[PA-12-16] 多職種チームでのボツリヌス治療と集中的リハビリテーションの取り組み
【はじめに】慢性期における脳卒中後遺症である上下肢痙縮に対し,2017年4月よりボツリヌス療法(botulinum toxin therapy;以下BTX)をリハビリテーション科医師(以下リハ医),理学療法士(以下PT),作業療法士(以下OT)のBTXチームとして開始.2020年7月よりBTXの最適化に向けて集中的リハビリテーション(以下リハ)を開始している.2022年にリハ医が当院BTX後のリハの有効性について報告(山下智弘 2022).しかし,BTX後の集中リハにて生活行為の変化を認めているが,患者・家族と認識が一致しないことがある.今回,当院集中的リハの報告をもとに,生活行為でのOT介入の課題について考察したので報告する.本報告において対象者の許可は得ている.
【当院での治療方針】慢性期脳卒中患者において痙縮は生活の質を下げる最たる問題の 1 つであり,生活へさまざまな影響を及ぼす(勝谷ら2019).BTXチームは,生活行為の改善,在宅介護の負担軽減を基本方針とし,完全予約制・専門外来にて,3ヶ月毎・計4回の施注の必要性を徹底している.
【BTXチームでのOTの関わり】セラピストは,患者・介助者からの聴取に基づき阻害された機能に対して, OT・PTの評価:関節可動域,modified Ashworth Scale(以下MAS),10m歩行,Functional Reachテスト(以下FRT),Disability Assessment Scale(以下DAS)より痙縮による影響を総合的に分析する.OTはFRT,DAS,10m歩行より,能動的運動の変化を分析し,患者・介護者と確認している.施注対象とする痙縮筋は,①カンファレンス時,動作解析動画から歩行動作と上下肢痙縮の影響を分析,②対象筋治療後の機能改善を予測,③施注時,OT,PTで身体アライメントを調整し施注対象の可否を評価,④エコーにて施注対象筋の動き,エコー輝度(Heckmatt scaleと照合)を確認し筋選定に関わっている.
【BTX後の集中的リハ】集中的リハは,入院5日間,外来4回/月の2つの方法で実施し,痙縮に影響を受けている短縮筋の伸張,関節可動域制限の拡大,全身的な筋緊張コントロールにより能動的運動機能の改善を目指した.BTX後の集中リハは,移行した外来8名,入院8名を対象に,移行までの平均施注回数;外来7.5回,入院6.0回.移行後の平均施注回数;外来4回,入院4.6回実施.総投与量400単位にて集中リハ開始前後での肩,肘,手,手指,足関節でのMASの変化率についてWilcoxon符号順位和検定にて解析(有意水準p値<0.05)した結果,外来:手関節,手指.入院:手指に有意差を認めている.その他,FRT,DAS,10m歩行の変化と能動的運動機能との関連は不明である.
【考察】通常の訓練にボツリヌス療法を組み合わせるとさらに機能が向上するとの報告がある(蜂須賀ら 2016).当院の報告からもMASの変化から有効性を認めている.痙縮による自他動運動範囲の減少や姿勢・肢位の異常,関節の構造的な変化は,ADL やQOL に大きな影響を及ぼす(阿部ら2020).との報告からも,ADLに大きな影響を及ぼす上肢痙縮に対し,OTが施注対象筋の選定に関われたことで,能動的運動機能の改善に繋がったと考える.しかし,この能動的運動機能改善による生活行為の変化を患者・家族と共有するためには,FRT,DAS,10m歩行の評価結果との関連付けた説明が必要であると考える.
【課題】①生活行為の変化を示す改善度,②生活行為に向けてのOTプログラム検証,このことよりBTX後の患者・介護者の満足度をより向上させ,慢性期においても生活行為の改善に繋げていく必要がある.そのためにOTは,患者のADL,QOLの維持向上に寄与する役割を担っていきたい.
【当院での治療方針】慢性期脳卒中患者において痙縮は生活の質を下げる最たる問題の 1 つであり,生活へさまざまな影響を及ぼす(勝谷ら2019).BTXチームは,生活行為の改善,在宅介護の負担軽減を基本方針とし,完全予約制・専門外来にて,3ヶ月毎・計4回の施注の必要性を徹底している.
【BTXチームでのOTの関わり】セラピストは,患者・介助者からの聴取に基づき阻害された機能に対して, OT・PTの評価:関節可動域,modified Ashworth Scale(以下MAS),10m歩行,Functional Reachテスト(以下FRT),Disability Assessment Scale(以下DAS)より痙縮による影響を総合的に分析する.OTはFRT,DAS,10m歩行より,能動的運動の変化を分析し,患者・介護者と確認している.施注対象とする痙縮筋は,①カンファレンス時,動作解析動画から歩行動作と上下肢痙縮の影響を分析,②対象筋治療後の機能改善を予測,③施注時,OT,PTで身体アライメントを調整し施注対象の可否を評価,④エコーにて施注対象筋の動き,エコー輝度(Heckmatt scaleと照合)を確認し筋選定に関わっている.
【BTX後の集中的リハ】集中的リハは,入院5日間,外来4回/月の2つの方法で実施し,痙縮に影響を受けている短縮筋の伸張,関節可動域制限の拡大,全身的な筋緊張コントロールにより能動的運動機能の改善を目指した.BTX後の集中リハは,移行した外来8名,入院8名を対象に,移行までの平均施注回数;外来7.5回,入院6.0回.移行後の平均施注回数;外来4回,入院4.6回実施.総投与量400単位にて集中リハ開始前後での肩,肘,手,手指,足関節でのMASの変化率についてWilcoxon符号順位和検定にて解析(有意水準p値<0.05)した結果,外来:手関節,手指.入院:手指に有意差を認めている.その他,FRT,DAS,10m歩行の変化と能動的運動機能との関連は不明である.
【考察】通常の訓練にボツリヌス療法を組み合わせるとさらに機能が向上するとの報告がある(蜂須賀ら 2016).当院の報告からもMASの変化から有効性を認めている.痙縮による自他動運動範囲の減少や姿勢・肢位の異常,関節の構造的な変化は,ADL やQOL に大きな影響を及ぼす(阿部ら2020).との報告からも,ADLに大きな影響を及ぼす上肢痙縮に対し,OTが施注対象筋の選定に関われたことで,能動的運動機能の改善に繋がったと考える.しかし,この能動的運動機能改善による生活行為の変化を患者・家族と共有するためには,FRT,DAS,10m歩行の評価結果との関連付けた説明が必要であると考える.
【課題】①生活行為の変化を示す改善度,②生活行為に向けてのOTプログラム検証,このことよりBTX後の患者・介護者の満足度をより向上させ,慢性期においても生活行為の改善に繋げていく必要がある.そのためにOTは,患者のADL,QOLの維持向上に寄与する役割を担っていきたい.