第57回日本作業療法学会

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[ON-6] 一般演題:地域 6

2023年11月11日(土) 12:20 〜 13:30 第2会場 (会議場A1)

[ON-6-1] 中学校の通学認識に関連する要因の探索的解明

中村 裕美1, 佐野 伸之2, 森 正樹1, 上原 美子1, 森田 満理子3 (1.公立大学法人埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科 保健医療福祉学部, 2.福岡国際医療福祉大学医療学部作業療法学科, 3.公立大学法人埼玉県立大学保健医療福祉学部)

【はじめに】キャリア形成に不利となる中学校での不登校は,世界的な教育的上の課題である (Allenら2018).その要因に,否定的対人関係(OECD2020),不安(Rapeeら2019),情緒不安定(Panayiotouら2021),うつ傾向(Finning ら2019),学校での幸福感の欠如(Moriokaら2014)等が挙げられる.彼らのヘルスリテラシーを高め,助けを求める行動を推奨する教育が行われている(Simkissら2021).本邦では,不登校は,健康や経済的な問題が無く30日以上欠席する状態である.中学生の10%が,同僚圧力により望まない登校をしている(日本財団2021).我々は,中学生への健康教育教材の整備を目指して,彼らの通学への認識に関係する要因を明らかにしようと考えた.
【目的】我々は,中学生の通学への認識は,仲間や教師との関係,現状への認識,健康状態,経験や考えを分かち合う人の存在が関係しているとのモデルを立てて検証した.
【方法】某県教育委員会と協業して質問紙19項目を構築した.通学を楽しみに思うか(1項目)に「とてもそう思う」から「全くそう思わない」の4尺度で求めた.「仲間や教師との関係」(5項目)や「現状への認識」(5項目)を「とてもそう思う」から「全くそう思わない」の3尺度で求めた.「健康状態への気づき」(7項目)を「とても」から「まったくない」の3尺度で求めた.「経験や考えを分かち合う人」(1項目)には,母,父,きょうだい,友人,教師等を設け,その頻度を「頻繁に」から「まれ」の3尺度で求めた.この質問紙を,無作為抽出された公立中学校93校の2年生8945名に配布した.構造方程式モデリングを用いて,因子負荷量,パス係数,Comparative Fit Index (CFI), Tucker Lewis Index (TLI), Root Mean Square Error of Approximation (RMSEA)でモデルの適合を判定した.本研究は筆頭発表者の所属機関で承認された研究プロトコルに従った.
【結果】解析対象は6245名は,男児42%,女児45%,性別未回答13%であった.回答に,男女で有意差は観察されなかった.通学を楽しみと思うかの回答は「そう思う」(45%),「とてもそう思う」(32%),「あまりそう思わない」(17%),「まったくそう思わない」(6%)となった.「仲間や教師との関係」では,84%が「とても」「同性の仲間と仲良く」していた.「異性の仲間と仲良くしている」「仲間に好かれている」「教師が努力を認めてくれる」「教師と話すのは嬉しい」に「少しは」を回答した者が,45%,61%,54%,48%いた.「現状認識」では,65%が「とても」「努力は報われる」と回答した.「何かに自信がある」「他者の役に立つ」に「少しは」と回答した者が,48%と53%いた.「健康状態」で「心配や不安」「孤独」を「少しは」感じる者が,42%と32%いた.級友と比べて「苛立ち」や「悲観的」に「とても」なり易い者が,各14%いた.「日中の居眠り」「疲れ易い」「食欲不振」が「とても」よくある者が,16%,47%,18%いた.「経験や考えを分かち合う人」には,61%が「母親と頻繁」を選択した.最終モデルは,RMSEA 0.055,CFI 0.937, TLI 0.928を示した.通学への認識に直接影響したのは,仲間や教師との関係(パス係数0.421),現状認識(0.117),健康(―0.221)であった(all p<0.001).
【考察】本研究は,教師たちによる対人関係構築の実践を,後押しする結果を提示した.本研究はまた,健康上の懸念を自覚する者が,通学を否定的に認識していることを示した.本邦では自傷行為に陥った中学生でも,その41%しか助けを表明しない(Watanabeら2012).健康教育と合わせて,彼らが安心して懸念を表明できる体制が必要である.