[PA-12-18] 実際頸髄損傷の栄養状態はどうなっているの?:当センター入院患者における栄養状態の特徴とADLとの相関
【はじめに】
この50年で脊髄損傷の合併症の軽減は早期からの積極的な栄養摂取が有効であることがわかってきた.リハビリテーション(以下:リハ)を実施する上で,対象者の栄養状態を確認することが重要とする報告も多い.リハ目的で入院中の低栄養状態高齢者の在宅復帰率は低い傾向であり,低栄養状態は,ADLやQOL等のリハのアウトカムを低下させることが報告されている.低栄養についての検討はされているが,入院中の成人患者20〜69%が低栄養であり,特に脊髄損傷患者(以下:SCI)は40〜50%に発生していると海外からの報告がある.しかし,本邦からSCIの栄養状態についての報告はない.そのため,今回当センターにおける外傷性頸髄損傷患者(以下CSCI)の栄養状態とその特徴を調査したため報告する.
【方法】
対象は2020年1月1日から2022年12月31日の間に入退院したCSCIで,入院時AIS E・受傷後他院で手術加療し,リハ目的で当院転院・入院期間が30日未満・脊髄損傷患者のADL評価スケールのSpinal Cord Independence Measure-Ⅲ(以下:SCIM)が評価不能なものは除外した.
測定項目は,年齢・性別・入院時及び退院時AIS・入院時,退院時の血液データ:総蛋白(以下:TP),血中アルブミン(以下:Alb)・入院期間(以下:LOS)・SCIM-Ⅲ(食事・移乗・移動・まとまった距離の移動)とした.
統計解析は血液データ及びLOSの平均値を算出し当センターの患者の特性を確認した.その後,血液データを入院時と退院時で差があるか比較した.また,血液データとSCIM,LOSとの相関関係の有無を確認した.血液データの基準値は当センターで使用しているものを採用し,TP:6.5~8.2 Alb:3.8~5.3を正常範囲としそれ以下を低栄養と定義した.本研究は当センターの倫理審査委員会の承認を受け実施した.
【結果】
期間内に入退院したものは114名で,基準を満たした92名のデータを使用した.男性53名,女性39名で平均年齢は67.6歳,平均在院日数193.2日,入院時AIS A:15名B:6名 C:36名 D:35名で退院時AIS A:6名 B:7名 C:12名 D:66名 E:1名.血液データの平均値(入院時/退院時)は,TP:6.34/6.43,Alb:3.71/3.54であった.退院時にAlb値が基準値以下で低栄養のものは55名(58.5%)で,その内3.0未満の重度低栄養のものは13名であった.
TP及びAlbに入院時と退院時で差があるか,Wilcoxonの符号つき順位検定をしたところ,TPでは有意差を認めなかった(V=1363 p=0.378)が,Albで有意差を認めた(2753.5 p=0.004).退院時のTP及びAlbとLOSとの相関をSpearmanの順位相関係数を使用して確認したが,相関を認めなかった(TP:ρ=-0.111 p=0.292,Alb:ρ=-0.132 p=0.209).一方で,退院時のTP及びAlbとSCIMとの間には相関を認めた(TP:ρ=0.48 p<0.05,Alb:ρ=0.720 p<0.05).
【考察】
今回,入院中CSCIの58.5%が低栄養の状態であり,栄養状態とADLとの間に正の相関を認め先行研究を支持する結果となった.入院時と退院時のTPに差はなく,Albに差を認めたが,これはTP中のグロブリンの増加を反映しており,炎症や低栄養が原因であると言われている.CSCIでは尿路感染や肺炎等のリスクが高いことや高負荷高頻度の訓練がこの結果に影響したと考える.LOSと栄養との間に相関関係を認めなかったことは,当センタ―が急性期から慢性期までの長期的な入院が可能な施設であることが関係したと考える.今回栄養状態を考慮した介入は,CSCIでも重要なことが示唆された.今後はADL項目や重症度との関連を調査していく必要がある.
