[OR-3-5] 領域別臨床実習における経験事項からの一考察
【背景】2018年10月に厚生労働省から告示された「理学療法士・作業療法士養成施設指導ガイドライン」では2020年4月1日から臨床実習指導者の指導・監督の下で診療参加型臨床実習(以下,CCS)が望ましいと明記された.長崎リハビリテーション学院は全施設CCS実習開始と同時に長崎県下の作業療法士養成校で共通のツールとして作成したCCSチェックリスト(以下,CL)を用いて技能毎に経験事項のチェックを行った.臨床実習(以下,実習)における身体,精神,発達,老年期の領域毎の経験事項は明らかになっていない.
【目的】実習の経験事項についてCLを基に調査し,領域毎の経験の特徴を明らかし,学内教育に生かすことである.
【方法】対象は2022年度に実習を履修した作業療法学科最終学年の3年生28名が実習において記入したCLである.実習期間は8週間,2期の実習で構成され,それぞれでCLを記入した.CLを身体,精神,発達,老年期の領域毎に分類し,各項目の見学・模倣・実施の経験が1回以上ある,なしに分類し,実施率,模倣率,見学率の上位の項目を抽出した.実施率は実習期間を通して実施に記載のあった割合とした.模倣率は実施には記載がなく模倣に記載がある割合とした.見学率は実施及び模倣のいずれにも記載がなく見学のみに記載がある割合とした.そして身体,精神,発達,老年期の各領域で比較をした.また,本研究において対象者が特定されないように個人情報を匿名化し,研究への使用については,事前に説明し承諾を得た.
【結果】回収率は89%(25名)であった.それぞれの学生が2期の実習を経験しており,のべ50件のうちコロナウイルス感染対策で学内実習となり臨地実習が4週未満となった施設を除き,48件を対象とした.身体領域は33件,精神領域は7件,発達領域は5件,老年期領域は3件であった.身体領域において実施率の高かった項目は,比率が高いものから関節可動域測定81.8%,バイタル測定78.8%,医学的情報収集75.8%,認知機能評価72.7%,姿勢動作分析69.7%,関節可動域訓練69.7%,コミュニケーション63.6%であった.精神領域においては医学的情報収集100%,コミュニケーション100%,集団場面での行動観察100%,社会的情報収集85.7%,作業種目の選択85.7%,行動に対するアプローチ71.4%,意欲に対するアプローチ71.4%,認知機能に対するアプローチ71.4%であった.発達領域においては医学的情報収集60%,社会的情報収集60%,リスク管理40%,行動観察40%,日常生活動作評価観察40%であった.老年期領域においては医学的情報収集100%,姿勢動作分析100%,コミュニケーション100%,バイタル測定66.7%,リスク管理66.7%,姿勢反射検査66.7%,環境評価66.7%であった.
【考察】全領域で情報収集の項目の実施率が高かった.これは実習で許容される臨床技能の水準とその条件(日本作業療法士協会,作業療法実習の手引き2022)の水準1の項目に属するように侵襲性が低く,学生が実施しやすい項目であると考えられる.身体領域においてバイタル測定や関節可動域測定等の基本的介入項目は実施率が高く,これらの項目も水準1の項目に属している.精神領域は集団場面観察や意欲,行動等のアプローチの実施率が高かった.発達領域は観察項目の実施率が高った.対象者の特性に合わせた対応が必要となり観察の視点が重要になると考える.学内教育において基本的介入項目や個別の関わりはOSCEを通して学習を積ませているが,集団の観察は不足していることに改めて気付き,このような領域毎の傾向があることをふまえて学内教育を見直す必要があると考えられる.
【目的】実習の経験事項についてCLを基に調査し,領域毎の経験の特徴を明らかし,学内教育に生かすことである.
【方法】対象は2022年度に実習を履修した作業療法学科最終学年の3年生28名が実習において記入したCLである.実習期間は8週間,2期の実習で構成され,それぞれでCLを記入した.CLを身体,精神,発達,老年期の領域毎に分類し,各項目の見学・模倣・実施の経験が1回以上ある,なしに分類し,実施率,模倣率,見学率の上位の項目を抽出した.実施率は実習期間を通して実施に記載のあった割合とした.模倣率は実施には記載がなく模倣に記載がある割合とした.見学率は実施及び模倣のいずれにも記載がなく見学のみに記載がある割合とした.そして身体,精神,発達,老年期の各領域で比較をした.また,本研究において対象者が特定されないように個人情報を匿名化し,研究への使用については,事前に説明し承諾を得た.
【結果】回収率は89%(25名)であった.それぞれの学生が2期の実習を経験しており,のべ50件のうちコロナウイルス感染対策で学内実習となり臨地実習が4週未満となった施設を除き,48件を対象とした.身体領域は33件,精神領域は7件,発達領域は5件,老年期領域は3件であった.身体領域において実施率の高かった項目は,比率が高いものから関節可動域測定81.8%,バイタル測定78.8%,医学的情報収集75.8%,認知機能評価72.7%,姿勢動作分析69.7%,関節可動域訓練69.7%,コミュニケーション63.6%であった.精神領域においては医学的情報収集100%,コミュニケーション100%,集団場面での行動観察100%,社会的情報収集85.7%,作業種目の選択85.7%,行動に対するアプローチ71.4%,意欲に対するアプローチ71.4%,認知機能に対するアプローチ71.4%であった.発達領域においては医学的情報収集60%,社会的情報収集60%,リスク管理40%,行動観察40%,日常生活動作評価観察40%であった.老年期領域においては医学的情報収集100%,姿勢動作分析100%,コミュニケーション100%,バイタル測定66.7%,リスク管理66.7%,姿勢反射検査66.7%,環境評価66.7%であった.
【考察】全領域で情報収集の項目の実施率が高かった.これは実習で許容される臨床技能の水準とその条件(日本作業療法士協会,作業療法実習の手引き2022)の水準1の項目に属するように侵襲性が低く,学生が実施しやすい項目であると考えられる.身体領域においてバイタル測定や関節可動域測定等の基本的介入項目は実施率が高く,これらの項目も水準1の項目に属している.精神領域は集団場面観察や意欲,行動等のアプローチの実施率が高かった.発達領域は観察項目の実施率が高った.対象者の特性に合わせた対応が必要となり観察の視点が重要になると考える.学内教育において基本的介入項目や個別の関わりはOSCEを通して学習を積ませているが,集団の観察は不足していることに改めて気付き,このような領域毎の傾向があることをふまえて学内教育を見直す必要があると考えられる.