第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-11] ポスター:脳血管疾患等 11

2023年11月11日(土) 15:10 〜 16:10 ポスター会場 (展示棟)

[PA-11-5] Berg balance scale項目による回復期リハビリテーション病棟脳卒中患者の入浴自立の予測

木皿 悠太1, 藤田 貴昭2, 栗田 恵1, 笠原 龍一1, 山本 優一1 (1.北福島医療センターリハビリテーション科, 2.福島県医科大学保健科学部)

【序論/目的】
 脳卒中患者において入浴は自立の最も難しいADLの一つである.回復期リハビリテーション病棟の脳卒中患者が退院までに入浴を自立できるか否かを入院時から予測できることは,早期から社会的資源の検討や家族指導の実施を可能とする有益な情報となりうる.演者らはこれまでに,同患者の入浴自立可否を予測するBerg balance scale(BBS)と年齢を用いた決定木モデルを作成し報告してきた(木皿,第54回日本作業療法学会).一方,BBSは14項目の動作テストからなる検査で実施に15~20分程度の時間を要するため,予測に用いる指標としては簡便とは言い難い.予測が簡便に行えることは臨床での実用性に深く関わる重要なポイントである.そのなかで演者らは脳卒中患者の更衣に関して,BBSの一部の項目を用いることで,BBS合計点と比較しても遜色のない精度で自立可否の鑑別が可能であることが報告している(Fujita, 2016).そのため入浴に関してもBBSの一部の項目で自立可否を一定の精度で予測できる可能性がある.本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟脳卒中患者における入浴自立可否の予測能の最も高いBBS項目を調べることである.
【方法】
 本研究は後方視的観察研究である.対象は回復期リハビリテーション病棟を入退院した初発脳卒中患者で,入院時に入浴(シャワー浴を含む)が非自立であった183名とした.なお研究に先立ち,所属機関の倫理審査委員会の承認を得た.
 対象者を退院時に院内で入浴(シャワー浴を含む)の自立した者と自立しなかった者の2群に分類し,BBSの14項目のそれぞれの得点についてReceiver Operating Characteristic (ROC)解析を行った.そしてBBS 14項目のなかで,鑑別能を示すROC曲線下面積(AUC)が最も高い項目を特定し,その項目についてYouden Indexを指標としてカットオフ値およびその感度と特異度を算出した.
【結果】
 退院時に入浴が自立した者は48名,非自立は135名であった.AUCは「前方リーチ」と「後ろを振り向く」が0.84と最も高く,自立のカットオフ値はそれぞれ3点(感度87.5%,特異度74.1%)と3点(感度79.2%,特異度82.2%)であった.なおBBS合計点のAUCは0.83,カットオフ値は35点(感度79.2%,特異度83.7%)であった.
【考察】
 本研究成果で特筆すべきは,回復期リハビリテーション病棟の脳卒中患者の退院時の入浴自立予測に関して,BBSの「前方リーチ」と「後ろを振り向く」の項目がBBS合計点と同等の予測精度を有した点である.1つの動作テストで退院時の入浴可否が一定の精度で予測できることは臨床上非常に有用であり,この方法であればリハビリテーション技師だけでなくBBSに馴染みのない看護師等も簡単に利用が可能であると考えられる.