を検討した.本研究は,目白大学における人を対象とする医学系研究に係る倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】内容妥当性の検討を経て25項目の質問項目が作成され,質問紙調査では,地域在住高齢者189名の有効回答を得た.対象者の属性は,男性59名(31.2%),女性130名(68.7%)であり,平均年齢は76.8±5.2歳であった.QOVEの全ての項目に天井床効果はみられなかった.探索的因子分析の結果,《生活調和》,《帰属意識》,《作業謳歌》,《自己発展》,《他者交流》の作業の価値の5因子が明らかとなり,因子負荷量が0.5に満たなかった質問項目10項目を削除した.調査票の15項目5因子構造に対する確認的因子分析の適合度指標は,CMIN=151.836,df=80,GFI=0.907,AGFI=0.860,CFI=0.953,RMSEA=0.069であった.調査票の全体および各因子のCronbach’s α係数は0.88~0.79であり,Ikigai-9との相関関係係数は0.61~ 0.37であった.
【結論】被調査者にとって最も重要な作業を一つ挙げ,その作業が重要な理由を15項目の質問項目から回答するリッカート式の調査票が開発された.QOVEの妥当性(内容妥当性,構造妥当性,併存的妥当性)および信頼性(内的整合性)は良好であった.
【文献】
1)岩崎 純平,中村 哲也,山田 孝:地域在住高齢者が作業に抱く価値の検討 ~【選択的】価値と【義務的】価値の生成~.作業行動研究,24(4):161-170. 2021.
2)Lynn, M.R.: Determination and Quantification of Content Validity, Nursing Research, 35(6), 382-386. 1986.
3)今井 忠則, 長田 久雄, 西村 芳貢:生きがい意識尺度(Ikigai–9)の信頼性と妥当性の検討. 日本公衆衛生雑誌, 59:433-439.2021.