[PA-2-18] 体性感覚障害を呈した患者に対して修正CI療法を用い,麻痺手の使用頻度と質の向上がみられた一症例
【はじめに】
運動麻痺などの上肢機能障害に対する治療法としてCI療法が推奨されているが,体性感覚障害を伴うケースに対してCI療法を実施した報告は少ない.今回,髄膜腫の術後に運動麻痺と感覚障害を呈した患者(以下,症例)を担当した.ADL場面で非麻痺側手を優位に使用していた症例に対し修正CI療法を実施した結果,麻痺手の使用頻度と質の向上が認められたため以下に報告する.尚,本報告にあたり症例に同意を得ている.
【症例紹介】
70歳代男性(右利き),右円蓋部・傍矢状洞部髄膜腫除去術後に運動麻痺と感覚障害が出現し,術後22日目に当院回復期病棟へ転入した.術後36日目のBRSは左上肢Ⅳ・手指Ⅴ,MASは左肘屈曲筋群2,前腕回内筋群2,手関節掌背屈筋群3であった.また,感覚は表在覚は正常,深部覚は中等度鈍麻であった.FMA‐UE 43/66点,ARAT 50/57点,STEF右93/100点 左9/100点,MALはAOU 1.13/5点,QOM 1.25/5点であった.左手で物品を掴み損ねたり,屈曲運動パターンとなりやすく道具をうまく扱うことが困難な状態であった.ADLは右片手動作でなんとか行えていたが,病前に両手で行っていた動作ではやりにくさを訴えていた.そこで左上肢機能の改善を図りつつ,症例とADL場面での麻痺手の使用に関して目標共有し,使用頻度と質の向上を目指すこととした.
【方法】
修正CI療法の実施にあたり,麻痺手の使用に関する行動契約を行った.作業療法80分,自主訓練を午前と午後に各30分行うこととし,麻痺手の使用場面と自主訓練の内容を記載する行動日記を作成して症例と共有した.また,課題指向型訓練では感覚障害に対して視覚代償を用いて麻痺手での掴み・つまみ動作訓練を行い,物品操作能力の向上を図った.
【介入経過】
術後37日目に左手の使用場面の目標として「タオルを両手で絞る」,「両手でタオルを持って顔を拭く」,「トイレで下衣を両手で上げ下げする」,「茶碗を左手で持つ」の4つを設定し,修正CI療法を開始した.課題指向型訓練では視覚代償を用いるように指導したことで物品を掴み損ねることは徐々に減少していった.Transfer Packageでは訓練時に左手の使用方法を指導し,ADL場面で実践した結果に対してフィードバックをした.介入8日目にタオルを両手で絞る,12日目に両手でタオルを持って顔を拭く,ズボンを両手で上げ下げすることが可能になった.14日目に数秒間であれば茶碗を左手で持ち上げる動作が可能になったがADL場面での汎化には至らなかった.最終評価時には「前よりも左手を使うことが増え,使いやすくなっている」という発言も聞かれた.
【結果】
介入14日目でBRS左上肢Ⅴ・手指Ⅴと改善し,MASは左肘屈曲筋群1,前腕回内筋群1+,手関節掌背屈筋群2となった.感覚障害は著変なかった.また,FMA‐UE 48/66点,ARAT 57/57点,STEF右94/100点 左26/100点MALはAOU 2.29/5点,QOM 2.29/5点と改善した.
【考察】
Taubらは麻痺側上肢に感覚障害が伴うことで失敗体験を重ねやすくなり,麻痺側上肢の活動が制限される学習性不使用につながると報告している.本症例は短期間で集中的に訓練時間を確保して,視覚代償を用いて感覚障害を伴う麻痺手の使い方を学習したことで物品操作能力の改善を認め,徐々にADL場面での麻痺側上肢の使用頻度と質が向上した.このことから,体性感覚障害を伴う患者に対する修正CI療法の効果が示唆された.
運動麻痺などの上肢機能障害に対する治療法としてCI療法が推奨されているが,体性感覚障害を伴うケースに対してCI療法を実施した報告は少ない.今回,髄膜腫の術後に運動麻痺と感覚障害を呈した患者(以下,症例)を担当した.ADL場面で非麻痺側手を優位に使用していた症例に対し修正CI療法を実施した結果,麻痺手の使用頻度と質の向上が認められたため以下に報告する.尚,本報告にあたり症例に同意を得ている.
【症例紹介】
70歳代男性(右利き),右円蓋部・傍矢状洞部髄膜腫除去術後に運動麻痺と感覚障害が出現し,術後22日目に当院回復期病棟へ転入した.術後36日目のBRSは左上肢Ⅳ・手指Ⅴ,MASは左肘屈曲筋群2,前腕回内筋群2,手関節掌背屈筋群3であった.また,感覚は表在覚は正常,深部覚は中等度鈍麻であった.FMA‐UE 43/66点,ARAT 50/57点,STEF右93/100点 左9/100点,MALはAOU 1.13/5点,QOM 1.25/5点であった.左手で物品を掴み損ねたり,屈曲運動パターンとなりやすく道具をうまく扱うことが困難な状態であった.ADLは右片手動作でなんとか行えていたが,病前に両手で行っていた動作ではやりにくさを訴えていた.そこで左上肢機能の改善を図りつつ,症例とADL場面での麻痺手の使用に関して目標共有し,使用頻度と質の向上を目指すこととした.
【方法】
修正CI療法の実施にあたり,麻痺手の使用に関する行動契約を行った.作業療法80分,自主訓練を午前と午後に各30分行うこととし,麻痺手の使用場面と自主訓練の内容を記載する行動日記を作成して症例と共有した.また,課題指向型訓練では感覚障害に対して視覚代償を用いて麻痺手での掴み・つまみ動作訓練を行い,物品操作能力の向上を図った.
【介入経過】
術後37日目に左手の使用場面の目標として「タオルを両手で絞る」,「両手でタオルを持って顔を拭く」,「トイレで下衣を両手で上げ下げする」,「茶碗を左手で持つ」の4つを設定し,修正CI療法を開始した.課題指向型訓練では視覚代償を用いるように指導したことで物品を掴み損ねることは徐々に減少していった.Transfer Packageでは訓練時に左手の使用方法を指導し,ADL場面で実践した結果に対してフィードバックをした.介入8日目にタオルを両手で絞る,12日目に両手でタオルを持って顔を拭く,ズボンを両手で上げ下げすることが可能になった.14日目に数秒間であれば茶碗を左手で持ち上げる動作が可能になったがADL場面での汎化には至らなかった.最終評価時には「前よりも左手を使うことが増え,使いやすくなっている」という発言も聞かれた.
【結果】
介入14日目でBRS左上肢Ⅴ・手指Ⅴと改善し,MASは左肘屈曲筋群1,前腕回内筋群1+,手関節掌背屈筋群2となった.感覚障害は著変なかった.また,FMA‐UE 48/66点,ARAT 57/57点,STEF右94/100点 左26/100点MALはAOU 2.29/5点,QOM 2.29/5点と改善した.
【考察】
Taubらは麻痺側上肢に感覚障害が伴うことで失敗体験を重ねやすくなり,麻痺側上肢の活動が制限される学習性不使用につながると報告している.本症例は短期間で集中的に訓練時間を確保して,視覚代償を用いて感覚障害を伴う麻痺手の使い方を学習したことで物品操作能力の改善を認め,徐々にADL場面での麻痺側上肢の使用頻度と質が向上した.このことから,体性感覚障害を伴う患者に対する修正CI療法の効果が示唆された.