[PA-10-10] 当院脳卒中患者の院内車椅子駆動自立に影響を与える要因の検討
【はじめに】脳卒中患者の車椅子駆動に影響を与える要因を検討している研究は散見されるが,主に身体機能に関する要因について述べられており,高次脳機能の影響は明らかにされていない.大田尾らの研究では,脳卒中片麻痺患者における車椅子駆動の可否に立位バランスと腹筋力の影響を述べているが,高次脳機能の評価は行っておらず今後の課題として挙げている.
【目的】車椅子駆動に影響する身体,高次脳機能について検討を行い,脳卒中患者の車椅子駆動支援について検討すること.
【方法】対象は,当院の回復期リハビリテーション病棟を2022年5月17日~2023年2月13日に退院した入院患者で,入院時から退院時まで車椅子を使用または併用していた方で,既往に脳卒中の診断がない片麻痺患者とした.カルテ情報を後方視的に分析し,車椅子自走自立群と車椅子自走介助群の2群に分けた.調査項目は,対象者の概要として年齢,性別,疾患名, Brunnstrom stage(以下,Br.stage),Functional Independence Measure(以下,FIM),立位・座位バランスとしてBerg Balance Scale(以下,BBS),認知機能としてMini Mental State Examination(以下,MMSE),高次脳機能としてTrail Making Test日本版(以下,TMT-J),BIT行動性無視検査日本版(以下,BIT)を統計学的手法にて解析した.解析にはSPSS.Ver29を使用し,自走の可否と各項の比較をMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした.本研究は東京都リハビリテーション病院臨床研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号31).
【結果】対象は8名で,入院時車椅子自走群(以下,自走群)3名,車椅子自走介助群(以下,介助群)5名であった.年齢は自走群(A,B,C)が34歳,48歳,63歳で,介助群(D,E,F,G,H)が59歳,62歳,73歳,83歳が2名であった.性別は自走群が男性3名,介助群が男性4名,女性1名で,疾患は自走群が脳出血1名,脳梗塞2名,介助群が脳出血2名,脳梗塞3名であった.Br.stage(上肢-手指-下肢)はA:Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ,B:Ⅴ-Ⅴ-Ⅱ,C:Ⅲ-Ⅱ-Ⅲ,D:Ⅰ-Ⅰ-Ⅱ,E:Ⅳ-Ⅳ-Ⅳ,F:Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,G:Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,H:Ⅳ-Ⅲ-Ⅴであった.FIM運動項目は自走群が55点,31点,39点,介助群が26点,30点,28点,42点,24点で,認知項目は自走群21点,20点,20点,介助群27点,29点,21点,25点,29点であった.BBSは自走群が13点,11点,11点,介助群が4点,11点,40点,10点,17点であった.MMSEは介助群で1名カットオフ値を下回った.TMT-J Part Aは自走群が64秒,37秒,73秒,介助群が126秒,121秒,128秒,101秒,193秒であった.BITは介助群で1名カットオフ値を下回った.自走群と介助群との比較では,TMT-J Part Aで有意な差があった(p=0.03).
【考察】今回の結果から,車椅子自走の可否に注意障害の影響があることが示唆されたと考える.車椅子駆動の支援について,身体機能面だけでなく,高次脳機能面の評価や介入も行うことで,入院時の早期な移動能力の獲得に繋げることができると考える.
【限界】本研究では,年齢によるTMT-Jの成績に及ぼす影響を考慮していない.今後,対象者数を増やし,年齢による影響も考慮して検討したいと考える.
【目的】車椅子駆動に影響する身体,高次脳機能について検討を行い,脳卒中患者の車椅子駆動支援について検討すること.
【方法】対象は,当院の回復期リハビリテーション病棟を2022年5月17日~2023年2月13日に退院した入院患者で,入院時から退院時まで車椅子を使用または併用していた方で,既往に脳卒中の診断がない片麻痺患者とした.カルテ情報を後方視的に分析し,車椅子自走自立群と車椅子自走介助群の2群に分けた.調査項目は,対象者の概要として年齢,性別,疾患名, Brunnstrom stage(以下,Br.stage),Functional Independence Measure(以下,FIM),立位・座位バランスとしてBerg Balance Scale(以下,BBS),認知機能としてMini Mental State Examination(以下,MMSE),高次脳機能としてTrail Making Test日本版(以下,TMT-J),BIT行動性無視検査日本版(以下,BIT)を統計学的手法にて解析した.解析にはSPSS.Ver29を使用し,自走の可否と各項の比較をMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした.本研究は東京都リハビリテーション病院臨床研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号31).
【結果】対象は8名で,入院時車椅子自走群(以下,自走群)3名,車椅子自走介助群(以下,介助群)5名であった.年齢は自走群(A,B,C)が34歳,48歳,63歳で,介助群(D,E,F,G,H)が59歳,62歳,73歳,83歳が2名であった.性別は自走群が男性3名,介助群が男性4名,女性1名で,疾患は自走群が脳出血1名,脳梗塞2名,介助群が脳出血2名,脳梗塞3名であった.Br.stage(上肢-手指-下肢)はA:Ⅱ-Ⅱ-Ⅲ,B:Ⅴ-Ⅴ-Ⅱ,C:Ⅲ-Ⅱ-Ⅲ,D:Ⅰ-Ⅰ-Ⅱ,E:Ⅳ-Ⅳ-Ⅳ,F:Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,G:Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,H:Ⅳ-Ⅲ-Ⅴであった.FIM運動項目は自走群が55点,31点,39点,介助群が26点,30点,28点,42点,24点で,認知項目は自走群21点,20点,20点,介助群27点,29点,21点,25点,29点であった.BBSは自走群が13点,11点,11点,介助群が4点,11点,40点,10点,17点であった.MMSEは介助群で1名カットオフ値を下回った.TMT-J Part Aは自走群が64秒,37秒,73秒,介助群が126秒,121秒,128秒,101秒,193秒であった.BITは介助群で1名カットオフ値を下回った.自走群と介助群との比較では,TMT-J Part Aで有意な差があった(p=0.03).
【考察】今回の結果から,車椅子自走の可否に注意障害の影響があることが示唆されたと考える.車椅子駆動の支援について,身体機能面だけでなく,高次脳機能面の評価や介入も行うことで,入院時の早期な移動能力の獲得に繋げることができると考える.
【限界】本研究では,年齢によるTMT-Jの成績に及ぼす影響を考慮していない.今後,対象者数を増やし,年齢による影響も考慮して検討したいと考える.