[ON-5-1] 当院で作成した就労評価表を用いた地域連携の実践
【はじめに】中井ら (2015) は就労支援における作業療法士の役割を「心身機能や作業能力,作業環境の評価及び調整を行い,支援機関に情報伝達をして連携すること」としている.一方,現状は医療機関と支援機関の間で互いの機能や役割について理解不足があるという報告も多い.当院ではスムーズな就労支援機関との連携を行うために,地域で共通のフォーマットを使用する必要があると考え,就労評価表(就労プロフィール,職業準備性チェックリスト)を作成した.当評価表は就労の基盤となる職業準備性や就業する際に必要な配慮事項,作業上の特性等から構成され,それらをチェックリスト化することで,現状の水準を可視化できるものとなっている.今回,復職に向けて作業環境の構造化が求められる重度高次脳機能障害を呈した症例に対し,就労評価表を用いることでスムーズな連携を取ることができたので,報告する.
【症例紹介】50歳代男性(以下,A氏)で,1年前に脳梗塞を発症し,運動麻痺・高次脳機能障害等が残存.公務員として従事していたが,休職中.高次脳機能障害と復職の可能性の相談目的で当院を受診した.
【倫理的配慮】発表にあたり,本人と家族に口頭で説明し書面にて同意を得た.
【初回評価】運動機能は,BRS上肢Ⅲ-手指Ⅲ-下肢Ⅳで右手は廃用手レベル,T字杖と短下肢装具を使用し歩行可能であった.ADLは概ね自立していた.神経心理学的検査及び職業適性検査は,TMT-J:完遂困難,WAIS-Ⅳ:全検査IQ60,WMS-R:50未満~60,GATB:全項目E判定であり,知的機能低下,注意障害,記憶障害,処理速度低下を認めた.一方でMWS(ワークサンプル幕張版)における実務作業は,工程ごとに課題を提示するなど支援者側が配慮することで遂行可能であった.
【介入】A氏は作業環境により作業能力が大きく左右されるため,就労評価表の結果に基づき,作業時の環境設定や指示方法の構造化を行った.当評価表にて就労能力の水準が明確化されたため,課題遂行時の段階付けや目標共有ツールとしても使用した.口頭指示にて同時作業をすることで効率的に作業を習得することができ,長時間続けてもミスが生じなくなった.作業工程を繰り返す中で,麻痺手の補助的な使用や工具の使い分けも見られ,課題遂行時間は徐々に短縮した.工程数の少ない実務作業に対して適応性は高く,職場の配慮次第で復職の可能性があると考えられた.これらの情報を家族から職場へ伝達すると,職場からも実務的な作業の用意や試し出勤の提供,就業時間の調整など合理的配慮が得られることを確認することができた.
【結果】3か月の作業療法の介入後,その成果をもって障害者福祉センターで自立訓練を行いながら段階的に復職する見込みとなった.障害者福祉センターには就労評価表を用いて情報伝達を行った.後日,A氏の障害者福祉センターOTと連絡を取り,①構造化された作業環境の中で取り組むことができていること,②施設担当者と現状の課題や必要な配慮について見解が一致していること,③職場と復職に向けた具体的な日程調整まで進んでいることを確認することができた.また,当院での定期的な外来診察は継続することで,復職が難航する場合には当院で対応できるよう,支援体制を整えた.
【考察】医療-地域間での情報共有ツールとして,共通のフォーマットを用いることで同じ視点を共有することができ,スムーズな連携を取ることができたと考えられる.また,当評価表は地域と情報共有しながら作成しているため,それに基づいて評価を行うことで,医療機関が評価するべき情報について包括的に評価することができたと考えられる.
【症例紹介】50歳代男性(以下,A氏)で,1年前に脳梗塞を発症し,運動麻痺・高次脳機能障害等が残存.公務員として従事していたが,休職中.高次脳機能障害と復職の可能性の相談目的で当院を受診した.
【倫理的配慮】発表にあたり,本人と家族に口頭で説明し書面にて同意を得た.
【初回評価】運動機能は,BRS上肢Ⅲ-手指Ⅲ-下肢Ⅳで右手は廃用手レベル,T字杖と短下肢装具を使用し歩行可能であった.ADLは概ね自立していた.神経心理学的検査及び職業適性検査は,TMT-J:完遂困難,WAIS-Ⅳ:全検査IQ60,WMS-R:50未満~60,GATB:全項目E判定であり,知的機能低下,注意障害,記憶障害,処理速度低下を認めた.一方でMWS(ワークサンプル幕張版)における実務作業は,工程ごとに課題を提示するなど支援者側が配慮することで遂行可能であった.
【介入】A氏は作業環境により作業能力が大きく左右されるため,就労評価表の結果に基づき,作業時の環境設定や指示方法の構造化を行った.当評価表にて就労能力の水準が明確化されたため,課題遂行時の段階付けや目標共有ツールとしても使用した.口頭指示にて同時作業をすることで効率的に作業を習得することができ,長時間続けてもミスが生じなくなった.作業工程を繰り返す中で,麻痺手の補助的な使用や工具の使い分けも見られ,課題遂行時間は徐々に短縮した.工程数の少ない実務作業に対して適応性は高く,職場の配慮次第で復職の可能性があると考えられた.これらの情報を家族から職場へ伝達すると,職場からも実務的な作業の用意や試し出勤の提供,就業時間の調整など合理的配慮が得られることを確認することができた.
【結果】3か月の作業療法の介入後,その成果をもって障害者福祉センターで自立訓練を行いながら段階的に復職する見込みとなった.障害者福祉センターには就労評価表を用いて情報伝達を行った.後日,A氏の障害者福祉センターOTと連絡を取り,①構造化された作業環境の中で取り組むことができていること,②施設担当者と現状の課題や必要な配慮について見解が一致していること,③職場と復職に向けた具体的な日程調整まで進んでいることを確認することができた.また,当院での定期的な外来診察は継続することで,復職が難航する場合には当院で対応できるよう,支援体制を整えた.
【考察】医療-地域間での情報共有ツールとして,共通のフォーマットを用いることで同じ視点を共有することができ,スムーズな連携を取ることができたと考えられる.また,当評価表は地域と情報共有しながら作成しているため,それに基づいて評価を行うことで,医療機関が評価するべき情報について包括的に評価することができたと考えられる.