[PA-12-1] 下衣操作が困難な片麻痺患者に対してのトイレ動作アプローチ
【はじめに】
今回,トイレ動作における立位での下衣操作時にバランスを崩し,介助を要した片麻痺患者を担当した.そこで,段階的難易度設定による立位動作練習を行い,その効果について検討したので以下に報告する.尚本研究はヘルシンキ宣言に則り,当院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号R-4-5号).研究の趣旨を家族に十分説明し,同意を得た.
【症例紹介】
症例は89歳女性.発症前は夫,長男夫婦と4人暮らし,介護保険認定は要介護5で週6回デイサービスを利用.入院前ADLは食事,整容自立,排泄は下衣操作引き上げと便座への移乗に軽介助,入浴はデイサービスで入浴介助,自宅内での移動は四つ這い,もしくは伝い歩き軽介助での移動であった.令和X年Y月デイサービス利用中,呂律難があり当院救急搬送となる.検査結果より左被殻ラクナ梗塞による右片麻痺,構音障害発症し同日入院.22病日に回復期病棟転棟となる.介入前評価(55病日)は右側Brunnstrom recovery stage(以下,BRS)は上肢Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅳレベル,表在・深部感覚は正常,静的立位は左側支持物把持にて可能,動的立位は後方へバランスを崩し介助を要していた.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)は13/30点,Functional Independence Measure(以下,FIM)は50/126点でトイレ動作項目は3点,移乗項目では4点であった.
【介入方法】
介入方法を6段階に設定し,段階1は左側壁+縦手すりに寄りかかり下衣引き下げ,段階2は左側壁+縦手すりに寄りかかり下衣引き上げ,段階3は縦手すりに寄りかかり下衣引き下げ,段階4は縦手すりに寄りかかり下衣引き上げ,段階5は実際のトイレで下衣引き下げ,段階6は実際のトイレで下衣引き上げとした.段階1から開始し介助なしで行えるようになれば次の段階へ移行.課題に成功した場合は即時的にフィードバックを行った.
【結果】
56病日より介入し段階1通過に1日,段階2に3日,段階3に2日,段階4に2日,段階5に1日,段階6に1日と計10日の介入で達成した.介入後評価(66病日)は,右側BRS上肢Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅳレベル,動的立位は後方へバランスを崩すことなく動的立位が可能となった.FIMはトイレ動作項目が3点から4点,移乗項目では4点から5点の見守りへ改善し53/126点となった.
【考察】
今回,発症前から排泄動作の下衣引き上げと便座移乗に軽介助を認め,脳梗塞を発症し片麻痺となったためさらに介助が必要となった高齢の症例を担当した.その症例に対して,段階的難易度設定を用いることで10日の介入で下衣操作が可能となったことは適切な難易度設定と段階付け,適切なフィードバックを行うことで高齢で片麻痺患者であっても分かりやすい適切な指標を示すことができたと思われる.一度動作を学習することで,その動作に関連する立位動作においても改善し,段階的難易度設定に含まれない移乗動作にも影響を与えることができた.段階的難易度設定を用いることは,動作学習において有効な手段であると思われる.
今回,トイレ動作における立位での下衣操作時にバランスを崩し,介助を要した片麻痺患者を担当した.そこで,段階的難易度設定による立位動作練習を行い,その効果について検討したので以下に報告する.尚本研究はヘルシンキ宣言に則り,当院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号R-4-5号).研究の趣旨を家族に十分説明し,同意を得た.
【症例紹介】
症例は89歳女性.発症前は夫,長男夫婦と4人暮らし,介護保険認定は要介護5で週6回デイサービスを利用.入院前ADLは食事,整容自立,排泄は下衣操作引き上げと便座への移乗に軽介助,入浴はデイサービスで入浴介助,自宅内での移動は四つ這い,もしくは伝い歩き軽介助での移動であった.令和X年Y月デイサービス利用中,呂律難があり当院救急搬送となる.検査結果より左被殻ラクナ梗塞による右片麻痺,構音障害発症し同日入院.22病日に回復期病棟転棟となる.介入前評価(55病日)は右側Brunnstrom recovery stage(以下,BRS)は上肢Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅳレベル,表在・深部感覚は正常,静的立位は左側支持物把持にて可能,動的立位は後方へバランスを崩し介助を要していた.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)は13/30点,Functional Independence Measure(以下,FIM)は50/126点でトイレ動作項目は3点,移乗項目では4点であった.
【介入方法】
介入方法を6段階に設定し,段階1は左側壁+縦手すりに寄りかかり下衣引き下げ,段階2は左側壁+縦手すりに寄りかかり下衣引き上げ,段階3は縦手すりに寄りかかり下衣引き下げ,段階4は縦手すりに寄りかかり下衣引き上げ,段階5は実際のトイレで下衣引き下げ,段階6は実際のトイレで下衣引き上げとした.段階1から開始し介助なしで行えるようになれば次の段階へ移行.課題に成功した場合は即時的にフィードバックを行った.
【結果】
56病日より介入し段階1通過に1日,段階2に3日,段階3に2日,段階4に2日,段階5に1日,段階6に1日と計10日の介入で達成した.介入後評価(66病日)は,右側BRS上肢Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅳレベル,動的立位は後方へバランスを崩すことなく動的立位が可能となった.FIMはトイレ動作項目が3点から4点,移乗項目では4点から5点の見守りへ改善し53/126点となった.
【考察】
今回,発症前から排泄動作の下衣引き上げと便座移乗に軽介助を認め,脳梗塞を発症し片麻痺となったためさらに介助が必要となった高齢の症例を担当した.その症例に対して,段階的難易度設定を用いることで10日の介入で下衣操作が可能となったことは適切な難易度設定と段階付け,適切なフィードバックを行うことで高齢で片麻痺患者であっても分かりやすい適切な指標を示すことができたと思われる.一度動作を学習することで,その動作に関連する立位動作においても改善し,段階的難易度設定に含まれない移乗動作にも影響を与えることができた.段階的難易度設定を用いることは,動作学習において有効な手段であると思われる.