第57回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-2] ポスター:脳血管疾患等 2

Fri. Nov 10, 2023 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PA-2-7] 事例報告登録制度における公開事例のトピック・モデルを用いた分析

鈴木 真1,2, 田村 大1,3, 谷村 厚子1,4, 小林 法一1,4, 内藤 泰男1,5 (1.日本作業療法士協会学術部, 2.関西医療大学附属診療所, 3.秋田労災病院, 4.東京都立大学大学院 人間健康科学研究科, 5.大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科)

【はじめに】日本作業療法士協会は2005年9月1日より事例報告制度の運用を開始した.本制度の目的は①事例報告の作成によって会員の作業療法実践の質の向上を図る,②事例報告の分析によって作業療法成果の根拠資料を作成する,③事例報告の提示によって作業療法実践の成果を内外に示していくこと,とされている.今回,蓄積された事例報告データの中から,最も登録数が多い身体障害領域の脳血管障害に対する報告に焦点を当て,急性期から維持期のそれぞれの報告内容から要旨に該当する「報告の目的」のみを抽出し,各期におけるトピックから作業療法における特徴について分析した.
【方法】事例報告登録システムのデータベースより以下の条件に該当する登録公開された事例報告を対象とした.検索条件は,専門分野:1.身体障害,回復状態:急性期,回復期,維持期,疾患コード:0201:脳血管障害,登録年:2017年から2021年とした.分析方法は登録公開された事例報告から「報告の目的」の項目のテキストを抽出し,略語や表現の異なる同意語などを統一するクレンジング作業を行なった後,テキストの中にある単語の種類や頻度からテキスト全体の潜在的な意味を解析する手法であるトピック・モデルを用いた.解析では回復状態を外部変数と設定し,回復状態におけるトピックの特徴について検討した.なお,統計解析はテキストマイニングソフトであるKH coderを使用した.
【倫理的配慮】すべての事例報告が事例報告登録制度に対する対象者やその家族の同意書が取得されているもののみ登録公開されている.
【結果】検索に該当した事例報告は急性期80件,回復期201件,維持期71件の合計352件であった.分析結果は,KH coderに実装されている「トピック数の探索」から18トピックが妥当性の高いトピック数であることが示唆された.トピックの推定においては,急性期では運動機能に関するトピックが最も強く,次いで生活に関するトピックが抽出された.回復期では,高次脳機能障害を含む困難事例のADLの向上やMTDLPを用いた活動参加レベルへの介入に関するトピックが抽出された.維持期においては,復職を含めた活動参加レベルの向上への介入のトピックが抽出された.運転や復職,動作レベルの自立度向上や上肢機能の改善への介入に関するトピックについては特徴的なトピックとして抽出されたものの,各期における推定結果に大きな乖離はみられなかった.
【考察】本研究では,日本作業療法士協会が運営する事例報告登録制度に蓄積された事例報告の報告の目的から,脳血管障害に焦点を当て,急性期,回復期,維持期における特徴についてトピック・モデルを用いて検討した.その結果,各期におけるトピックを抽出することができ,脳血管障害における作業療法の介入の特徴を示す一助とすることができたと考える.また,運転や復職など各期における推定結果に大きな乖離がみられなかったトピックについては,各期において共通して作業療法士が重要視していることが考えられる.本研究では脳血管障害に焦点化したが,今後はさらに広範囲に分析し,作業療法実践の成果を内外に示していく必要があると考える.