[PA-1-9] 重度感覚障害,感覚性失調を呈した事例の食事動作獲得に向けた修正CI療法実践の工夫
【はじめに】脳卒中後の上肢麻痺に加え感覚障害を伴うとADLへ影響を及ぼし手の不使用に繋がりやすい.上肢麻痺に対しエビデンスが確立されたアプローチ法にCI 療法があり,実施時間を短縮した修正CI療法も有効な報告が散見される.しかし,本邦における報告では重度感覚障害例の麻痺手使用に至るプロセスを詳細に述べた報告は少ない.今回,運動麻痺に加え重度感覚障害,感覚性失調を呈した事例に対し亜急性期から修正CI療法を実施し,感覚障害を考慮した自助具の工夫やSplintの活用を試みた.その結果,麻痺手の使用頻度の増加に加え,目標であった食事動作獲得に繋がったため以下に報告する.尚,発表に際し本人に文書にて同意を得た.
【事例紹介】60代後半の女性.利き手は右.診断名は左視床出血.病前生活は自立.X年Y月に発症し当院入院.1病日目に作業療法開始.24病日目に回復期へ転棟.
【作業療法評価】1~5病日に実施.FMA-UE:42点.母指探しtest:Ⅲ度.SWT:手指・手掌脱失.温冷痛覚:脱失.FMA-S:0点.位置覚-示指2/10.重量覚や粗滑弁別,素材識別はわずかに保たれていた.SARAU-E:8/12点.MAL:AOU0.07点,QOM0.07点.STEF:0点.MMSE30点.移動は車椅子介助.FIM:運動/認知39点/35点.
【方法・経過】第1期:修正CI療法へ移行した時期(2病日-25病日)
2病日目から課題指向型訓練(TOT)を開始.自力での物品到達・把持は困難であり介助下から開始した.20病日目に介助なしの課題遂行ができたため,22病日目よりTransfer package(TP)を加え修正CI療法を実施した.訓練はOT監視下のTOTとTPを40分,自主訓練40分を週6回,16週実施し,能動的知覚再学習20分,ADL訓練20分も併せて実施した.主目標はADOC-Hを用いて食事動作獲得とした.遂行度,満足度ともに1/5であった.また,麻痺手の使用項目を挙げ,週間目標動作チェックリスト(庵本2018)を作成し日々の確認を行った.
第2期:スプーンでの食事を目指した時期(28病日-81病日)
発症4週目のFMA-UEは59点,AOU1.5点,QOM1点と右手の使用は増加したが,食事動作は困難であった.掬う動作では母指対立困難と失調症状が影響していたため,前腕介助と訓練用コップに手指固定バンドを装着し掬う・運搬の課題練習を行った.太柄スプーンにも手指固定バンドを取り付け,同様に練習を進めた.55病日目にはスプーンを用いて食事を行うことができた.液体状の物は溢れてしまうため,掬う練習を継続し,カレーやスープを右手で食べることも可能となった.
第3期:お箸を用いた食事を獲得した時期(83病日~135病日)
バネ箸の箸先に滑り止めを付け訓練を開始した.物品把持はできてきたが,滑り止めを外すと母指が内転し示指が箸から外れクロスするため持続しなかった.そこで,117病日目に母指対立Splint,箸の上側に示指固定バンドを装着し練習を継続した.134病日目には箸を用いた食事が可能となり遂行度,満足度ともに4/5と向上した.
【結果】修正CI療法開始後16週目でFMA-UE:61点.母指探しtest:Ⅰ度.SWT:手指・手掌脱失.温冷痛覚:脱失.FMA-S:6点.位置覚-示指3/10.重量覚や粗滑弁別,素材・形の識別は改善した.SARAU-E:4/12点.MAL:AOU4.4点,QOM2.6点.STEF:21点.移動は歩行器自立.FIM:運動項目75点.181病日目に自宅退院.退院後も箸の使用は継続できていた.
【考察】FMA,MALはMCIDを超える改善を認め,今回の介入が麻痺手に良好な結果を与えたことが考えられた.感覚障害は残存したが,継続した箸の使用に繋がったため,重度感覚障害に対する修正CI療法に加え,使用物品の工夫や自助具,Splintの活用がより効果的な麻痺手の使用に繋がることが示唆された.
【事例紹介】60代後半の女性.利き手は右.診断名は左視床出血.病前生活は自立.X年Y月に発症し当院入院.1病日目に作業療法開始.24病日目に回復期へ転棟.
【作業療法評価】1~5病日に実施.FMA-UE:42点.母指探しtest:Ⅲ度.SWT:手指・手掌脱失.温冷痛覚:脱失.FMA-S:0点.位置覚-示指2/10.重量覚や粗滑弁別,素材識別はわずかに保たれていた.SARAU-E:8/12点.MAL:AOU0.07点,QOM0.07点.STEF:0点.MMSE30点.移動は車椅子介助.FIM:運動/認知39点/35点.
【方法・経過】第1期:修正CI療法へ移行した時期(2病日-25病日)
2病日目から課題指向型訓練(TOT)を開始.自力での物品到達・把持は困難であり介助下から開始した.20病日目に介助なしの課題遂行ができたため,22病日目よりTransfer package(TP)を加え修正CI療法を実施した.訓練はOT監視下のTOTとTPを40分,自主訓練40分を週6回,16週実施し,能動的知覚再学習20分,ADL訓練20分も併せて実施した.主目標はADOC-Hを用いて食事動作獲得とした.遂行度,満足度ともに1/5であった.また,麻痺手の使用項目を挙げ,週間目標動作チェックリスト(庵本2018)を作成し日々の確認を行った.
第2期:スプーンでの食事を目指した時期(28病日-81病日)
発症4週目のFMA-UEは59点,AOU1.5点,QOM1点と右手の使用は増加したが,食事動作は困難であった.掬う動作では母指対立困難と失調症状が影響していたため,前腕介助と訓練用コップに手指固定バンドを装着し掬う・運搬の課題練習を行った.太柄スプーンにも手指固定バンドを取り付け,同様に練習を進めた.55病日目にはスプーンを用いて食事を行うことができた.液体状の物は溢れてしまうため,掬う練習を継続し,カレーやスープを右手で食べることも可能となった.
第3期:お箸を用いた食事を獲得した時期(83病日~135病日)
バネ箸の箸先に滑り止めを付け訓練を開始した.物品把持はできてきたが,滑り止めを外すと母指が内転し示指が箸から外れクロスするため持続しなかった.そこで,117病日目に母指対立Splint,箸の上側に示指固定バンドを装着し練習を継続した.134病日目には箸を用いた食事が可能となり遂行度,満足度ともに4/5と向上した.
【結果】修正CI療法開始後16週目でFMA-UE:61点.母指探しtest:Ⅰ度.SWT:手指・手掌脱失.温冷痛覚:脱失.FMA-S:6点.位置覚-示指3/10.重量覚や粗滑弁別,素材・形の識別は改善した.SARAU-E:4/12点.MAL:AOU4.4点,QOM2.6点.STEF:21点.移動は歩行器自立.FIM:運動項目75点.181病日目に自宅退院.退院後も箸の使用は継続できていた.
【考察】FMA,MALはMCIDを超える改善を認め,今回の介入が麻痺手に良好な結果を与えたことが考えられた.感覚障害は残存したが,継続した箸の使用に繋がったため,重度感覚障害に対する修正CI療法に加え,使用物品の工夫や自助具,Splintの活用がより効果的な麻痺手の使用に繋がることが示唆された.