第57回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

地域/援助機器

[ON-7] 一般演題:地域 7/援助機器 2

2023年11月11日(土) 13:40 〜 14:40 第4会場 (会議場B5-7)

[ON-7-5] 福祉用具支援サービスにおける作業療法士の役割と機能

米崎 二朗, 池田 真紀, 久山 圭子 (大阪市援助技術研究室)

【はじめに】当研究室は,福祉用具支援サービス(以下,AT)のシステム構築を目的にさまざまな普及活動を行ってきており,特に地域支援サービス機関で対応が困難な重度障がいのある人への福祉用具適用に対し,医学的・工学的な支援技術を介して具体的な問題解決を図ってきた.また,担当OTに対してもアドバイザリーサービス(以下,AS)を通じて,指導・助言を行ってきた.この経過の中で,実際のATの中においては,OTがその役割と機能が十分に果たせていない現状の問題点を多く確認してきた.Elaine Treflerは,著書の中で,ATにおけるOTの役割と機能を明記している.我が国におけるOTの役割と機能を再確認し,総合的なATを適正に供給するために必要となる要素をまとめる.
【目的】ATにおけるOTの役割と機能を明確化すること
【方法】当研究室のASを受けたOTを対象に,実際のATに対しモニタリング評価を通じて,OT自身の知識,技術,経験,介入状況の分析,他の支援技術との連携状況確認,利用効果測定を行う.次いで,当研究室のATの介入による利用効果との比較評価を行う.これらの結果をAT構成要素別に,1.供給システム,2.支援マネジメント,3.支援技術,4,工学などの他の支援技術との連携,5.支援技術の科学的根拠,理論的背景に分けてまとめる.
【結果】モニタリング評価結果からは,1,供給システムに関しては,OTの関心・興味,経験による部分的な支援内容が選択されており,総合的なAT供給ができておらず,利用者ニーズに基づいた具体的な問題解決が図られていない状況が多かった.また,社会保障制度の適正な利用がなされていない事例も確認された.2.対象者の心理社会的背景を考慮した上で,協働でのAT計画が実施されておらず,利用者中心よりも家族支援としての介護負担軽減を主な目的としている事例が多かった.そのため,利用者の自己効力感を得られないままの結果となっていた.3.支援技術については,各福祉用具の適合技術の習得が十分に行われておらず,特に身体機能評価に基づいた適正処方がなされてない状況にあった.また,OT自身による製作への興味・関心が先行し,適正処方のないままに自家製作した自助具や車椅子シーティングなどを適用している事例もあった.いずれにおいても,過用・誤用を多く確認した.4.既存の製品・適合技術の範囲での対応にとどまっており,フィージビリティスタディを通じて,工学領域の専門技術者との連携を図っている例は殆どなかった.これについては,当研究室の技術的介入により,具体的な問題解決を図ってきた.5.支援技術の科学的根拠及び理論的背景については,十分な文献調査や情報収集が行われておらず,企業・メーカー等からの販売促進的に提供された情報に基づいて安易に適合支援を行っている事例が多かった.また,対象者の心理社会的背景については,十分なコミュニケーションが取られておらず,OTの主観的な視点で解釈されており,特に「動機づけ」などについては,端に「やる気」といったような表面的なとらえ方をしている事例が多く,利用効果測定において,支援者側の解釈と利用者側の真の満足度に乖離が認められた.
【考察】当研究室は,国際連携を通じて海外とのATネットワークを介して,海外におけるOTのATにおける介入状況,研究開発の動静,社会システムなどに関する情報を得ている.それらと比較してみると,OTに対する教育システムの再考が必要であり,更に,知識・経験が浅いOTへのスーパービジョンを介した後方支援が不可欠であることを地域支援ネットワークなどを通じた具体的な支援体制の整備を行わなければならないと考える.