[PA-11-3] 当院急性期脳卒中患者におけるNIHSSと転帰先の関連性
【序論】
近年,急性期病棟においてより一層の在院日数の短縮化が進み,早期から予後予測に基づく適切な転帰先の検討が求められている.転帰先の予後予測において,機能障害を総合的に評価することが可能なNational Institutes of Health Stroke Scale(以下,NIHSS)が頻繁に用いられている.しかしながら,NIHSSを重症度別に転帰先を検討した研究は必ずしも十分とはいえない.
【目的】
急性期脳卒中患者のNIHSSにおける重症度が転帰先に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
研究デザインは,後ろ向きコホート研究とした.対象者は,2020年4月から2022年4月の期間に当院急性期病棟へ入院した脳出血,脳梗塞,一過性脳虚血発作(Transit Ischemic attack:TIA)患者とした.除外基準は,死亡例,状態悪化または再発例,くも膜下出血例,欠損値のある者とした.主要評価項目は,転帰先(自宅群,非自宅群)とした.尚,非自宅群は,リハビリ目的の病院又は診療科に転科・介護老人保健施設・老人ホーム等と定義づけした.NIHSSは,発症7日目のデータを用いた.その他,基本属性,医学的情報,社会的情報,認知機能,身体機能について診療録又は日本脳神経外科学会データベース研究事業(Japan Neurosurgical Database:JND)一次データベースより収集した.変数は,NIHSSより軽度(0~5点),中等度(6~14点),重度(15~42点)の3群に重症度分類をした.統計解析は,3群間の比較としてKruskal Wallis検定を行った.その後,多変量解析として従属変数を転帰先(自宅群,非自宅群),要因を発症7日目のNIHSS,共変量に単変量解析で有意差のあった変数を投入した二項ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った.NIHSSは重症度別にダミー変数化をして投入した.統計解析ソフトは,SPSS version 25(IBM SPSS)を用い,有意水準は5%未満とした.倫理的配慮として,入院時に臨床研究等についての包括同意をとる形とした.
【結果】
解析対象者は,除外例を除いた215例.対象者の属性は,病型が脳梗塞162例,脳出血46例,TIA7例.年齢は,中央値[四分位範囲]で79.33[72.85‐87.33] 歳.性別は女性103例,男性112例.介護保険を有する者は73例.在院日数は24.00[14.00‐33.00]日.入院前生活場所は自宅199例,非自宅群16例.同居者は有138例,無77名.退院先は,自宅群105名,非自宅群109名(回リハ83名・施設9名・その他17名)であった.3群間の比較では,年齢(p<0.005),BMI・MMSE・FIM・JCS・Br.stage(p<0.001)に有意差を認めた.次に,NIHSSが転帰先に及ぼす影響を二項ロジスティック回帰分析で検討した結果,NIHSS重度と比較したオッズ比は,軽度オッズ比9.228(95%信頼区間:1.797‐47.395,p<0.008)であった.
【考察】
今回,当院急性期脳卒中患者において発症7日目のNIHSS軽症(0~5点)では自宅退院の転帰予測に大きく関連する事が示唆され,先行研究同様に急性期脳卒中患者にNIHSSを用いた転帰予測は可能であると考える.早期より自宅退院を転帰予測する事により,急性期から自宅退院を想定した生活動作訓練や生活管理指導・環境調整等が必要となり急性期脳卒中患者への作業療法が果たす役割が大きいと考えられる.当院では経時的な評価による予後予測を踏まえ,早期より転帰先に沿った多角的な視点での作業療法導入が課題である.
近年,急性期病棟においてより一層の在院日数の短縮化が進み,早期から予後予測に基づく適切な転帰先の検討が求められている.転帰先の予後予測において,機能障害を総合的に評価することが可能なNational Institutes of Health Stroke Scale(以下,NIHSS)が頻繁に用いられている.しかしながら,NIHSSを重症度別に転帰先を検討した研究は必ずしも十分とはいえない.
【目的】
急性期脳卒中患者のNIHSSにおける重症度が転帰先に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
研究デザインは,後ろ向きコホート研究とした.対象者は,2020年4月から2022年4月の期間に当院急性期病棟へ入院した脳出血,脳梗塞,一過性脳虚血発作(Transit Ischemic attack:TIA)患者とした.除外基準は,死亡例,状態悪化または再発例,くも膜下出血例,欠損値のある者とした.主要評価項目は,転帰先(自宅群,非自宅群)とした.尚,非自宅群は,リハビリ目的の病院又は診療科に転科・介護老人保健施設・老人ホーム等と定義づけした.NIHSSは,発症7日目のデータを用いた.その他,基本属性,医学的情報,社会的情報,認知機能,身体機能について診療録又は日本脳神経外科学会データベース研究事業(Japan Neurosurgical Database:JND)一次データベースより収集した.変数は,NIHSSより軽度(0~5点),中等度(6~14点),重度(15~42点)の3群に重症度分類をした.統計解析は,3群間の比較としてKruskal Wallis検定を行った.その後,多変量解析として従属変数を転帰先(自宅群,非自宅群),要因を発症7日目のNIHSS,共変量に単変量解析で有意差のあった変数を投入した二項ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った.NIHSSは重症度別にダミー変数化をして投入した.統計解析ソフトは,SPSS version 25(IBM SPSS)を用い,有意水準は5%未満とした.倫理的配慮として,入院時に臨床研究等についての包括同意をとる形とした.
【結果】
解析対象者は,除外例を除いた215例.対象者の属性は,病型が脳梗塞162例,脳出血46例,TIA7例.年齢は,中央値[四分位範囲]で79.33[72.85‐87.33] 歳.性別は女性103例,男性112例.介護保険を有する者は73例.在院日数は24.00[14.00‐33.00]日.入院前生活場所は自宅199例,非自宅群16例.同居者は有138例,無77名.退院先は,自宅群105名,非自宅群109名(回リハ83名・施設9名・その他17名)であった.3群間の比較では,年齢(p<0.005),BMI・MMSE・FIM・JCS・Br.stage(p<0.001)に有意差を認めた.次に,NIHSSが転帰先に及ぼす影響を二項ロジスティック回帰分析で検討した結果,NIHSS重度と比較したオッズ比は,軽度オッズ比9.228(95%信頼区間:1.797‐47.395,p<0.008)であった.
【考察】
今回,当院急性期脳卒中患者において発症7日目のNIHSS軽症(0~5点)では自宅退院の転帰予測に大きく関連する事が示唆され,先行研究同様に急性期脳卒中患者にNIHSSを用いた転帰予測は可能であると考える.早期より自宅退院を転帰予測する事により,急性期から自宅退院を想定した生活動作訓練や生活管理指導・環境調整等が必要となり急性期脳卒中患者への作業療法が果たす役割が大きいと考えられる.当院では経時的な評価による予後予測を踏まえ,早期より転帰先に沿った多角的な視点での作業療法導入が課題である.