第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-1] ポスター:脳血管疾患等 1

2023年11月10日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-1-10] 修正CI療法における利き手,非利き手の違いが効果量に与える影響の検討

北谷 渉, 川上 直子, 川北 慎一郎 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院)

【はじめに】
近年,Constraint-Induced movement therapy(以下,CI療法)は,時期や重症度,ロボット療法との併用など様々な効果が示されている.Transfer packageを主として麻痺手の行動変容は,各対象者により麻痺手使用の機会や頻度が異なることもあり,麻痺手が利き手かどうかで特に使用頻度の改善に影響しうることが予想される.しかし,本邦において修正CI療法で,利き手,非利き手による影響についての報告はない.今回,麻痺側上肢機能,麻痺側上肢の使用頻度に与えた効果を利き手と非利き手で比較,検討したため報告する.
【対象,方法】
2014年1月から2022年3月に当院で修正CI療法を実施した15名で,麻痺側が利き手7名(以下,利き手群),非利き手8名(以下,非利き手群),全員右利きだった.適応基準は先行研究による修正CI療法を参考にし,期間は1日5時間10日間である.平均年齢(利き手群/非利き手群)は,63.0±16.9/52.7±15.9歳,開始時の発症日数は,677.1±1137.3/355.5±341.8日だった.評価時期は介入前と介入直後とし,評価項目は,麻痺側上肢機能をFMA(上肢項目得点)とMAL-QOM(平均),麻痺側上肢の使用頻度をMAL-AOU(平均)とした.両群とも発症からの日数差が大きいため,まずは発症1年未満6名と以上9名の両群の介入前後の値に対して,対応のあるT検定を用いて有意差を確認した後に,利き手,非利き手の両群の介入前後を検討した.また,介入前後の変化量には,先行研究による臨床的有意性を示す指標である最小可検変化量(FMAが5.2点,MAL-QOMが0.77点,MAL-AOUが0.84点)を用いた解釈も行った.統計学的有意差判定基準は5%未満とした.解析ソフトはIBM SPSS Statistics version 23を用いた.報告にあたり,個人を特定できない情報のみを対象とした.
【結果】
発症1年未満と以上の比較(介入前/後)では,1年未満群がFMAで47.6±9.29/54.7±8.01(P=0.01),MAL-QOMで2.04±0.84/3.08±0.98(P=0.04),MAL-AOUで1.94±0.97/3.22±0.92(P=0.03)であった.1年以上では,FMAで48.8±11.36/54.0±10.93(P=0.01),MAL-QOMで1.25±0.68/2.11±0.68(P>0.05),MAL-AOUで1.15±0.55/1.90±0.69(P>0.05)であった.1年未満群は全項目で有意に改善を認め,1年以上群より変化量も大きかったのに対し,1年以上群ではMAL-QOM,MAL-AOUでは有意差がなかった.利き手,非利き手間での介入前後の結果では,利き手群ではFMAが45.00±8.88/51.71±8.80(P<0.01),MAL-QOMが1.62±0.69/2.61±0.88(P<0.01),MAL-AOUが1.39±0.63/2.52±0.54(P=0.02)であった.非利き手群では,FMAが40.63±10.05/56.88±8.39(P=0.01),MAL-QOMが1.92±1.01/2.88±1.19(P=0.01),MAL-AOUが1.93±1.08/3.01±1.35(P=0.02)となり,両群ともに介入前後で有意に改善を認めた.変化量(利き手群/非利き手群)では,FMAが6.71±1.70/6.25±5.20,MAL-QOMが0.99±0.66/0.96±0.77,MAL-AOUが1.13±0.37/1.08±1.00で,利き手群がより機能,使用頻度の評価ともに変化量が大きく,最小可検変化量も満たした.
【考察】
修正CI療法により利き手と非利き手の両群で有意な改善を認め,利き手群でわずかに変化量が大きかった.麻痺手が利き手であると,特に使用頻度においては病前生活の中で使用していた項目が多く,上肢機能の改善とともに使用頻度の改善にもつながることが示唆された.しかし,本報告での変化量はわずかな差であり,発症1年以上群では,機能,使用頻度ともに最小可検変化量を満たさなかった.今後は,両群間での発症日数,介入前の評価結果にも考慮し,変化量に対しての解析や介入以降のフォローを行っていく必要がある.