[ON-9-3] 要支援者の訪問リハビリテーション12ヵ月以上の利用に対する介護報酬減算の妥当性
【はじめに】令和3年度介護報酬改定において,訪問リハビリテーション(リハ)では要支援者に12ヵ月を超えて訪問リハを行う場合,一律に基本報酬の減算が適応となり,要支援者は12ヵ月以内に訪問リハを終了することが求められた.しかし,実臨床においては訪問リハ12ヵ月以上継続して利用することにより生活の質が向上される要支援者を少なからず経験する.今回,訪問リハを12ヵ月以上利用した要支援者のADL,IADL,生活範囲の経時的変化を分析し,減算適応の妥当性について検討した.
【対象】2014年7月以降に訪問リハが開始された脳血管疾患の利用者で,開始時点において要支援の認定を受けていた28名のうち,12ヵ月以上利用していた14名(男性8名,女性6名,68.8±12.0歳)を対象とした.疾患内訳は,脳梗塞12名,脳出血1名,クモ膜下出血1名であった.なお,全身状態悪化および死亡で終了した利用者は除外した.研究対象とすることに関する説明と同意は,インフォームドコンセントを省略する代わりに,当法人ホームページにて研究情報を公開し対象者が拒否できる機会を保障し,当法人倫理委員会の承認を受けた(受付番号116-01).
【方法】①訪問リハ利用開始時点,②訪問リハ利用開始から12ヵ月の時点,③訪問リハ利用開始から12ヵ月経過した後の時点(訪問リハ開始から再々評価までの期間380~1958日,中央値807日)においてADLの指標であるFunctional Independence Measure(FIM)合計点数,IADLの指標であるFrenchay Activities Index(FAI)合計点数,生活範囲の指標であるLife Space Assessment(LSA)合計点数を評価した.統計は,Friedman検定による分散分析を行った後,Bonferroniの不等式にあてはめ,Wilcoxonの符号付順位和検定を行った.また,FIM,FAI,LSA合計点数において,②から③に至るまでに点数が向上した利用者の人数と向上しなかった利用者の人数をそれぞれ算出した.
【結果】FIM合計点数は①118.4±4.3点,②119.2±4.3点,③119.7±3.5点で全ての時点で有意差を認めなかった.FAI合計点数は①11.3±7.5点,②15.1±8.6点,③17.2±9.9点で,全ての時点で有意に改善していた(p<0.05).②12ヵ月の時点から③12ヵ月経過した後の時点において点数が向上した利用者は6名で,向上しなかった利用者は8名であった.LSA合計点数は①44.3±29.1点,②62.1±27.7点,③68.5±29.6点で,①訪問リハ利用開始時点から②12ヵ月の時点において有意に改善していた(p<0.05).②12ヵ月の時点から③12ヵ月経過した後の時点では有意差を認めず,点数が向上した利用者は5名で,向上しなかった利用者は9名であった.
【考察】FIM合計点数に関して明らかな改善が認められなかったのは,対象者が要支援者であり,元々のADL自立度が高かったことによる天井効果のためと思われる.FAI合計点数,LSA合計点数ともに,①訪問リハ利用開始時点から②12ヵ月の時点で有意な改善が認められ,FAI合計点数に関しては,②12ヵ月の時点から③12ヵ月経過した後の時点においても改善が認められた.訪問リハの役割としてはADLの自立だけでなく,家庭内の役割の獲得や趣味活動の獲得も期待される.ADLが改善し在宅復帰した後,リハに依存せず脱却することは重要であるが,IADL,生活範囲の改善も生活の質の向上に欠かすことはできない.本研究で示されたように12ヵ月経過した後もIADL,生活範囲の改善が期待できる要支援者が存在することを鑑みれば,訪問リハの期間を一律に12ヵ月という期間で減算とすることは適切ではないと思われる.要支援者個々の状態を把握した上で,必要な期間にわたりリハを提供できる制度設計が求められる.
【対象】2014年7月以降に訪問リハが開始された脳血管疾患の利用者で,開始時点において要支援の認定を受けていた28名のうち,12ヵ月以上利用していた14名(男性8名,女性6名,68.8±12.0歳)を対象とした.疾患内訳は,脳梗塞12名,脳出血1名,クモ膜下出血1名であった.なお,全身状態悪化および死亡で終了した利用者は除外した.研究対象とすることに関する説明と同意は,インフォームドコンセントを省略する代わりに,当法人ホームページにて研究情報を公開し対象者が拒否できる機会を保障し,当法人倫理委員会の承認を受けた(受付番号116-01).
【方法】①訪問リハ利用開始時点,②訪問リハ利用開始から12ヵ月の時点,③訪問リハ利用開始から12ヵ月経過した後の時点(訪問リハ開始から再々評価までの期間380~1958日,中央値807日)においてADLの指標であるFunctional Independence Measure(FIM)合計点数,IADLの指標であるFrenchay Activities Index(FAI)合計点数,生活範囲の指標であるLife Space Assessment(LSA)合計点数を評価した.統計は,Friedman検定による分散分析を行った後,Bonferroniの不等式にあてはめ,Wilcoxonの符号付順位和検定を行った.また,FIM,FAI,LSA合計点数において,②から③に至るまでに点数が向上した利用者の人数と向上しなかった利用者の人数をそれぞれ算出した.
【結果】FIM合計点数は①118.4±4.3点,②119.2±4.3点,③119.7±3.5点で全ての時点で有意差を認めなかった.FAI合計点数は①11.3±7.5点,②15.1±8.6点,③17.2±9.9点で,全ての時点で有意に改善していた(p<0.05).②12ヵ月の時点から③12ヵ月経過した後の時点において点数が向上した利用者は6名で,向上しなかった利用者は8名であった.LSA合計点数は①44.3±29.1点,②62.1±27.7点,③68.5±29.6点で,①訪問リハ利用開始時点から②12ヵ月の時点において有意に改善していた(p<0.05).②12ヵ月の時点から③12ヵ月経過した後の時点では有意差を認めず,点数が向上した利用者は5名で,向上しなかった利用者は9名であった.
【考察】FIM合計点数に関して明らかな改善が認められなかったのは,対象者が要支援者であり,元々のADL自立度が高かったことによる天井効果のためと思われる.FAI合計点数,LSA合計点数ともに,①訪問リハ利用開始時点から②12ヵ月の時点で有意な改善が認められ,FAI合計点数に関しては,②12ヵ月の時点から③12ヵ月経過した後の時点においても改善が認められた.訪問リハの役割としてはADLの自立だけでなく,家庭内の役割の獲得や趣味活動の獲得も期待される.ADLが改善し在宅復帰した後,リハに依存せず脱却することは重要であるが,IADL,生活範囲の改善も生活の質の向上に欠かすことはできない.本研究で示されたように12ヵ月経過した後もIADL,生活範囲の改善が期待できる要支援者が存在することを鑑みれば,訪問リハの期間を一律に12ヵ月という期間で減算とすることは適切ではないと思われる.要支援者個々の状態を把握した上で,必要な期間にわたりリハを提供できる制度設計が求められる.