[PA-1-4] 急性期脳卒中患者の合意目標設定にPaper版ADOCを用いて満足度を調査した一例
【はじめに】急性期脳卒中患者は,発症による身体変容と疾患への知識不足から医療者との目標設定に難渋する(Rosewilliam et al,2016).初回作業療法面接で,合意目標が形成される割合は40%であり,目標設定の可否には今後の希望や見通しの明確さ,FIMやMMSE得点が関連する(石川ら2021).発症早期から自宅退院が予測される場合は,目標設定にShared decision making(SDM)を用いることが好ましい(竹林2019).急性期から円滑な目標設定立案には道具を用いた手法が有効なため(Stacey et al,2014),Aid for Decision-making in Occupation Choice(ADOC)を導入し,SDMを主体とした作業療法介入は,合意目標達成に向けた患者満足度向上の糸口になるかもしれない.
【目的】急性期脳卒中患者にPaper版ADOCを用いて,SDMを主体とした合意目標の立案,達成への作業療法介入は,患者満足度が高まるか後方視的に検証する.本報告は患者へ口頭説明を行い,同意を得ている.
【事例紹介】70歳代女性.診断名:アテローム血栓性脳梗塞.現病歴:右手の脱力感や構音障害を認め,1病日目から作業療法を開始.神経学的所見:意識清明.Fugl Meyer Assessment(FMA):64/66点.Motor Activity Log(MAL)Amount of Use(AOU):3.9/5点.Quality of Movement(QOM):3.4/5点.Berg Balance Scale(BBS):41/56点(屋内自立).ADOC(重要度・緊急度・満足度)を用いた目標設定1:箸を用いた食事動作獲得(5・5・4/5点).目標設定2:新聞やリモコン操作獲得(4・4・4/5点).目標設定3:洗濯動作獲得(4・3・1/5点).目標設定4:買い物動作獲得(3・3・3/5点).目標設定5:友人とダンスグループへの参加(5・1・2/5点).
【方法】齋藤らの報告を参考に,Paper版ADOCを用いて事例と目標共有し,重要・緊急度マトリクスに達成順序を提示した.目標設定1,2,3の達成に向け,反復的な上肢機能練習や応用動作練習を実施し,適宜,難易度調整をした.目標設定4,5の達成に向け,担当理学療法士と協業し,立位作業や応用動作練習を実施した.介入期間中の作業療法は1日60分,週5回,3週間とし,主たる指標に患者満足度調査として,ADOC満足度スコア.副次的指標に麻痺側上肢の使用頻度の調査としてMAL,バランス機能評価としてBBSを退院までの各週で評価した.
【結果】ADOC満足度(1週→2週→3週):目標設定1(4→5→5/5点).目標設定2(4→5→5/5点).目標設定3(1→3→5/5点).目標設定4(3→3→4/5点).目標設定5(2→3→4/5点).MAL(1週→2週→3週):AOU(3.9→3.8→4.8/5点).QOM(3.4→3.5→4.5/5点).BBS(1週→2週→3週):(41→45→51/56点,屋外自立).
【考察】自宅退院が予測された急性期脳卒中患者にPaper版ADOCを用いて,SDMを主体とした目標立案,介入を実践した結果,合意目標1,2,3においてPaper版ADOCの満足度向上と,MALのAOU,QOMともに改善を認めた.合意目標1,2,3の満足度向上として,重要度・緊急度マトリクスに基づき,早期から着手し,練習量が確保できた結果,本事例のMALがMCIDであるAOU:0.5点(Van der Lee 1999),QOM:1.0-1.2点(Lang et al,2008)を超える上昇を認め,満足度向上に奏功したと考える.一方で,目標設定4,5の満足度改善が乏しい要因として,作業療法プログラムが心身機能に重点をおいた介入となっていたことが懸念される.これは,入院中から,退院後の予定立案といった実践課題の不足が,満足度向上に至らなかったと考える.今後は,Paper版ADOCで聴取した応用的目標の満足度向上に向け,早期から心身機能と活動の双方を高める介入方針を検討していく.
【目的】急性期脳卒中患者にPaper版ADOCを用いて,SDMを主体とした合意目標の立案,達成への作業療法介入は,患者満足度が高まるか後方視的に検証する.本報告は患者へ口頭説明を行い,同意を得ている.
【事例紹介】70歳代女性.診断名:アテローム血栓性脳梗塞.現病歴:右手の脱力感や構音障害を認め,1病日目から作業療法を開始.神経学的所見:意識清明.Fugl Meyer Assessment(FMA):64/66点.Motor Activity Log(MAL)Amount of Use(AOU):3.9/5点.Quality of Movement(QOM):3.4/5点.Berg Balance Scale(BBS):41/56点(屋内自立).ADOC(重要度・緊急度・満足度)を用いた目標設定1:箸を用いた食事動作獲得(5・5・4/5点).目標設定2:新聞やリモコン操作獲得(4・4・4/5点).目標設定3:洗濯動作獲得(4・3・1/5点).目標設定4:買い物動作獲得(3・3・3/5点).目標設定5:友人とダンスグループへの参加(5・1・2/5点).
【方法】齋藤らの報告を参考に,Paper版ADOCを用いて事例と目標共有し,重要・緊急度マトリクスに達成順序を提示した.目標設定1,2,3の達成に向け,反復的な上肢機能練習や応用動作練習を実施し,適宜,難易度調整をした.目標設定4,5の達成に向け,担当理学療法士と協業し,立位作業や応用動作練習を実施した.介入期間中の作業療法は1日60分,週5回,3週間とし,主たる指標に患者満足度調査として,ADOC満足度スコア.副次的指標に麻痺側上肢の使用頻度の調査としてMAL,バランス機能評価としてBBSを退院までの各週で評価した.
【結果】ADOC満足度(1週→2週→3週):目標設定1(4→5→5/5点).目標設定2(4→5→5/5点).目標設定3(1→3→5/5点).目標設定4(3→3→4/5点).目標設定5(2→3→4/5点).MAL(1週→2週→3週):AOU(3.9→3.8→4.8/5点).QOM(3.4→3.5→4.5/5点).BBS(1週→2週→3週):(41→45→51/56点,屋外自立).
【考察】自宅退院が予測された急性期脳卒中患者にPaper版ADOCを用いて,SDMを主体とした目標立案,介入を実践した結果,合意目標1,2,3においてPaper版ADOCの満足度向上と,MALのAOU,QOMともに改善を認めた.合意目標1,2,3の満足度向上として,重要度・緊急度マトリクスに基づき,早期から着手し,練習量が確保できた結果,本事例のMALがMCIDであるAOU:0.5点(Van der Lee 1999),QOM:1.0-1.2点(Lang et al,2008)を超える上昇を認め,満足度向上に奏功したと考える.一方で,目標設定4,5の満足度改善が乏しい要因として,作業療法プログラムが心身機能に重点をおいた介入となっていたことが懸念される.これは,入院中から,退院後の予定立案といった実践課題の不足が,満足度向上に至らなかったと考える.今後は,Paper版ADOCで聴取した応用的目標の満足度向上に向け,早期から心身機能と活動の双方を高める介入方針を検討していく.