[ON-3-3] 障がい者の性被害等に関する文献研究
[序論]性的健康とはセクシュアリティに関して幸福な状態で,安全な性的経験をすることであり,性的健康の補償は全ての人に認められた人権である.(WHO,2006a;WAS,2021)性的健康の向上はQOL向上と関連する.(Anderson ,2013;Janice G. 2007)作業療法では対象者を人間としての価値を持ち,どの機能も分離できない統合的存在と見なす.(Couldrick,1998)これらの価値や機能には性的側面が含まれ,作業療法士は対象者の性的健康の向上に対し重要な役割を持つと考えられる.(Couldrick,1998)一方,障がい者に対する使用者による性的虐待は令和2年度では10件生じている.(厚生労働省 令和3年)また,日本国民の42.2%が日常生活で性被害に遭うことを不安に感じており,(令和3年 長官官房)性被害は性的健康の妨げになると考える.
[目的]文献レビューにより障がい者に対する性被害や性的虐待,性暴力の実態を明らかにする.
[方法]PubMedデータベースで「sexual abuse」「sexual victimization」「sexual assault」OR「disabilities」「disorder」で検索.論文は2013/1~2023/1で,障がい者を対象とした性被害等の実態調査を行った論文を抽出.文献研究は除外した.
[結果]25件が対象文献となる.うち知的障害を対象とした文献は6件,身体障害は3件,精神障害は3件,発達障害は2件,複数の障害を対象とした文献は11件であった.
障がい者群とコントロール群で性被害等の経験を比較した研究は12件含まれ,うち11件で障がい者群が有意に性被害等の経験やリスクが上昇する事を示した.複数の障害を扱った文献は3件含まれ,性被害等の経験の多い障害として認知障害,視覚障害が,精神障害が言及された.また危険因子として,女性や若年が言及された.一方,2件の文献が社会資源やコミュニティの充実が性被害等のリスクを低下させるとした.加害者の特徴について4件の文献が言及し,親族や医療者など知人による加害が多かった.性被害等後の相談は5件の文献が言及し,14.9%~65%が被害後相談をしなかったとした.性被害等の経験について最も多い文献では地域サービスを受ける精神障害者女性の58.4%が強制性交の経験を報告した.(Thinh Nguyen.et al,2017)
[考察]障がい者は性被害等のリスクが上昇することが明らかになった.これに関して,知的障害者の言葉をそのまま信じる(岩田ら,2019)身体障害者の生活の介護者依存による虐待から逃れづらい構造(Nosek et al,2006)精神障害者の社会機能の低下による第三者視点の得にくさ(Schizophr Bull,2019)など障害による性被害等への不利な要素を持つと考える.更に,意思決定の困難が生じ得る障害で性被害等の頻度が上昇することが示され,加害者が性被害等の発見を免れるため障害特性を悪用している可能性が示唆される.
性被害等の加害者が知人であるケースが多く示され,これは相手を不快にさせないために意志に反して性行為に応じる(朝日新聞デジタル,2020)行為から,性被害等の増加に関連している可能性もある.
被害者はうつ病やPTSD(Emily R. Dworkin,2020)などのリスクが上昇する事が報告されており性被害等の早期発見,ケアの拡充を行う必要を示す.
本研究では一定数以上の障がい者が性被害等の経験があり,作業療法対象者にも被害者が含まれる可能性があることを示す.対象者の精神,心理状態などの背景には性被害等の経験が含まれることも予測され,作業療法において検討されるべき要因である.
作業療法士として性被害等に逢いやすい対象者の特性を理解し,性被害等の問題について風通しの良い環境を整備し,被害者の対応を確立して共有する等,性被害等の防止やケアの拡充を行う必要がある.
[目的]文献レビューにより障がい者に対する性被害や性的虐待,性暴力の実態を明らかにする.
[方法]PubMedデータベースで「sexual abuse」「sexual victimization」「sexual assault」OR「disabilities」「disorder」で検索.論文は2013/1~2023/1で,障がい者を対象とした性被害等の実態調査を行った論文を抽出.文献研究は除外した.
[結果]25件が対象文献となる.うち知的障害を対象とした文献は6件,身体障害は3件,精神障害は3件,発達障害は2件,複数の障害を対象とした文献は11件であった.
障がい者群とコントロール群で性被害等の経験を比較した研究は12件含まれ,うち11件で障がい者群が有意に性被害等の経験やリスクが上昇する事を示した.複数の障害を扱った文献は3件含まれ,性被害等の経験の多い障害として認知障害,視覚障害が,精神障害が言及された.また危険因子として,女性や若年が言及された.一方,2件の文献が社会資源やコミュニティの充実が性被害等のリスクを低下させるとした.加害者の特徴について4件の文献が言及し,親族や医療者など知人による加害が多かった.性被害等後の相談は5件の文献が言及し,14.9%~65%が被害後相談をしなかったとした.性被害等の経験について最も多い文献では地域サービスを受ける精神障害者女性の58.4%が強制性交の経験を報告した.(Thinh Nguyen.et al,2017)
[考察]障がい者は性被害等のリスクが上昇することが明らかになった.これに関して,知的障害者の言葉をそのまま信じる(岩田ら,2019)身体障害者の生活の介護者依存による虐待から逃れづらい構造(Nosek et al,2006)精神障害者の社会機能の低下による第三者視点の得にくさ(Schizophr Bull,2019)など障害による性被害等への不利な要素を持つと考える.更に,意思決定の困難が生じ得る障害で性被害等の頻度が上昇することが示され,加害者が性被害等の発見を免れるため障害特性を悪用している可能性が示唆される.
性被害等の加害者が知人であるケースが多く示され,これは相手を不快にさせないために意志に反して性行為に応じる(朝日新聞デジタル,2020)行為から,性被害等の増加に関連している可能性もある.
被害者はうつ病やPTSD(Emily R. Dworkin,2020)などのリスクが上昇する事が報告されており性被害等の早期発見,ケアの拡充を行う必要を示す.
本研究では一定数以上の障がい者が性被害等の経験があり,作業療法対象者にも被害者が含まれる可能性があることを示す.対象者の精神,心理状態などの背景には性被害等の経験が含まれることも予測され,作業療法において検討されるべき要因である.
作業療法士として性被害等に逢いやすい対象者の特性を理解し,性被害等の問題について風通しの良い環境を整備し,被害者の対応を確立して共有する等,性被害等の防止やケアの拡充を行う必要がある.