第57回日本作業療法学会

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一般演題

基礎研究

[OR-2] 一般演題:教育 2

Sat. Nov 11, 2023 11:20 AM - 12:20 PM 第5会場 (会議場B2)

[OR-2-2] 多職種連携教育VRコンテンツ制作の報告 第2報

四元 祐子1, 山下 喬之2, 平原 大助3, 佐々木 信幸4 (1.学校法人原田学園 鹿児島医療技術専門学校作業療法学科, 2.学校法人原田学園 鹿児島医療技術専門学校理学療法学科, 3.学校法人原田学園 経営企画室, 4.聖マリアンナ医科大学リハビリテーション医学講座)

【はじめに】
 新しい作業療法士養成校指定規則の一部改正では,卒業前における多職種連携教育(以下,IPE)が求められた.しかし,各校に設置される学部や学科,附属病院等の併設機関の有無等の条件が異なることから,限りある学習環境資源の範疇でIPEを実施せざるを得ない.これらに対するVirtual Reality(以下,VR)教材の導入は,IPE の「必要性高さに反して,限られた環境と資源による実現性の低さ」という課題を,解消することが可能になると見込んでいる.具体的には,VRを利活用し,離れた場所においても再現された臨床空間と各職業の実務の流れ,そして臨床現場における協働場面の体験である.このVRコンテンツを開発したことを報告する.
【開発方法】
 本校は,診療放射線技術学科,看護学科,介護学科,理学・作業療法学科,言語聴覚学科の6学科を有する.各学科の教員で構成されたVR 教材開発チームでは,職種ごとに業種と再現シーンを縦断・横断させた枠組みで構成し,職業理解と多職種が連携する流れを多角的に捉えながら考えた.その内容は,脳卒中後右上下肢痙縮の障害を有する対象者を中心に行われる,主治医と理学,作業療法士(以下療法士)との多職種連携だ.撮影は,株式会社ジョリーグッドのオペクラウドシステムを活用して行われ,映像の配信は学内ネットワーク環境下での専用アプリの使用,映像の視聴にはPicoG2・4Kゴーグルを用いた.
【結果】
 制作した教材は,VRゴーグルを装着して視聴する.教材の内容は,対象者と医療従事者間でボツリヌス療法の効果を共有することを目的に,実際の治療場面とボツリヌス療法前後の療法士評価が約20分の映像で制作された.学習者はVR映像を再生して,検査を見学する実習生目線で,連携場面を疑似体験できる.
【考察】
 近年,作業療法臨床実習は,医療の高度化,患者の高齢化・重症化,平均在院日数の短縮等により,業務も多様化・複雑化しているなかで行われている.また,患者の人権への配慮や,医療安全確保のための取り組みが強化され,臨床実習指導者の指導,監督の下で行われる臨床実習の機会については各施設で偏りがある.よって,仮想空間で再現された映像の要所でイラストやテロップ,写真を用いた説明が表示される工夫をすることで,学習者は各職業とその役割に加え,多職種連携に関する学習の要点を理解することができる.このことは,自らとは異なる職種の職業理解を促し,自職種の専門性を振り返ることへ繋がると考えられる.また,これまでの2D画面に映し出される映像教材では,学習させたい場面の全体が1つの画面上に映し出していたが,360°VR映像内では,学習者自身が見たいところへ視線を向けることとなる.つまり,学習者自らが,自由な視点で映像を視聴できることは,学習者の学びの範囲を広げると同時に,高い没入感で学習に臨むことが可能となる.今後は,VR教材のいつ誰がどのタイミングで視聴できる良さを検証するために,学習者が自宅で視聴する予定となっている.このような先端技術を用いた教材は,学習環境の地理的,時間的制約の特性は変容し,授業者の教授方法に大きな可能性が広がることが推測できる.
 倫理に関して,本稿は教材開発の報告で,侵襲を伴う事項や,個人情報に関与する事項は存在しない.鹿児島医療技術専門学校倫理審査委員会倫理審査番号22014.利益相反については,令和4年度文部科学省専修学校における先端技術利活用実証研究により委託を受けたものである.