第57回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-12] ポスター:脳血管疾患等 12

Sat. Nov 11, 2023 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PA-12-3] 脳卒中患者における非麻痺側上肢機能に及ぼす認知機能の影響

池田 光季1, 近藤 健2, 李 範爽3, 平石 武士1 (1.医療法人社団日高会 日高リハビリテーション病院リハビリテーションセンター, 2.群馬パース大学, 3.群馬大学)

【はじめに】
 脳卒中患者においてSimple Test for Evaluating Hand Function(STEF)は現在広く用いられている上肢機能評価法である.臨床経験上,非麻痺側においても得点が低下する例を経験する.低下する原因の一つとして,認知機能の低下が考えられるが,非麻痺側のSTEF結果と認知機能との関連,その具体的内容は十分に検討されていない.本研究は脳卒中患者における非麻痺側上肢機能に及ぼす認知機能の影響を明らかにすることを目的として実施した.
【方法】
 対象は2018年1月1日から2022年11月1日の間に研究実施施設回復期リハビリテーション(リハ)病棟に入棟し,STEFを実施した患者とし,除外基準を既往に上肢機能が低下する疾患がある患者,重度の認知機能低下を呈する患者とした.基本情報(年齢,性別,診断名,病巣側,発症から回復期リハ病棟入棟までの期間),調査項目として運動機能評価(STEF,Manual Function Test;MFT,Berg Balance Scale;BBS,Stroke Impairment Assessment Set;SIAS体幹機能,Functional Independence Measure;FIM運動項目),認知機能評価(Mini Mental State Examination;MMSE,Trail Making Test;TMTA及びB,Vitality Index;VI,SIAS視空間認知,FIM認知項目)を初期評価から収集した.まず,非麻痺側のSTEFの点数を従属変数とし,基本情報と運動機能評価を独立変数とし,重回帰分析を実施した(モデル1).次に,モデル1の独立変数に,認知機能・意欲評価を加え,重回帰分析を実施した(モデル2).有意水準は5%未満とした.本研究は研究実施施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
 分析対象は61名(69.9±12.3歳,男性34名,女性27名)であった.診断名は,脳梗塞44名,脳出血16名,その他1名,病巣は右半球31名,左半球30名,発症から回復期リハ病棟入棟までの期間は32.5±25.0日であった.非麻痺側STEFは88.7±11.1点であった.重回帰分析を行った結果,モデル1ではMFTが抽出され(β=0.83,p<0.001),モデル2ではMFT(β=0.67,p<0.001)とTMT-A(β=-0.39,p=0.001)が抽出された.調整済み決定係数はそれぞれ,0.68,0.73であった.
【考察】
 認知機能評価の中ではTMT₋Aが抽出され非麻痺側上肢機能と注意機能の関連が示唆された.STEFでは物品の形やそれにあった手の形,運搬する場所,動作の速度制御など視覚探索を行いながら情報を処理し,効率的に課題を遂行していく必要がある.注意機能の低下によって,適切な場所に注意を向けつつ多くの情報を処理することができずキャパオーバーとなってしまい,非麻痺側であっても作業速度が低下したと考えられる.本研究の結果より,複雑な認知プロセスを含む動作では麻痺側だけでなく非麻痺側においても効率的に使用できているかを評価し,必要に応じて動作の段階付けを行う必要があることが示唆された.