この50年で脊髄損傷の合併症の軽減は早期からの積極的な栄養摂取が有効であることがわかってきた.リハビリテーション(以下:リハ)を実施する上で,対象者の栄養状態を確認することが重要とする報告も多い.リハ目的で入院中の低栄養状態高齢者の在宅復帰率は低い傾向であり,低栄養状態は,ADLやQOL等のリハのアウトカムを低下させることが報告されている.低栄養についての検討はされているが,入院中の成人患者20〜69%が低栄養であり,特に脊髄損傷患者(以下:SCI)は40〜50%に発生していると海外からの報告がある.しかし,本邦からSCIの栄養状態についての報告はない.そのため,今回当センターにおける外傷性頸髄損傷患者(以下CSCI)の栄養状態とその特徴を調査したため報告する.
【方法】
対象は2020年1月1日から2022年12月31日の間に入退院したCSCIで,入院時AIS E・受傷後他院で手術加療し,リハ目的で当院転院・入院期間が30日未満・脊髄損傷患者のADL評価スケールのSpinal Cord Independence Measure-Ⅲ(以下:SCIM)が評価不能なものは除外した.
測定項目は,年齢・性別・入院時及び退院時AIS・入院時,退院時の血液データ:総蛋白(以下:TP),血中アルブミン(以下:Alb)・入院期間(以下:LOS)・SCIM-Ⅲ(食事・移乗・移動・まとまった距離の移動)とした.
統計解析は血液データ及びLOSの平均値を算出し当センターの患者の特性を確認した.その後,血液データを入院時と退院時で差があるか比較した.また,血液データとSCIM,LOSとの相関関係の有無を確認した.血液データの基準値は当センターで使用しているものを採用し,TP:6.5~8.2 Alb:3.8~5.3を正常範囲としそれ以下を低栄養と定義した.本研究は当センターの倫理審査委員会の承認を受け実施した.
【結果】
期間内に入退院したものは114名で,基準を満たした92名のデータを使用した.男性53名,女性39名で平均年齢は67.6歳,平均在院日数193.2日,入院時AIS A:15名B:6名 C:36名 D:35名で退院時AIS A:6名 B:7名 C:12名 D:66名 E:1名.血液データの平均値(入院時/退院時)は,TP:6.34/6.43,Alb:3.71/3.54であった.退院時にAlb値が基準値以下で低栄養のものは55名(58.5%)で,その内3.0未満の重度低栄養のものは13名であった.
TP及びAlbに入院時と退院時で差があるか,Wilcoxonの符号つき順位検定をしたところ,TPでは有意差を認めなかった(V=1363 p=0.378)が,Albで有意差を認めた(2753.5 p=0.004).退院時のTP及びAlbとLOSとの相関をSpearmanの順位相関係数を使用して確認したが,相関を認めなかった(TP:ρ=-0.111 p=0.292,Alb:ρ=-0.132 p=0.209).一方で,退院時のTP及びAlbとSCIMとの間には相関を認めた(TP:ρ=0.48 p<0.05,Alb:ρ=0.720 p<0.05).
【考察】
今回,入院中CSCIの58.5%が低栄養の状態であり,栄養状態とADLとの間に正の相関を認め先行研究を支持する結果となった.入院時と退院時のTPに差はなく,Albに差を認めたが,これはTP中のグロブリンの増加を反映しており,炎症や低栄養が原因であると言われている.CSCIでは尿路感染や肺炎等のリスクが高いことや高負荷高頻度の訓練がこの結果に影響したと考える.LOSと栄養との間に相関関係を認めなかったことは,当センタ―が急性期から慢性期までの長期的な入院が可能な施設であることが関係したと考える.今回栄養状態を考慮した介入は,CSCIでも重要なことが示唆された.今後はADL項目や重症度との関連を調査していく必要がある.