[OR-1-1] リスクマネジメント教育ツール試作版S-TPKYTの開発
【はじめに】本校では安全な医療を提供できる作業療法士の養成の必要性を感じ,1年次からリスクマネジメントに関する教育を実施してきた.その際,医療従事者のリスク予知能力を定量化するためTP-KYT(Time Pressure-Kiken Yochi Traning)効果測定システムを用いてきたが,採点に時間がかかるため即時FBが難しいなどの課題があった.即時に結果が確認でき,リスクマネジメント教育のツールとして使用を目指し,S-TPKYT(Step-Time Pressure Kiken Yochi Traning)を作成した.
【目的】簡便に使用できる教育ツール試作版S-TPKYTを開発し,その利点と課題を明らかにする.
【対象・方法】S-TPKYTの開発:TP-KYTの作成段階にて熟練者が指摘した危険な場所を基に,危険でなくなるようにTP-KYTの原図のイラストを改定しS-TPKYTの図案を作成した.作成作業は6名の作業療法士で実施し,図案は全11場面(①車椅子ブレーキ,②移乗先座面の広さ,③上肢の位置,④健側膝関節の角度,⑤履物の種類,⑥対象者の顔の向き,⑦ベッド柵の有無,⑧移乗先の布団の有無,⑨ナースコールの有無,⑩可動式ベッド柵の固定の有無,⑪患側足底接地の状態)である.実施にはGoogle Formを使用し,注目する場所に赤丸で印をつけた原図と改定図をランダムに「A」「B」とラベリングし左右に並べ問題を作成した.解答は「A」「B」どちらかと「どちらも危険でない」の3つの選択肢を設定した.また,終了後には正答が確認できる設定とした.
対象:作業療法士学科昼間部3年制課程1年生45名.男性8名,女性37名,平均年齢:20.16歳
方法:90分の授業にてS-TPKYTを実施し,その後に結果をもとに自分が危険と選択した理由を2人1組でディスカッションさせた.授業後にはアンケートを実施しS-TPKYTの感想を求めた.尚,所属の学校研究倫理審査委員会の承認を得て実施している(承認番号:第21-教82号)
【結果】学生の正答数は全11場面に対して平均6.24場面,最多正答数10場面,最小正答数2場面.全45名中の場面ごとの正答者数は①33名(73.3%),②37名(82.2%),③32名(71.1%),④5名(11.1%),⑤35名(77.8%),⑥25名(55.6%),⑦39名(86.7%),⑧19名(42.2%),⑨12名(26.7%),⑩3名(6.7%),⑪41名(91.1%).代表的な意見として「イラストを見比べることで,何が良くて何が悪いのか分かりやすい」,「丸がつけられてるから分かりやすい」などは複数の学生が記載していた.また「たまに違いがわからないものもあった」の意見も挙げられた.
【考察】これまで即時に採点できず個々への即時FBが難しかった点が,S-TPKYTは実施後すぐに結果が確認でき,その結果を基に学生同士でディスカッションを深めることができた.また,実施時間も10分前後で実施できるため,様々な場面の問題があれば多くの内容を学ぶことができる.また,イラストを並べ比較するところに印を入れたことで,1年生であっても考えやすく取り組みやすいものを作成することができた.しかし,今回スマートフォンでの使用では,実施画面を拡大し確認する学生も多々見られた.「違いがわかりにくい」との意見もあり,図案はイラストであるため①車椅子ブレーキの状態や⑩可動式ベッドの柵のロック部分などは小さく違いが見つけられなかった可能性がある.特に場面⑩は最も正答率が低く,学生のリスクについての臨床判断能力だけの影響ではない可能性があるため,イラストの改定の必要性がある.今後は上級学年や熟練者へも実施し,効果的なリスクマネジメント教育実践のため妥当性や信頼性の検証を含め改定を進めていきたい.
【目的】簡便に使用できる教育ツール試作版S-TPKYTを開発し,その利点と課題を明らかにする.
【対象・方法】S-TPKYTの開発:TP-KYTの作成段階にて熟練者が指摘した危険な場所を基に,危険でなくなるようにTP-KYTの原図のイラストを改定しS-TPKYTの図案を作成した.作成作業は6名の作業療法士で実施し,図案は全11場面(①車椅子ブレーキ,②移乗先座面の広さ,③上肢の位置,④健側膝関節の角度,⑤履物の種類,⑥対象者の顔の向き,⑦ベッド柵の有無,⑧移乗先の布団の有無,⑨ナースコールの有無,⑩可動式ベッド柵の固定の有無,⑪患側足底接地の状態)である.実施にはGoogle Formを使用し,注目する場所に赤丸で印をつけた原図と改定図をランダムに「A」「B」とラベリングし左右に並べ問題を作成した.解答は「A」「B」どちらかと「どちらも危険でない」の3つの選択肢を設定した.また,終了後には正答が確認できる設定とした.
対象:作業療法士学科昼間部3年制課程1年生45名.男性8名,女性37名,平均年齢:20.16歳
方法:90分の授業にてS-TPKYTを実施し,その後に結果をもとに自分が危険と選択した理由を2人1組でディスカッションさせた.授業後にはアンケートを実施しS-TPKYTの感想を求めた.尚,所属の学校研究倫理審査委員会の承認を得て実施している(承認番号:第21-教82号)
【結果】学生の正答数は全11場面に対して平均6.24場面,最多正答数10場面,最小正答数2場面.全45名中の場面ごとの正答者数は①33名(73.3%),②37名(82.2%),③32名(71.1%),④5名(11.1%),⑤35名(77.8%),⑥25名(55.6%),⑦39名(86.7%),⑧19名(42.2%),⑨12名(26.7%),⑩3名(6.7%),⑪41名(91.1%).代表的な意見として「イラストを見比べることで,何が良くて何が悪いのか分かりやすい」,「丸がつけられてるから分かりやすい」などは複数の学生が記載していた.また「たまに違いがわからないものもあった」の意見も挙げられた.
【考察】これまで即時に採点できず個々への即時FBが難しかった点が,S-TPKYTは実施後すぐに結果が確認でき,その結果を基に学生同士でディスカッションを深めることができた.また,実施時間も10分前後で実施できるため,様々な場面の問題があれば多くの内容を学ぶことができる.また,イラストを並べ比較するところに印を入れたことで,1年生であっても考えやすく取り組みやすいものを作成することができた.しかし,今回スマートフォンでの使用では,実施画面を拡大し確認する学生も多々見られた.「違いがわかりにくい」との意見もあり,図案はイラストであるため①車椅子ブレーキの状態や⑩可動式ベッドの柵のロック部分などは小さく違いが見つけられなかった可能性がある.特に場面⑩は最も正答率が低く,学生のリスクについての臨床判断能力だけの影響ではない可能性があるため,イラストの改定の必要性がある.今後は上級学年や熟練者へも実施し,効果的なリスクマネジメント教育実践のため妥当性や信頼性の検証を含め改定を進めていきたい.