第57回日本作業療法学会

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一般演題

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[ON-4] 一般演題:地域 4

2023年11月11日(土) 10:10 〜 11:10 第4会場 (会議場B5-7)

[ON-4-4] 通所リハビリテーションにおける自動車運転支援

上杉 治, 昆 博之, 伊奈 杏都, 植田 正史, 和久田 祐里 (社会福祉法人聖隷福祉事業団 浜松市リハビリテーション病院リハビリテーション部)

【はじめに】
自動車運転支援においては,神経心理学検査などの基準が報告されており,支援は確立さ
れつつある.一方でその報告は医療保険分野のものであり,介護保険分野における事例は少ない.今回医療保険の外来作業療法で運転評価を行い,運転不可となった事例に対し,当院の通所リハビリテーション(以下通所リハ)にて8ヶ月の支援を行った結果,運転再開となった事例を経験した.本報告では介護保険分野での運転支援の可能性を提案していく.
【事例紹介】
 事例は60代男性.疾患名は脳梗塞(右中大脳動脈領域).発症後2病日,急性期病院に搬送され27日間入院加療となる.麻痺はなかったが,観念運動失行や構成失行,注意,記憶,遂行機能障害など多彩な高次脳機能障害が見られた.事例は単身独居であったため,急性期病院での行動などから単身独居の復帰は厳しいと考えられたが,介護保険申請(要支援2)し強引に自宅へ退院した.尚発表に際し事例の同意を得ている.
【経過】
(外来作業療法期98病日~161病日)98病日,運転再開の希望があり当院自動車運転外来を受診し外来作業療法を実施した.神経心理学検査など実施したが,言動はまとまりがなく神経疲労も顕著で,集中して評価を受けることが困難であった.主治医と相談し,現時点での運転再開は不可とし,当院通所リハにて半年間の訓練後,再評価をしていくこととなった.本人も現状での運転再開は困難と感じたようであった.
(通所リハ訓練期173病日~322病日)通所リハでは2回/週訓練を実施し,認知機能を向上させるため認知リハビリテーションや有酸素運動,有効視野訓練,自宅生活の指導などを行った.また運転中止の可能性があることも考慮し,適宜現在の移動手段とその受け止め方を確認した.一方で担当ケアマネジャーとは,サービス担当者会議などを通じて単身生活の状況などを確認した.
(通所リハ再評価期322病日~417病日)運転再評価においては,神経心理学検査,SDSA,有効視野検査,ドライビングシミュレータ,実車評価を行った.一連の評価は集中して取り組めるようになり,運転技能も安全が担保できると判断した.
【結果】
主治医は運転再開可の診断書を作成し,公安委員会にて運転再開の手続きを行った.運転に関するCOPM重要度(10→10)実行度(4→8)満足度(2→10).神経心理学検査も改善が見られた.
【考察】
 本事例のように単身独居であり,キーパーソン不在の場合,ケアマネジャーがいる介護保険分野での運転支援は適していると考えた.またかりに運転不可となった事例の代替移動手段を考えていく際にも,地域の支援者がいる介護保険分野での自動車運転支援は重要と思われた.