[PA-2-14] 自動車運転が困難になった訪問リハビリテーション利用者に自転車での移動支援を行なった経験
【はじめに】
脳梗塞発症後,通勤や外出の移動手段であった自動車運転が困難になった訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)利用者に対して,代償手段として自転車運転の獲得支援を行なった.その結果,自転車での通勤・外出が可能となったため報告する.利用者には発表について説明を行い同意を得た.
【利用者紹介】
70歳代男性,右利き,要介護1,独居.病前は,通勤や買い物などの外出は自動車で移動していた.
X年Y月Z日,脳梗塞を発症しA病院へ入院となり,リハビリテーション加療の後, Z+130日にADLが修正自立となり自宅へ退院,週1回の訪問リハが開始となった.
訪問リハ開始当初はニードであった右上下肢機能改善と復職に対して介入を行い,Z+160日後に復職となった. 自動車と自転車の運転は,身体機能と認知機能の低下により困難であった.また,長女を含めた4人の娘達が「高齢なので,もう自動車の運転はしないで欲しい.」という意向で,利用者も娘達の意向を受け入れていた.通勤に利用できる公共交通機関はバスであったが,本数が限られ通勤手段としての利用は難しかった.家族で話し合い,通勤は長女が自家用車で送迎を行うことになった.復職して2ヶ月後に「毎日,娘に送迎してもらうのが申し訳ないから自転車に乗れるようになりたい.」と希望があり自転車運転支援が開始となった.
【評価】
身体機能:視野,視力は特に問題なし.Br.stage右上肢Ⅳ-手指Ⅳ-下肢Ⅴ.筋力はMMTで左上下肢5, 右上下肢3〜4.握力は左28.5kg,右7.2kg.Functional Balance Scale(以下,F B S)は33/56.歩行はT字杖を使用して自立.階段は手すりを支持して可能であった.
脳機能:Trail Making Test日本版(以下,TMT)のA 84秒(異常),B 159秒(異常).日本版脳卒中ドライバーのスクリーニング評価(以下,SDSA)は運転不合格予測式の得点が高かった.
Life-Space Assessment (以下,LSA)は79/120点,General Self-Efficacy Scale(以下,G S E S)の標準化得点は26点(非常に低い)であった.
自転車運転:自転車乗降,片足支持,右手でのハンドル・ブレーキ操作が困難で,柔軟性低下・体幹可動域制限により安全確認が不十分であった.
【介入】
自転車運転には右上下肢機能,バランス機能,柔軟性,認知機能の改善が必要と考えられた.そのため,筋力トレーニング,右上肢挙上位での操作練習,ストレッチ,バランス練習, 生活空間での視空間認知・判断練習,自転車運転練習を行った.
【結果】
3ヶ月後,握力は右15.7kg.F B Sは49/56.歩行は杖なし独歩,階段昇降も手すり支持なしで可能となった.TMTはA 44秒(正常),B 79秒(正常). SDSAは運転合格予測式の得点が高くなり,自転車での通勤や外出が可能になった. LSAは120/120点,G S E Sは47点(普通)と改善を認めた.
【考察】
脳梗塞後の身体機能や認知機能の低下により自動車運転の再開が困難であった訪問リハ利用者に対して,代償手段として自転車での移動動作獲得支援を行なった.結果,自転車での通勤や外出が可能となり活動範囲の拡大や自己効力感が向上した.また,移動の自立度の改善により家族の負担が軽減された.代償手段での移動動作獲得は活動性だけでなく自己効力感や家族負担にも影響するため, 自動車運転が困難な場合に,代償手段での移動動作の獲得支援は重要であると考えられた.
脳梗塞発症後,通勤や外出の移動手段であった自動車運転が困難になった訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)利用者に対して,代償手段として自転車運転の獲得支援を行なった.その結果,自転車での通勤・外出が可能となったため報告する.利用者には発表について説明を行い同意を得た.
【利用者紹介】
70歳代男性,右利き,要介護1,独居.病前は,通勤や買い物などの外出は自動車で移動していた.
X年Y月Z日,脳梗塞を発症しA病院へ入院となり,リハビリテーション加療の後, Z+130日にADLが修正自立となり自宅へ退院,週1回の訪問リハが開始となった.
訪問リハ開始当初はニードであった右上下肢機能改善と復職に対して介入を行い,Z+160日後に復職となった. 自動車と自転車の運転は,身体機能と認知機能の低下により困難であった.また,長女を含めた4人の娘達が「高齢なので,もう自動車の運転はしないで欲しい.」という意向で,利用者も娘達の意向を受け入れていた.通勤に利用できる公共交通機関はバスであったが,本数が限られ通勤手段としての利用は難しかった.家族で話し合い,通勤は長女が自家用車で送迎を行うことになった.復職して2ヶ月後に「毎日,娘に送迎してもらうのが申し訳ないから自転車に乗れるようになりたい.」と希望があり自転車運転支援が開始となった.
【評価】
身体機能:視野,視力は特に問題なし.Br.stage右上肢Ⅳ-手指Ⅳ-下肢Ⅴ.筋力はMMTで左上下肢5, 右上下肢3〜4.握力は左28.5kg,右7.2kg.Functional Balance Scale(以下,F B S)は33/56.歩行はT字杖を使用して自立.階段は手すりを支持して可能であった.
脳機能:Trail Making Test日本版(以下,TMT)のA 84秒(異常),B 159秒(異常).日本版脳卒中ドライバーのスクリーニング評価(以下,SDSA)は運転不合格予測式の得点が高かった.
Life-Space Assessment (以下,LSA)は79/120点,General Self-Efficacy Scale(以下,G S E S)の標準化得点は26点(非常に低い)であった.
自転車運転:自転車乗降,片足支持,右手でのハンドル・ブレーキ操作が困難で,柔軟性低下・体幹可動域制限により安全確認が不十分であった.
【介入】
自転車運転には右上下肢機能,バランス機能,柔軟性,認知機能の改善が必要と考えられた.そのため,筋力トレーニング,右上肢挙上位での操作練習,ストレッチ,バランス練習, 生活空間での視空間認知・判断練習,自転車運転練習を行った.
【結果】
3ヶ月後,握力は右15.7kg.F B Sは49/56.歩行は杖なし独歩,階段昇降も手すり支持なしで可能となった.TMTはA 44秒(正常),B 79秒(正常). SDSAは運転合格予測式の得点が高くなり,自転車での通勤や外出が可能になった. LSAは120/120点,G S E Sは47点(普通)と改善を認めた.
【考察】
脳梗塞後の身体機能や認知機能の低下により自動車運転の再開が困難であった訪問リハ利用者に対して,代償手段として自転車での移動動作獲得支援を行なった.結果,自転車での通勤や外出が可能となり活動範囲の拡大や自己効力感が向上した.また,移動の自立度の改善により家族の負担が軽減された.代償手段での移動動作獲得は活動性だけでなく自己効力感や家族負担にも影響するため, 自動車運転が困難な場合に,代償手段での移動動作の獲得支援は重要であると考えられた.