第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-10] ポスター:脳血管疾患等 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PA-10-16] 急性期脳卒中後の上肢麻痺に対してTransfer packageを中心とした週1回の外来作業療法の取り組み

小松 真直1, 唐渡 弘起2, 丹羽 陽児2 (1.医療法人平成博愛会 世田谷記念病院リハビリテーション部, 2.社会医療法人ささき会 藍の都脳神経外科病院リハビリテーション部)

【序論】脳卒中片麻痺患者において実用手を獲得するのは,リハビリテーション病院入院患者の約30%〜40%と言われている(藤原2007).脳卒中後の麻痺側上肢の運動機能や麻痺手の使用行動の改善を目的としたアプローチのひとつにConstraint-induced movement therapy(以下:CI療法)があり,脳卒中ガイドラインでグレードAと推奨されている.急性期から亜急性期にCI療法を行う際は,1日2時間以下の練習量で,かつ非麻痺手の拘束時間を1日5時間以下に抑えることで一定の効果がある可能性が示されている(Liu XH2017).今回,急性期脳卒中の退院後に週1回(約40分)の外来作業療法でCI療法と週1回の反復経頭蓋磁気刺激療法(以下:外来rTMS)を実施した.運動麻痺の回復指標としてFugl-Meyer Assessment(以下:FMA)と日常生活における麻痺手の使用頻度を評価するMotor Activity Log(以下:MAL)を用いた.運動麻痺の改善と使用頻度の向上が得られたので報告する.なお,本発表については,倫理審査委員会の承認を得て対象者に文章と口頭で説明を行い,同意を得ている.
【目的】急性期脳卒中後の入院中に日常生活における麻痺手の積極的な使用を促す行動戦略(以下:Transfer package )を作成し,退院後の外来作業療法でモニタリングとフィードバックを繰り返し,麻痺手の集中的な使用を促すことと,課題指向型練習を実施して運動麻痺の改善と使用頻度の向上に繋げることを目的とした.
【方法】外来作業療法で,CI療法の主要コンセプトである反復的課題指向型練習,Transfer package,麻痺手の集中的使用(Morris2006)に準じて行なった.外来作業療法の時間の中で全てを実施する事は難しく,まず,対象者の1日のスケジュールを把握し,麻痺手に関わる日記と自己評価,自宅での麻痺手の使用場面の割り当て,自主練習の指導を実施した.
【症例】右アテローム血栓性脳梗塞と診断され,左上肢下肢に麻痺を呈した50歳代の男性で,利き手は右手であった.当院急性期病棟に約5日間入院後,週1回(約40分)の外来作業療法と外来rTMSを開始した.退院時の評価で機能面は,FMA上肢30/66点,MAL使用頻度18/30点,動かしやすさ12/30点で,左手の日常生活における使用頻度は非常に少ない状態で利き手である右手を主に使われていた.主訴は「左手にもっと力が入るようになりたい.」であった.
【結果】約4ヵ月の外来作業療法の最終評価で機能面は,FMA上肢61/66点,MAL使用頻度27/30点,動かしやすさ24/30点で,左上肢の運動麻痺が改善し,日常生活における使用頻度は向上した.【考察】脳卒中発症後に運動麻痺が生じた上肢麻痺に対して,外来作業療法でモニタリングとフィードバックを繰り返し,麻痺手の集中的な使用を促すことと,課題指向型練習を実施して運動麻痺の改善と使用頻度の向上に繋げることを目的とした.退院後約1ヶ月を経過した時に,自発的に麻痺手の新規活動への参加や工夫がされており,主観的なセルフモニタリングが可能となってきていた.モニタリングスキルの向上が対象者自身の障害に対する認知を修正する能力となり,実生活における麻痺手の使用頻度が向上したと考える.
 現在,医療技術の進歩と医療費適正化政策という国の施策により,入院期間の短縮が進められている.その中で,対象者に応じた適切なプログラムの選択や実施といったことはリハビリテーション業界の課題と考えられる.その中で,外来作業療法という医療資源を用いることで低頻度かつ長期的に機能的な側面を捉えることと活動・参加場面に焦点を当て取り組むことによって一定の効果が得られる可能性があるのではないかと考える.