第57回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

脳血管疾患等

[PA-3] ポスター:脳血管疾患等 3

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PA-3-10] 回復期脳卒中上肢麻痺に対するReoGo-J併用効果と適応の検討

渡部 清寛1, 藤原 健一2, 齋藤 塁1, 算用子 暁美1 (1.弘前脳卒中・リハビリテーションセンター, 2.弘前医療福祉大学)

【序論】 脳卒中治療ガイドライン2021では,中等度から重度の上肢麻痺患者に対するロボットを用いた上肢機能訓練を行うことが妥当であるとされている.当院では,2020年3月より上肢用ロボット型運動訓練装置(ReoGo-J)を導入し,その効果について検討しReoGo-J併用が上肢麻痺の改善に有効であることを報告した.しかし,前回の分析では症例数が少なく,効果検証や適応も十分であるとは言えなかった.
【目的】 本研究では,当院回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)の脳卒中患者において,症例数を増やしReoGo-Jを併用した場合の効果と適応を検討することを目的とした.
【方法】 対象は回復期リハ病棟に入院した脳卒中患者で,2019年4月から2020年3月までの期間で通常の作業療法を実施した者(通常群)と2020年4月から2022年3月までの期間で作業療法にReoGo-Jを併用した者(Reo群)とした.調査データは,対象の年齢,診断名,発症からReoGo-J開始までの日数,ReoGo-Jの実施期間,使用回数,Fugl-MeyerAssessmentの肩,肘,前腕の4週目の得点 (FMA4週)及び8週目の得点(FMA8週)を後方視的に抽出した.またFMA8週と4週の得点差をFMA利得として算出した.対象の除外基準は,MMSE23点以下,明らかな高次脳機能障害がある者,調査データに欠損がある者とした.なお,本研究は対象者より書面にて同意を得て実施した.
【結果】 対象は通常群81名,Reo群58名であった.両群のFMAについて分散分析を行った結果,交互作用が有意であったが,両群のFMA4週とFMA8週の得点に単純主効果は認められなかった.しかし,両群ともにFMA4週に比べFMA8週で単純主効果が認められ,両群ともに有意に改善していた.次にReoGo-Jの適応を検討するため, FMAのMinimally Important Clinical Difference1)を参考に,FMA利得(6点以上・5点以下)をアウトカム,FMA4週を独立変数としてReo群に対してROC解析を行った.その結果,FMA利得が6点以上となるFMA4週のカット・オフ値は25点であった.また,Reo群のFMA利得との相関分析では,開始までの日数,ReoGo-Jの実施期間,使用回数ともに有意な相関が認められなかった.他方,FMA利得が5点以下では両群のFMAについて分散分析を行った結果,FMAの主効果のみ有意であり,両群に有意差は認められなかった.
【考察】 通常群とReo群におけるFMAの比較では,上肢麻痺に対する上肢機能の改善効果は両群に有意差がなく,どちらもFMA4週に比べてFMA8週で有意な改善を認めたことから,療法士の徒手的な介入を必要としないReoGo-J併用は回復期脳卒中上肢麻痺に対する治療として有益であることが示唆された.また,FMA利得のROC分析から,FMA4週で25点以下の上肢機能の場合にReoGo-J併用の効果が得られやすいことが推察された.しかし,FMA利得が5点以下の場合においても両群のFMA改善効果に有意差を認められないことから,FMA4週で26点以上の回復期脳卒中上肢麻痺に対してもReoGo-Jを適応してもよいと考える.他方,ReoGo-J併用の時期や期間とFMA利得との関連性が低いことから,より効果的な適応を検討するためには,上肢の運動麻痺のみならず,バランス,感覚,筋緊張など,他の身体機能との関連性を検討する必要があり,今後の課題である.
【引用文献】1)Shogo Hiragami,et al.:Minimal clinically important difference for the Fugl-Meyer assessment of the upper extremity in convalescent stroke patients with moderate to severe hemiparesis.Journal of Physical Therapy Science31:917-921, 2019.