[OR-2-4] 臨床共観で作業療法リーズニングを学ぶ
【はじめに】当院リハビリテーション(以下リハと略す)科ではICFを基盤に,リーズニングの理解を促進しようとしてきた.しかし作業療法のリーズニングは,人と作業に焦点を当てる必要がありICFでは不十分である.そこで経験豊富な作業療法士が所属作業療法士(以下OT)の臨床を共観し,作業療法リーズニングを援助した.共観は高評価であったので,共観でOTがどのような気づきを得たのかをまとめ,今後のリーズニング学習の指針を見つけたいと考えた.本研究は当該施設倫理委員会の承認を得ている.
【方法】対象は病棟担当のOT9名(経験2〜15年,平均7.9年).期間は2021年10月〜12月,臨床共観をのべ55回,1人平均6.1回行った.共観ではベテランOTの共観者が担当OTの臨床に参加して,評価や治療的介入のリーズニングをどのように行っているのかを観察し相談した.その後フィードバックとして共観者が観察記録を行い,OTが感想を記載した.共観の実施期間終了の後に,インタビューガイド(・共観が患者やOT自身に役立ったか・汎化したか・共観で何を学んだか)に従い,半構成的面接を行った.1人約30分間,録音し逐語録を作成し,逐語録データをテキストマイニングの手法で分析した.(KH-Coderを使用)
【結果】抽出された12396語を共起ネットワーク分析すると,6つのクラスターが生成された. それぞれ「共観による気づき」「リーズニングはもやもや」「作業の理論が共通言語」「共有と気づき,学び」「相談することが大切」「共観されるOTの気持ち」と名付け,これを以下の3つにカテゴライズした.『リーズニングを主体的に学びたい』のカテゴリーは,共観で作業療法の視点が広がり,リーズニングや理論の大切さを理解し,作業療法理論学習の必要性を感じている.また自分が共観者となり,他のOTの作業療法を共観したいと言っている.『記録・共有で理解が深まる』は,他のOTに相談したり,カルテに記録することで,思考が整理され,他職種の作業療法への理解が促進されると言っている.『学習の主体』は「最初は評価される気持ち」や「一緒に考えるって楽しい」で表され,指導的になりがちな共観者への注意喚起であり,共観の主体が共観者ではなくOTであることを気づかせてくれる.
またOTを経験年数で・リーズニングの新人1~4年・中堅5~10年・ベテラン11年~に分けて,逐語録を経験によって対応分析した.新人とベテランの特徴的な語を要約すると,新人は「リーズニング能力の不足」「機能への偏重」「作業モデルや理論が使えていない」こと,ベテランは「作業療法理論を学ぶことでリーズニングが進む」「作業に焦点化してOTの役割を果たすことができる」と言っている.
【考察】共起ネットワーク分析による「リーズニングを主体的に学びたい」と「記録・共有で理解が深まる」という概念生成,対応分析による「作業モデルや理論が使えていない」「理論を学ぶことでリーズニングが進み,OTの役割を果たすことができる」という言及,これらから作業に焦点化した作業療法リーズニングの必要性への気づきが,共観で一気に進んだと思われる.作業療法リーズニングは臨床経験とともに自然に発達するものではなく,「経験について省察しなければならない」と言われている.ベテランによる共観は,受動的な学習になる要素を含んでいるが,「リーズニングを主体的に学びたい」と「記録・共有で理解が深まる」の概念は,主体的な学習者として「経験を省察する」機会に繋がるチャンスであると思われる.ベテランに依らないOT相互の共観の試みは,より主体的な学習が期待できる.しかしベテランの視点に代わるリーズニングのツールの準備が必要になると思われる.
【方法】対象は病棟担当のOT9名(経験2〜15年,平均7.9年).期間は2021年10月〜12月,臨床共観をのべ55回,1人平均6.1回行った.共観ではベテランOTの共観者が担当OTの臨床に参加して,評価や治療的介入のリーズニングをどのように行っているのかを観察し相談した.その後フィードバックとして共観者が観察記録を行い,OTが感想を記載した.共観の実施期間終了の後に,インタビューガイド(・共観が患者やOT自身に役立ったか・汎化したか・共観で何を学んだか)に従い,半構成的面接を行った.1人約30分間,録音し逐語録を作成し,逐語録データをテキストマイニングの手法で分析した.(KH-Coderを使用)
【結果】抽出された12396語を共起ネットワーク分析すると,6つのクラスターが生成された. それぞれ「共観による気づき」「リーズニングはもやもや」「作業の理論が共通言語」「共有と気づき,学び」「相談することが大切」「共観されるOTの気持ち」と名付け,これを以下の3つにカテゴライズした.『リーズニングを主体的に学びたい』のカテゴリーは,共観で作業療法の視点が広がり,リーズニングや理論の大切さを理解し,作業療法理論学習の必要性を感じている.また自分が共観者となり,他のOTの作業療法を共観したいと言っている.『記録・共有で理解が深まる』は,他のOTに相談したり,カルテに記録することで,思考が整理され,他職種の作業療法への理解が促進されると言っている.『学習の主体』は「最初は評価される気持ち」や「一緒に考えるって楽しい」で表され,指導的になりがちな共観者への注意喚起であり,共観の主体が共観者ではなくOTであることを気づかせてくれる.
またOTを経験年数で・リーズニングの新人1~4年・中堅5~10年・ベテラン11年~に分けて,逐語録を経験によって対応分析した.新人とベテランの特徴的な語を要約すると,新人は「リーズニング能力の不足」「機能への偏重」「作業モデルや理論が使えていない」こと,ベテランは「作業療法理論を学ぶことでリーズニングが進む」「作業に焦点化してOTの役割を果たすことができる」と言っている.
【考察】共起ネットワーク分析による「リーズニングを主体的に学びたい」と「記録・共有で理解が深まる」という概念生成,対応分析による「作業モデルや理論が使えていない」「理論を学ぶことでリーズニングが進み,OTの役割を果たすことができる」という言及,これらから作業に焦点化した作業療法リーズニングの必要性への気づきが,共観で一気に進んだと思われる.作業療法リーズニングは臨床経験とともに自然に発達するものではなく,「経験について省察しなければならない」と言われている.ベテランによる共観は,受動的な学習になる要素を含んでいるが,「リーズニングを主体的に学びたい」と「記録・共有で理解が深まる」の概念は,主体的な学習者として「経験を省察する」機会に繋がるチャンスであると思われる.ベテランに依らないOT相互の共観の試みは,より主体的な学習が期待できる.しかしベテランの視点に代わるリーズニングのツールの準備が必要になると思われる.