第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-12] ポスター:脳血管疾患等 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PA-12-19] 当院回復期リハビリテーション病棟入院中にADLが完全自立したが,復職に時間を要した中心性頸髄損傷患者の事例報告

青柳 毅 (森山メモリアル病院 リハビリテーション部)

【はじめに】
内田らは脊髄損傷者の職業復帰率は,退院時に約10%,5年後で25%であり,就労の困難事例が多いことを報告している1).本症例においては,退院直後の復職は困難であったが,段階的にアプローチすることにより復職できたため以下に報告する.なお本報告に関して,本症例に対し充分な説明を行い,同意を得ている.
【症例紹介】
40歳代男性で右利き.X年Y月Z日スキーの着地で転倒し受傷.A病院で同日に椎弓形成術施行.20日後B病院へ転院.1か月後に当院入院.初期評価は,Frankel分類C2.筋力はMMTで左上肢2,右上肢3,右下肢4,左下肢3.簡易上肢機能検査(以下,STEF)で右83/100,左59/100.表在・深部感覚軽度鈍麻(7/10).Berg balance scale(以下,BBS)14/56.FIM77/126.主訴は階段を上がれるようになりたい,仕事に戻りたい.仕事は建築関係の下請けで,内装設備の搬送が主.
【経過と結果】
入院当初から免荷式歩行器を用いて応用バランス練習を積極的に実施した結果,BBSが1か月後54に改善.FIMも120に上昇.さらに2か月後,STEF右93,左87となり,本格的な職業復帰訓練に移行.両上肢とも実用手レベルではあったがシンクなどの重い物品は搬送困難だった.入院から3か月で退院となるが,復職支援目的で週2回の外来リハビリテーションに移行.リハビリを継続することで軽作業程度の復職は可能と思われたが,仕事は自宅での事務作業が中心となった.
その後,本人の希望する物品搬送を可能にするため,段階的に重量を調整し,搬送環境に合わせた動作指導を繰り返し実施.結果,退院の2か月後には本人の求める7~8割程度の業務遂行が可能になった.
【考察】
 現状,回復期リハビリテーション病棟退院後,3か月間の継続したリハビリ提供が可能であり,本症例ではその効果が示された.継続したリハビリに加え,インセンティブな関わりを医療側が意識することで,内発的動機付けが変容する可能性が示唆された.
【参考文献】
1)内田竜生,住田幹男,富永俊克,徳永昭博:脊髄損傷患者の復職状況と就労支援.日本職業・災害医学会会誌,51,188-196.2003