第57回日本作業療法学会

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一般演題

基礎研究

[OR-2] 一般演題:教育 2

Sat. Nov 11, 2023 11:20 AM - 12:20 PM 第5会場 (会議場B2)

[OR-2-1] Virtual Realityを用いたリアルタイムのオンライン臨床実習の効果

田中 寛之1, 上野 慶太1, 上田 将也1, 横井 賀津志1, 仁木 一順2 (1.大阪公立大学医学部リハビリテーション学科 作業療法学専攻, 2.大阪大学大学院 薬学研究科附属実践薬学教育研究センター 医療薬学教育研究ユニット)

【はじめに】認知症の人に対して偏見を持たず, 適切な病態理解のもと接する態度を向上させることは作業療法士の教育過程で重要である.COVID-19による実習制限により, 学生の当事者との接触体験が減る中, 我々はzoomを用いたオンライン臨床実習を実施してきた(田中ら, 2021).しかし, 2D画面による実習は没入感が少なく, 雰囲気や対象者の状態などの情報が限定され課題が残った.近年では, この問題を解決するためバーチャルリアリティ(VR)が医学教育で用いられ, 臨場感のある接触体験ができることが報告されている(Tangら, 2022).本研究では, VRを用いたリアルタイムのオンライン実習を実施し, 作業療法学生における認知症の人に対する態度の改善効果を2D画面の実習と比較検証することとした.
【方法】対象者:大阪公立大学医学部リハビリテーション学科作業療法学専攻の3年生から募集した.研究デザイン・割り付け:単施設の非盲検化の準ランダム化比較試験で, 対象者ごとに乱数を発生させ, VRによる介入群(介入群)と2Dモニターによる比較群(比較対照群)の2群に割り付けた.介入機器:介入群では360度映像リアルタイム配信サービス(AVATOUR, NTTコミュニケーションズ)をインストールしたVRヘッドセット(Meta Quest 2)を使用した.対照群は, AVATOURのPCブラウザ版(2D)を使用し教室内のモニターを視聴した.協力施設:大阪府内の介護老人保健施設で, 観察対象者, 作業療法士が個室で実施した.観察対象者は, 80代女性の軽度認知症の入所者であった.手順:オンラインによる見学実習を20分間, 作業療法士および観察対象者との質疑応答20分の計40分間実施された.作業療法の内容は, 目標設定のための生活歴の聴取, MMSE, ROM, MMTとした.評価:年齢, 性別, 認知症の人との接触経験などを聴取した.介入効果指標として, 認知症に対する態度尺度, 知識尺度, 認知症・高齢者のイメージ尺度を用いて, 介入実施の直前直後に実施した. 統計解析:反復測定二元配置分散分析を実施し, 各尺度の主効果, 交互作用を算出した.統計解析ソフトはSPSS version 28を使用し, 有意水準は0.05未満とした.倫理的配慮:本研究は, 大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科倫理委員会(2022-207)の承認を得ており, UMIN臨床試験に登録(UMIN000048956)した.
【結果】26名うち19名が参加し, 介入群10名, 対照群9名に割り付けられた.態度尺度では, 介入群で44.9±4.3点から47.3±3.3点に, 対照群で46.6±4.5点から48.6±4.9点となり, 介入による主効果(F値 = 12.891, p = 0.002)を認め, 交互作用は認められなかった(F値 = 0.033, p = 0.858).知識尺度では, 介入群で13.1±1.1点から12.3±1.7点に, 対照群の得点は12.9±2.0点から13.3±1.2点となり, 介入による主効果(F値=0.256, p=0.62)および交互作用(F値=1.561, p=0.22)は認められなかった.認知症・高齢者のイメージ尺度では, 介入群では40.7±6.1点から48.5±6.5点に, 比較対照群は36.9点±6.5点から47.6点±8.0点となり, 介入による主効果(F値=39.029, p<0.001)を認め, 交互作用は認められなかった(F値=0.422, p=0.52).
【考察・まとめ】認知症に対する態度尺度と認知症・高齢者のイメージ尺度が, 両群ともに実施直後改善したが, VR群と2D群との間に効果の差は認められなかった.VRによる介入は2Dモニターよりも態度の改善に有用とは言えなかったが, オンラインの臨床実習は認知症への理解や態度の即時的な変化につながり, 作業療法教育において有用であるとも考えられた.