第57回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等

[OR-3] 一般演題:教育 3

Sun. Nov 12, 2023 8:30 AM - 9:30 AM 第5会場 (会議場B2)

[OR-3-3] 職能団体への入会促進および基礎研修履修に向けた取り組み

菊 修一郎, 安西 直人 (社会医療法人愛仁会 尼崎だいもつ病院リハ技術部作業療法科)

【序論】日本作業療法士協会(以下,協会)および各都道府県士会(以下,県士会)における組織率の向上は,社会的認知度と地位の向上のみならず,患者への安全な作業療法の提供に繋がるため,常に取り組むべき重要な課題である.しかし,昨今,協会・県士会の組織率は年々低下傾向,当院でも同様の傾向があり,職能団体を維持する上でも危機感をもたなければならない.
【目的】当院作業療法科職員(以下,科員)の協会・県士会の入会率および基礎研修履修状況を確認し,入会の時期や目的,契機等を調査・分析することで,未入会者への入会促進および基礎研修率履修向上に向けた効果的な支援について考える.
【方法】2022年4月,科員38名を対象に,Microsoft office Formsを使用し,協会・県士会に関するアンケート調査を行った.なお,今回の発表は,所属施設の倫理審査委員会の承認を得ている.質問は,大きく3つ,(1)協会・県士会の入会状況(入会有無,入会までの期間,入会の契機),(2)基礎研修の理解(研修項目・内容の理解,申込方法,修了条件,医療福祉eチャンネルの利用,基礎ポイント対象研修会の情報収集),(3)自分自身の基礎研修履修状況の理解,について行った.質問形式は選択式回答とした.
【結果1】アンケート結果から,(1)協会入会率71.1%,県士会入会率50.0%,基礎研修修了者率10.5%(現職者共通研修履修率27.6%,選択研修履修率27.6%)であった.入会している科員においては,「3か月以内に入会」が最も多く,入会の契機としては「職場の先輩や上司に勧められた」,「自己研鑽のため」が多く挙がった.(2)基礎研修については,研修項目や内容,申込方法,修了条件に関して「あまり知らない」という回答が最も多く,医療福祉eチャンネルに関しては「全く知らない」が多かった.(3)自分自身の履修状況については,「あまり知らない」という回答が多かった.
【対策】(1)入会率向上に向けて,未入会の科員に面談を実施,職能団体に入る必要性について対話を行い,その内の数名は今年度の目標管理の一つに基礎研修の履修を取り入れた.(2)基礎研修の理解度向上,履修促進に向けて啓発ポスターを作成し掲示(基礎研修修了条件および医療福祉eチャンネル案内等),適宜研修会情報のアナウンスを行った.(3)基礎研修履修状況の確認を行うため,履修状況を紙面に可視化し,科責任者が面談時に定期的に確認することとした.
【結果2】2022年12月末に入会・研修履修状況を可視化した紙面を回収,結果,協会入会率100%,県士会入会率92.1%,基礎研修修了者率は10.5%と変化なかったが,履修率(共通研修43.2%,選択研修40.8%)は向上した.
【考察】今回の調査より,入会の契機は「職場の先輩や上司に勧められた」が最も多く,協会・県士会の案内のみではなく,職場での定期的な声掛けが必要だと分かった.職能団体への入会は強制的にはならないよう配慮しながら,「どんな作業療法士になりたいのか」,「そのためには何が必要か」を共に考えていくことが必要だと感じた.また今回改めて分かったことは,スマートホン等でインターネットの情報を見聴きしている若手科員が,意外にも入会方法や研修会の情報収集をどのようにしたら良いのか分からないという声が多く聴かれた.協会や一部の県士会からはSNSを活用した情報発信をしているが,さらに情報発信の工夫ができれば,今後の協会・県士会の組織率向上に繋がるのではないかと考える.