第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-1] ポスター:脳血管疾患等 1

2023年11月10日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-1-18] 簡易上肢機能検査(STEF)の評価特性検討に関するスコーピングレビュー

吉原 翔太1,3, 天野 暁2 (1.北里大学大学院医療系研究科, 2.北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科作業療法学専攻, 3.国立国際医療研究センター臨床研究センター 疫学・予防研究部)

【背景】
近年では, 多くの評価手段特性研究者の合意に基づいたCOnsensus-based Standards for the selection of health Measurement Instruments (以下:COSMIN)の登場などにより, 評価手段に対して臨床利用のために検討するべき多種多様な評価特性が知られるようになりつつある. その中で, すでに臨床現場で広く使われている評価手段であっても, 十分な検討がなされていないということが明らかになってきた. そこで, 本邦の作業療法領域において多用されるSTEFにおいても, どのような評価特性が検討されているかを調査したところ, そのような情報を系統的にレビューした報告を, 国内外にて確認することができなかった.
【目的】
本研究は, STEFに対する評価特性検討報告を対象に, COSMINの視点をもとにしたスコーピングレビューを実施し, STEFにおいて十分な評価特性検討がなされているかどうかを明らかにすることを目的とした.
【方法】
本研究の研究デザインは, スコーピングレビューとし, Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analyses extension for Scoping Reviews (PRISMA-ScR)に従い実施した. 使用した文献データベースは, 国際的な報告を抽出する対象として PubMed, CINAHL, Web of scienceを選択し, 国内における報告においては医学中央雑誌(医中誌Web)を用いた. また, 非定型文献(grey literature)の検索のためには Google Scholar を採用した. 上記のデータベースでの文献検索は2022年3月15日に実施された. 使用された検索式は作業療法士免許を取得済の2名の合意の基に作成され, 対象文献の固定までは, 以下の手順で実施された:(1)検索用語を用いたデータベースでの文献検索,(2)文献のスクリーニング作業, (3)適格性確認作業,(4)適格性が確認された論文における必要情報の抽出作業.
【結果】
1131本の論文がデータベースから特定され, 最終的に31本の報告が対象となった. 評価特性視点において,対象論文のうち,30本が妥当性でその中でも内容的妥当性が0本,基準連関妥当性7本,併存的妥当性が22本,仮説検定妥当性1本であった. 信頼性においては, 内的一貫性2本, 検者間信頼性0本,検者内信頼性4本,測定誤差0本となった. また, 反応性検討の報告が3本, 1本の解釈可能性(カットオフ)を確認された. 疾患と評価特性視点で整理した結果, 検者間信頼性, 測定誤差, MCIDの情報など, 未検討の評価特性が明らかになった.
【考察】
今回のレビュー研究の結果, さらなるSTEFの評価特性検討研究の必要性が明らかになった. 今後は, COSMIN視点からのより丁寧な評価特性への理解と疾患特異的な視点を持った臨床研究の実施が望まれる.