[PA-3-11] 回復期における中等度以上の上肢麻痺を呈する脳卒中患者に対する短時間神経筋電気刺激の効果
【はじめに】脳卒中患者に対する神経筋電気刺激(Neuromuscular electrical stimulation:以下, NMES)の有効性は認められているが(Yang, et al, 2019), その治療時間や訓練方法等は一定の議論が残っている. Obayashi(2020)は急性期の中等度以上の上肢麻痺を呈する脳卒中患者に対して15〜20分のNMESと標準治療を20分併用し介入した結果, Fugl-Meyer Assessment Scaleの上肢項目(以下, FMA-UE)に有意な改善を認めたと報告しており, 短時間での治療介入で肯定的な成果を収めている. 当院ではObayashiの手法を参考にNMESを取り入れているが, 回復期でこの手法で効果検証を行った研究は散見されない. 本研究の目的は, 回復期における中等度以上の上肢麻痺を呈する脳卒中患者に対する短時間神経筋電気刺激(以下, Short-NMES:S-NMES)の効果を検証することである.
【方法】本研究は, 当院でのカルテ情報を用いた後ろ向き研究である. 対象は, 2021年4月1日から2022年9月30日の間に当院回復期リハビリテーション病棟に入院および退院し, IVESを使用した中等度および重度の上肢麻痺を呈する脳卒中患者とした. なお, 一般的に用いられるFMA-UEの重症度のカットオフ値は, 0~20点が重度, 21~50点が中等度, 51~66点が軽度と分類されており, 本研究でもこの基準に則り分類した. 除外基準は, 次に示す調査データが得られない患者とした. 調査データは, 年齢, 性別, 発症から入棟までの日数, 治療日数, 機能的自立度評価法(以下, FIM), FMA-UE, Motor Activity Log(以下, MAL)とした. MALはAmount of Use(以下, MAL-A)とQuality of Movement(以下, MAL-Q)を用いた. なお, FMA-UEとMALは入院時および退院時に実施した. 作業療法の頻度は, 40~60分/日を週5~7日実施した. 介入内容は, 一部位5分のS-NMESを最大4か所(三角筋前部および上腕三頭筋, 三角筋中部および上腕三頭筋, 総指伸筋および固有示指伸筋, 浅指屈筋および浅指屈筋腱)に実施した. S-NMES実施後, 20~40分の課題志向型訓練を実施した. 対象者の基本属性は記述統計量でまとめた. 介入前後の比較には, 全ての評価項目に対してShapiro-Wilk検定を実施後, Wilcoxonの符号付順位和検定を用いた. なお, 統計学的分析にはEZRを用い, 有意水準は5%とした. 倫理的配慮として, 本研究はオプトアウトにて情報公開を行い, 研究への参加を拒否する機会を保障した.
【結果】対象者は, 男性5名と女性4名の計9名であり, 年齢は61.8±11.0歳(平均値±標準偏差)であった. 発症から入棟までの日数は21.5±10.0日, 治療期間は85.6±29.4日, 入院時FIMは61.2±21.3点であった. 調査データ項目の前後比較では, FMA-UEは27.11±15.03点(p<0.05), MAL-Aは2.21±1.53点(p<0.05), MAL-Qは2.17±1.22点(p<0.05)と退院時に有意差を認めた.
【考察】本研究では, 回復期リハビリテーションにおいて中等度以上の上肢麻痺を呈する脳卒中患者に対してS-NMESを実施した結果, FMA-UEとMAL-A, MAL-Qにて有意な改善を認めた. したがって, Obayashiの先行研究においては, 急性期の中等度麻痺以上の脳卒中患者を対象としていたが, 回復期においてもある一定の効果が得られたと言える. しかし, 本研究は9例と対象者数が少なく, 得られたデータ項目の数値にもばらつきがみられた. 今後は症例数を増やしての検討が必要と考えられる.
【方法】本研究は, 当院でのカルテ情報を用いた後ろ向き研究である. 対象は, 2021年4月1日から2022年9月30日の間に当院回復期リハビリテーション病棟に入院および退院し, IVESを使用した中等度および重度の上肢麻痺を呈する脳卒中患者とした. なお, 一般的に用いられるFMA-UEの重症度のカットオフ値は, 0~20点が重度, 21~50点が中等度, 51~66点が軽度と分類されており, 本研究でもこの基準に則り分類した. 除外基準は, 次に示す調査データが得られない患者とした. 調査データは, 年齢, 性別, 発症から入棟までの日数, 治療日数, 機能的自立度評価法(以下, FIM), FMA-UE, