[PA-1-1] 更衣動作改善に向けた患者と介助者のコラボレーションプログラムの実践報告
【はじめに】急性期脳卒中病棟リハビリテーションにおけるADLの改善に向けた先行研究は散見される.我々もそれらに基づき超急性期より支援しているが,FIMを指標とするADLの改善には難渋する場面が多い.当院脳卒中病棟の看護師,看護助手に行ったADLに関するアンケートでは,リハビリテーションスタッフ(以下,リハスタッフ)によりADL訓練を実施していることを知ってはいるが,トイレや食事以外のADLでその実感を得られていないという回答があった.訓練場面では実施可能であるが実際場面ではその限りでないという事例を通して,患者とリハスタッフ,看護師や看護助手が「しているADL」を実現できる仕組みを作ることで,先人たちの英知による恩恵を享受できるのではないかと考え,本活動に取り組んだ.
【目的】患者とリハスタッフ,看護師,看護助手が患者自身の現状能力を把握し,FIMを指標として「しているADL」レベルでの自立度向上を遂げる仕組みを作ること,どの患者にも活用できるような持続可能な仕組み作ることとした.また対象のFIMにおける更衣の得点を5点(監視)まで改善させることを活動の目標とした.
【方法】本研究の実施と発表に際し,当院倫理委員会の承認と参加した者には内容を説明し同意を得た.開示すべきCOI関係にある企業等はない.対象は脳卒中病棟に入院する脳血管疾患患者で,作業療法にて更衣動作訓練を実施している者とした.実施期間は1患者につき1週間で,リハスタッフが朝の更衣場面に隔日で介入した.対象には実際場面での気づきや訓練のポイント等を共に反芻する機会を設けた.実際場面での評価に基づいて,看護師や看護助手と介助方法や環境調整のポイントを共有し,FIMを用いて更衣動作を点数化し成果をフィードバックするためのミニカンファレンスをその都度行った.これらの流れをシステム化し,活動の中間評価として看護師,看護助手を対象としたアンケートにて更衣介助における悩みを聴取し,それらを解決するための実技演習等を行い,知識や技術の共有化を図った.
【結果】2022年4月から8月にかけて延べ32名を対象とした.発症日から実施までは平均15.5日で,1名あたりの平均実施日数は4.6日であった.更衣の平均FIM値は,上半身3.25点から4.4点,下半身は3.06点から4.34点と「中等度介助から軽度介助」に改善した.またFIM値の合計平均も54.6点から69.3点と改善を認めた.
【考察】FIMにおける更衣の得点を5点まで改善させるという本活動の目標の達成には至らなかった要因として,対象の疾患や全身状態の基準を設けておらず,身体機能や高次脳機能がそれぞれに異なっていたためと考える.しかし対象の病態は様々であったものの,その多くで更衣動作能力の向上を認めた.要因として,本活動がリハスタッフや病棟看護師,看護助手による情報共有を簡潔化し,対象の現状能力に対する理解の不足や,身体機能障害,高次脳機能障害に応じた介助方法の悩みを解消することにより,過介助を回避する仕組みとなったためと考える.また対象が訓練で培った能力を実際場面で反芻することによってフィードフォワード制御を促進し,対象自身の自己有用感を高めたことも要因として考えられる.本活動におけるADL向上に向けたコラボレーションプログラムは,患者やリハスタッフ,看護師,看護助手それぞれが共通の目標を持ち,日々の臨床場面で短いながらも的確な情報交換を行うことで,目標の達成に寄与する可能性を示唆している.合目的で簡便であるため,サステナブルな仕組みとして更衣動作のみならず「しているADL」の質的向上を果たすために,今後もアップデートを重ねていく次第である.
【目的】患者とリハスタッフ,看護師,看護助手が患者自身の現状能力を把握し,FIMを指標として「しているADL」レベルでの自立度向上を遂げる仕組みを作ること,どの患者にも活用できるような持続可能な仕組み作ることとした.また対象のFIMにおける更衣の得点を5点(監視)まで改善させることを活動の目標とした.
【方法】本研究の実施と発表に際し,当院倫理委員会の承認と参加した者には内容を説明し同意を得た.開示すべきCOI関係にある企業等はない.対象は脳卒中病棟に入院する脳血管疾患患者で,作業療法にて更衣動作訓練を実施している者とした.実施期間は1患者につき1週間で,リハスタッフが朝の更衣場面に隔日で介入した.対象には実際場面での気づきや訓練のポイント等を共に反芻する機会を設けた.実際場面での評価に基づいて,看護師や看護助手と介助方法や環境調整のポイントを共有し,FIMを用いて更衣動作を点数化し成果をフィードバックするためのミニカンファレンスをその都度行った.これらの流れをシステム化し,活動の中間評価として看護師,看護助手を対象としたアンケートにて更衣介助における悩みを聴取し,それらを解決するための実技演習等を行い,知識や技術の共有化を図った.
【結果】2022年4月から8月にかけて延べ32名を対象とした.発症日から実施までは平均15.5日で,1名あたりの平均実施日数は4.6日であった.更衣の平均FIM値は,上半身3.25点から4.4点,下半身は3.06点から4.34点と「中等度介助から軽度介助」に改善した.またFIM値の合計平均も54.6点から69.3点と改善を認めた.
【考察】FIMにおける更衣の得点を5点まで改善させるという本活動の目標の達成には至らなかった要因として,対象の疾患や全身状態の基準を設けておらず,身体機能や高次脳機能がそれぞれに異なっていたためと考える.しかし対象の病態は様々であったものの,その多くで更衣動作能力の向上を認めた.要因として,本活動がリハスタッフや病棟看護師,看護助手による情報共有を簡潔化し,対象の現状能力に対する理解の不足や,身体機能障害,高次脳機能障害に応じた介助方法の悩みを解消することにより,過介助を回避する仕組みとなったためと考える.また対象が訓練で培った能力を実際場面で反芻することによってフィードフォワード制御を促進し,対象自身の自己有用感を高めたことも要因として考えられる.本活動におけるADL向上に向けたコラボレーションプログラムは,患者やリハスタッフ,看護師,看護助手それぞれが共通の目標を持ち,日々の臨床場面で短いながらも的確な情報交換を行うことで,目標の達成に寄与する可能性を示唆している.合目的で簡便であるため,サステナブルな仕組みとして更衣動作のみならず「しているADL」の質的向上を果たすために,今後もアップデートを重ねていく次第である.