[PA-1-15] 課題志向型アプローチと合意目標の重要性の認識
【はじめに】
課題志向型アプローチは上肢機能だけでなく生活における使用頻度に改善を認める報告がある.今回,麻痺側上肢で何を獲得したいかの合意目標をたて,課題志向型アプローチとtransfer packageを取り入れたことで生活場面における麻痺側上肢の使用頻度・使いやすさが向上した症例を経験したので報告する.
【初期評価】
56歳男性・左脳梗塞発症,既往歴なし.発症から30日後に当院回復期病棟に入院となるも新型コロナウイルスに感染し,入院から30日後にリハビリテーション介入となる.利き手は右.Brunnstorom-recovery-stage(Brs)上肢V手指V,表在覚中等度鈍麻,深部覚軽度鈍麻,Fugl meyer assessment(FMA)51点,Moter Activity Log(MAL)でAmount of use (AOQ) 0.77,Quality of Movement(QOM)0.88,簡易上肢機能検査(STEF)右5点,左92点,握力右6.3kg,左30.2kg,疼痛なし.Functional Independence Measure(FIM)73点,Mini Mental state Examination-Japanese(MMSE-J)24点だった.「手が良くなりたい」という発言はあるが日常生活での使用頻度は少ない状態であった.非麻痺側上肢中心に日常生活を過ごしていた.
【方法】
MALの質問表のやり取りから,「スプーンが使えるようになりたい」「名前が書けるようになりたい」のdemandsがみられるようになり,合意目標とした.OTプログラムの目的として中枢部は安定性・空間保持を獲得,末梢部は物品の把持・操作獲得とした.肩・前腕・手指の筋力トレーニングを代償動作に注意し反復した.スプーンや鉛筆把持には背側筋の柔軟性を確保するため弾性包帯で持続的に伸張し,鍵握り3指指腹つまみの手形態を作りやすくし,太柄ラバーでフィット感を補った.鉛筆は6B使用し,鉛筆操作が成功するよう工夫した.段階的に難易度を調整しtransfer packageを取り入れた.スプーン操作は分回し運動を中心に反復した.ADLへも介入し修正点の評価と改善できた点をフィードバックしていった.
【結果】
Brs上肢V,手指VI,表在覚軽度鈍麻,深部覚軽度鈍麻,FMA58点,MALのAOQ2.77, QOM2.44,STEF右60点,左95点,握力右12.6kg,左30.2kg,疼痛なし.FIM122点, MMSE-J 27点だった.MALにおいてAOQ・QOMともに14項目中6項目に1点以上改善がみられた.合意目標であるスプーンやフォークを把持して食事をとる,の項目でもAOQ,QOMともに2点改善した.食事動作介入時は「白米は右手で全部すくってるよ」とpositiveな発言もみられた.鉛筆操作においても2Bの鉛筆で自助具を使用せずサインが書けるようになった.洗体・洗髪の両手動作も増え,「ごみ袋も結べたよ」と発症前の仕事の作業工程ができたことは自信へと繋がった.その他に「自主練習として2時間はやりたいな」と主体性の向上へと繋がった.
【考察】
合意目標を設定する上で,MALの質問表のやり取りの中で主体的に考えた結果,「日常生活でも麻痺側上肢を使いたい」という気持ちへと変化した.練習では合意目標を意識しつつ課題志向型アプローチを選択し,運動学習プロセスに沿った難易度設定により成功体験を重ねた事で患者と療法士の信頼関係の構築や主体的な練習増加に繋がった.リハビリテーションの目標は対象者の価値観に基づく意思等を尊重することが重要であるといわれている.その中で意思決定を行い,患者と療法士が一致した考えのもと練習を進めていった事が麻痺側上肢の使用頻度向上と使いやすさへと繋がった一要因と考える.
課題志向型アプローチは上肢機能だけでなく生活における使用頻度に改善を認める報告がある.今回,麻痺側上肢で何を獲得したいかの合意目標をたて,課題志向型アプローチとtransfer packageを取り入れたことで生活場面における麻痺側上肢の使用頻度・使いやすさが向上した症例を経験したので報告する.
【初期評価】
56歳男性・左脳梗塞発症,既往歴なし.発症から30日後に当院回復期病棟に入院となるも新型コロナウイルスに感染し,入院から30日後にリハビリテーション介入となる.利き手は右.Brunnstorom-recovery-stage(Brs)上肢V手指V,表在覚中等度鈍麻,深部覚軽度鈍麻,Fugl meyer assessment(FMA)51点,Moter Activity Log(MAL)でAmount of use (AOQ) 0.77,Quality of Movement(QOM)0.88,簡易上肢機能検査(STEF)右5点,左92点,握力右6.3kg,左30.2kg,疼痛なし.Functional Independence Measure(FIM)73点,Mini Mental state Examination-Japanese(MMSE-J)24点だった.「手が良くなりたい」という発言はあるが日常生活での使用頻度は少ない状態であった.非麻痺側上肢中心に日常生活を過ごしていた.
【方法】
MALの質問表のやり取りから,「スプーンが使えるようになりたい」「名前が書けるようになりたい」のdemandsがみられるようになり,合意目標とした.OTプログラムの目的として中枢部は安定性・空間保持を獲得,末梢部は物品の把持・操作獲得とした.肩・前腕・手指の筋力トレーニングを代償動作に注意し反復した.スプーンや鉛筆把持には背側筋の柔軟性を確保するため弾性包帯で持続的に伸張し,鍵握り3指指腹つまみの手形態を作りやすくし,太柄ラバーでフィット感を補った.鉛筆は6B使用し,鉛筆操作が成功するよう工夫した.段階的に難易度を調整しtransfer packageを取り入れた.スプーン操作は分回し運動を中心に反復した.ADLへも介入し修正点の評価と改善できた点をフィードバックしていった.
【結果】
Brs上肢V,手指VI,表在覚軽度鈍麻,深部覚軽度鈍麻,FMA58点,MALのAOQ2.77, QOM2.44,STEF右60点,左95点,握力右12.6kg,左30.2kg,疼痛なし.FIM122点, MMSE-J 27点だった.MALにおいてAOQ・QOMともに14項目中6項目に1点以上改善がみられた.合意目標であるスプーンやフォークを把持して食事をとる,の項目でもAOQ,QOMともに2点改善した.食事動作介入時は「白米は右手で全部すくってるよ」とpositiveな発言もみられた.鉛筆操作においても2Bの鉛筆で自助具を使用せずサインが書けるようになった.洗体・洗髪の両手動作も増え,「ごみ袋も結べたよ」と発症前の仕事の作業工程ができたことは自信へと繋がった.その他に「自主練習として2時間はやりたいな」と主体性の向上へと繋がった.
【考察】
合意目標を設定する上で,MALの質問表のやり取りの中で主体的に考えた結果,「日常生活でも麻痺側上肢を使いたい」という気持ちへと変化した.練習では合意目標を意識しつつ課題志向型アプローチを選択し,運動学習プロセスに沿った難易度設定により成功体験を重ねた事で患者と療法士の信頼関係の構築や主体的な練習増加に繋がった.リハビリテーションの目標は対象者の価値観に基づく意思等を尊重することが重要であるといわれている.その中で意思決定を行い,患者と療法士が一致した考えのもと練習を進めていった事が麻痺側上肢の使用頻度向上と使いやすさへと繋がった一要因と考える.