[OP-3-1] 手の遠位横アーチに関する利き手・非利き手,性,年齢による比較調査
【はじめに】手の遠位横アーチについては,その測定方法やどれくらいの動き(可動域)があるのか,利き手・非利き手での違いや性,年齢による影響など,ほとんど調査・報告されていない.手の遠位横アーチの動き(可動域)の測定では,三次元動作解析装置などによる報告は散見されるが,臨床では簡便に測定でき信頼性のある測定方法が重要である.著者らは,手の遠位横アーチをゴニオメーターで測定する方法について,信頼性の検証を行い報告した(白石ら,2022,2023).今回,手の遠位横アーチの可動域について,信頼性が示されたゴニオメーターによる測定方法を用い,利き手・非利き手や性,年齢による違いについて調査し,知見を得たので報告する.
【目的】本調査は,手の遠位横アーチの可動域における利き手・非利き手や性,年齢による違いの有無を明らかにすることを目的とした.
【対象】既往に手の外傷や疾病がない20~60代の健常成人104名(男性46名,女性58名)の両手を対象とした.本研究において,対象者に十分な説明を行い,書面による同意を得て調査を行った.
【方法】手の遠位横アーチの測定において,第1~第3中手骨で成す角度を母指成分,第2~第4中手骨で成す角度を環指成分,そして第3~第5中手骨で成す角度を小指成分と設定し,これら3成分の合計角度を手の遠位横アーチ角度と定義した.測定は(株)日本医化器械製作所のNKシステムゴニオメーターを用い,自動での遠位横アーチの角度を測定した.統計解析は,2群間比較では測定値の正規性の有無によりt検定やMann-WhitneyU検定,Wilcoxon符号付順位検定を用いて分析を行った.多重比較には測定値の等分散性(Levene検定)の有無により,一元配置分散分析(F検定・Welch検定)を用いて解析した.有意水準は,5%未満で判定した.
【結果】1)利き手・非利き手比較:利き手(135.8±10.0度)と非利き手(131.4±10.1度)で有意な違いがあり,利き手で可動域が有意に大きかった(p<0.001).各成分においても利き手で有意に可動域が大きかった(p<0.001~p=0.025).2)性別比較:男女比較では,利き手・非利き手ともに有意な違いはなかった.しかし,各成分比較では,利き手・非利き手ともに環指成分で,女性の可動域が有意に大きかった(p=0.006,p=0.039).3)年代間比較:利き手で年代間に有意な違いが示され,60代は20~50代に比べ有意に低下し(p<0.001~p=0.029),非利き手においても60代は20代と30代に比べ有意に低下していた(p=0.032,p=0.005).
【考察】今回,自動での手の遠位横アーチについて,利き手・非利き手,性,年齢による違いについて調査・分析を行った.利き手の手関節では,日常で繰り返しの使用が多く,筋原線維構造における筋線維のタイプ変化により硬くなる可能性が報告(Durand.S, 2019)されている.しかし,今回の手の遠位横アーチでは利き手において可動域が大きく,手関節とは異なる結果であった.性別比較においても,手関節などでは筋・関節の硬さは男性で有意に強いとの報告(Nguyen.AP, 2020)がある.しかし,手の遠位横アーチ(全体)では,性別で明らかな違いは示されなかったが,環指成分では利き手・非利き手ともに女性で有意に可動域が大きく,女性では環指成分の動作が男性とは異なっている可能性が考えられた.年齢においては,60代では利き手・非利き手とも有意に可動域が低下することが示され,年齢の増加に伴う関節組織の粘性や弾性の増加(Nguyen.AP, 2020)が影響している可能性が考えられた.今回の調査より,手の外傷後など手の遠位横アーチへのリハビリ介入では,利き手・非利き手や性,年齢の要因を考慮する必要性が示唆された.
【目的】本調査は,手の遠位横アーチの可動域における利き手・非利き手や性,年齢による違いの有無を明らかにすることを目的とした.
【対象】既往に手の外傷や疾病がない20~60代の健常成人104名(男性46名,女性58名)の両手を対象とした.本研究において,対象者に十分な説明を行い,書面による同意を得て調査を行った.
【方法】手の遠位横アーチの測定において,第1~第3中手骨で成す角度を母指成分,第2~第4中手骨で成す角度を環指成分,そして第3~第5中手骨で成す角度を小指成分と設定し,これら3成分の合計角度を手の遠位横アーチ角度と定義した.測定は(株)日本医化器械製作所のNKシステムゴニオメーターを用い,自動での遠位横アーチの角度を測定した.統計解析は,2群間比較では測定値の正規性の有無によりt検定やMann-WhitneyU検定,Wilcoxon符号付順位検定を用いて分析を行った.多重比較には測定値の等分散性(Levene検定)の有無により,一元配置分散分析(F検定・Welch検定)を用いて解析した.有意水準は,5%未満で判定した.
【結果】1)利き手・非利き手比較:利き手(135.8±10.0度)と非利き手(131.4±10.1度)で有意な違いがあり,利き手で可動域が有意に大きかった(p<0.001).各成分においても利き手で有意に可動域が大きかった(p<0.001~p=0.025).2)性別比較:男女比較では,利き手・非利き手ともに有意な違いはなかった.しかし,各成分比較では,利き手・非利き手ともに環指成分で,女性の可動域が有意に大きかった(p=0.006,p=0.039).3)年代間比較:利き手で年代間に有意な違いが示され,60代は20~50代に比べ有意に低下し(p<0.001~p=0.029),非利き手においても60代は20代と30代に比べ有意に低下していた(p=0.032,p=0.005).
【考察】今回,自動での手の遠位横アーチについて,利き手・非利き手,性,年齢による違いについて調査・分析を行った.利き手の手関節では,日常で繰り返しの使用が多く,筋原線維構造における筋線維のタイプ変化により硬くなる可能性が報告(Durand.S, 2019)されている.しかし,今回の手の遠位横アーチでは利き手において可動域が大きく,手関節とは異なる結果であった.性別比較においても,手関節などでは筋・関節の硬さは男性で有意に強いとの報告(Nguyen.AP, 2020)がある.しかし,手の遠位横アーチ(全体)では,性別で明らかな違いは示されなかったが,環指成分では利き手・非利き手ともに女性で有意に可動域が大きく,女性では環指成分の動作が男性とは異なっている可能性が考えられた.年齢においては,60代では利き手・非利き手とも有意に可動域が低下することが示され,年齢の増加に伴う関節組織の粘性や弾性の増加(Nguyen.AP, 2020)が影響している可能性が考えられた.今回の調査より,手の外傷後など手の遠位横アーチへのリハビリ介入では,利き手・非利き手や性,年齢の要因を考慮する必要性が示唆された.