第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

地域/MTDLP

[ON-3] 一般演題:地域 3/MTDLP 2

2023年11月10日(金) 14:30 〜 15:30 第4会場 (会議場B5-7)

[ON-3-2] 当院における退院後訪問の取り組み

杉野 恵理1, 永井 隆2, 山浦 奈々佳1, 坂下 真千1, 杉野 達也3 (1.三重北医療センター菰野厚生病院総合リハビリテーション科, 2.三重北医療センター菰野厚生病院泌尿器科, 3.鈴鹿中央総合病院リハビリテーション科)

【序論】
当院では理学療法士(PT)及び作業療法士(OT)が患者の退院前に自宅訪問を行い,住宅改修やレンタル機器の選定などの環境設定を行っている.しかし,退院後の生活において入院中に設定した環境設定が適切であったかは不明である.
【目的】
当院では,今後の訓練内容に活かすことを目的として,2021年度から独自に退院後訪問を行っている.今回,当院にて退院前訪問および退院後訪問を行った患者において退院前自宅訪問での環境設定が適切であったかを検証した.その結果について若干の考察を加えて報告する.
【方法】
当院に入院し,退院前訪問指導を行った脳血管障害を呈した患者8名を対象とした.PT・OTが退院後約一か月を目安に退院後自宅訪問を実施し,退院前自宅訪問での環境設定が適切であったかを確認した.患者の内訳は脳梗塞4名,脳出血3名,くも膜下出血1名.性別は男性3名,女性5名,平均年齢78.8歳であった.
自宅訪問での評価項目は,食事・整容・排泄・入浴・移動の5項目とした.詳細として①各項目の実施している場所,姿勢,福祉用具,環境設定についての確認②その内容が本人および家族に適正であったかを聴取③退院前訪問時の設定と変化していた点をそれぞれ記載した.
本研究は,三重北医療センター菰野厚生病院倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】
患者8名のうち1名は退院前自宅訪問での環境設定を変更することなく過ごされていた.しかし,7名は退院前自宅訪問で設定した内容に変化があった.具体的な変化として,ベッド上でサイドテーブルを用いて食事をする予定であったが,食堂で食事していたり,自宅では入浴せずデイサービスでの入浴予定であったが自宅で入浴していたり,移動手段が車椅子から杖歩行に変化していた.その理由としては,身体能力が向上したために動作能力が向上し,それに伴い活動範囲が拡大していた.
【考察】
退院後自宅訪問は,病院生活では見ることが出来ない患者・家族の思いや行動を確認出来る貴重な機会である.病院と自宅での生活変化に対する評価と見直しを行い,残りの病院生活の訓練に活かすことが出来る.退院後に変化が生じた原因として,入院中の訓練で生活状況の予測や,想定した動作訓練が不十分であったことが考えられた.また,入院前の生活の中で習慣化された方法が退院後も定着したと考えられた.
自宅退院はこれまでと異なった状態での生活をスタートさせることであるが,退院後の生活を知ることが実生活に即した訓練を行えることにつながると考える.入院中に行う訓練は生活のごく一部であり,退院後の環境設定を想定した訓練の検討があると考えられる.
退院後自宅訪問を実施してセラピスト間で共有することは,入院中に予測できなかった問題点に気づくことができ,入院中の訓練プログラムを振り返えることが出来る.その結果,学びの機会をもたらし今後の経験値となり,自宅退院に向けた退院支援のスキルアップが図れる.
そして,他の患者への支援に活かすことができるため,今後も活動を継続していきたい.