[ON-4-5] CIQ-R日本語版は社会作業療法のツールとなるか?
【はじめに】
社会参加は作業療法の重要なゴールであり,就労継続支援は,主要な社会参加支援である.CIQ-Rを用いて利用者の社会参加を調査し,社会的作業療法における有用性を検討した.
【方法】
就労継続支援サービス事業所と大学による多機関共同研究として実施した.研究計画の説明を行い,許諾を得た事業所利用者の社会参加に関する情報(Community Integration Questionnaire-Revised: 日本語版CIQ-R: Callaway, 2014)を,個人が特定できないように処理し,研究機関で分析を行った.研究計画は,研究機関の倫理審査を受審し,承認を得た.この研究に必要な資源は,共同研究を実施する事業所・大学が提供し,申告が必要となる利益相反は存在しない.
【内容】
CIQ-Rは,脳損傷後遺症者の地域での生活を理解する手段として米国で開発されたCIQの最新版である.CIQには,バリエーションや改定版が存在し,様々な疾患・障害と共に地域で生活している人々の社会参加のアセスメントとして世界各地で利用されている.CIQ-Rは,オーストラリアにおける標準データも発表され,日本語版CIQ-Rとその標準データ収集が開始されている.今回は,就労継続支援事業所が利用者支援のために収集したデータを検討した.CIQ-Rの4つの下位尺度,家庭統合,社会統合,生産,電子社会に注目して分析を行った.
【結果】
研究への情報提供を承諾し,研究に参加したのは,合計258名(女性109名,男性147名,性別無回答2名,平均年齢39.7±15.4才)だった.就労継続支援A型利用者164名(A群),就労継続支援B型利用者65名(B群),就労継続支援を経て正規就労している元利用者29名(正規群)が本研究に参加した.この3群間で日本語版CIQ-Rの下位尺度得点(家庭統合,社会統合,生産,電子社会)について,Kruskal-Wallis検定および多重比較を行った.生産下位尺度で,B群とA群・正規群間で有意差を認めた(P<.001).電子社会下位尺度で,A群とB群間で有意差を認めた(P=0.01).なお,生産下位尺度については,CIQ-Rの就労時間についての設問があり,3群間の生産下位尺度の違いを反映すると考え,今回の分析から除外した.オーストラリアでの健常者データをもとに平均+1SDを高得点と操作的に定め,それに基づき,今回の対象者における高得点者の割合を求めた.家庭統合:A群17%, B群3%, 正規群17%,社会統合:A群10%, B群11%, 正規群12%,電子社会:A群21%, B群21%, 正規群11%だった.
【考察】
高得点者の割合が,正規群であっても10~20%程度で,各下位尺度で高得点者の割合が少なかった.それぞれ活動や参加に課題を抱えて社会生活を営んでいる対象者であるが,社会参加の支援の必要性があると言える.3つの下位尺度の中で,社会統合については,3群共に10~12%と低くなっていた.家庭から社会へ出て行く障壁の存在を示唆する結果である. 電子メールやSNSなどによる社会参加を示す電子社会下位尺度は,これらの下位尺度の中では,高得点者が比較的多く,電子媒体の活用が,社会生活の充実に寄与する可能性が示唆された.多くの課題を抱えて生活しているB群であるが,高得点者の割合が,家庭統合3%に対して,社会統合12%,電子社会11%だった.それぞれの課題により踏み込んで支援を行うことなど,支援や援助の可能性が示唆されるものと考えた.CIQ-Rの結果から,このような示唆や知見が得られ,社会参加の実現への道標を示すツールとなることと考えられた.
社会参加は作業療法の重要なゴールであり,就労継続支援は,主要な社会参加支援である.CIQ-Rを用いて利用者の社会参加を調査し,社会的作業療法における有用性を検討した.
【方法】
就労継続支援サービス事業所と大学による多機関共同研究として実施した.研究計画の説明を行い,許諾を得た事業所利用者の社会参加に関する情報(Community Integration Questionnaire-Revised: 日本語版CIQ-R: Callaway, 2014)を,個人が特定できないように処理し,研究機関で分析を行った.研究計画は,研究機関の倫理審査を受審し,承認を得た.この研究に必要な資源は,共同研究を実施する事業所・大学が提供し,申告が必要となる利益相反は存在しない.
【内容】
CIQ-Rは,脳損傷後遺症者の地域での生活を理解する手段として米国で開発されたCIQの最新版である.CIQには,バリエーションや改定版が存在し,様々な疾患・障害と共に地域で生活している人々の社会参加のアセスメントとして世界各地で利用されている.CIQ-Rは,オーストラリアにおける標準データも発表され,日本語版CIQ-Rとその標準データ収集が開始されている.今回は,就労継続支援事業所が利用者支援のために収集したデータを検討した.CIQ-Rの4つの下位尺度,家庭統合,社会統合,生産,電子社会に注目して分析を行った.
【結果】
研究への情報提供を承諾し,研究に参加したのは,合計258名(女性109名,男性147名,性別無回答2名,平均年齢39.7±15.4才)だった.就労継続支援A型利用者164名(A群),就労継続支援B型利用者65名(B群),就労継続支援を経て正規就労している元利用者29名(正規群)が本研究に参加した.この3群間で日本語版CIQ-Rの下位尺度得点(家庭統合,社会統合,生産,電子社会)について,Kruskal-Wallis検定および多重比較を行った.生産下位尺度で,B群とA群・正規群間で有意差を認めた(P<.001).電子社会下位尺度で,A群とB群間で有意差を認めた(P=0.01).なお,生産下位尺度については,CIQ-Rの就労時間についての設問があり,3群間の生産下位尺度の違いを反映すると考え,今回の分析から除外した.オーストラリアでの健常者データをもとに平均+1SDを高得点と操作的に定め,それに基づき,今回の対象者における高得点者の割合を求めた.家庭統合:A群17%, B群3%, 正規群17%,社会統合:A群10%, B群11%, 正規群12%,電子社会:A群21%, B群21%, 正規群11%だった.
【考察】
高得点者の割合が,正規群であっても10~20%程度で,各下位尺度で高得点者の割合が少なかった.それぞれ活動や参加に課題を抱えて社会生活を営んでいる対象者であるが,社会参加の支援の必要性があると言える.3つの下位尺度の中で,社会統合については,3群共に10~12%と低くなっていた.家庭から社会へ出て行く障壁の存在を示唆する結果である. 電子メールやSNSなどによる社会参加を示す電子社会下位尺度は,これらの下位尺度の中では,高得点者が比較的多く,電子媒体の活用が,社会生活の充実に寄与する可能性が示唆された.多くの課題を抱えて生活しているB群であるが,高得点者の割合が,家庭統合3%に対して,社会統合12%,電子社会11%だった.それぞれの課題により踏み込んで支援を行うことなど,支援や援助の可能性が示唆されるものと考えた.CIQ-Rの結果から,このような示唆や知見が得られ,社会参加の実現への道標を示すツールとなることと考えられた.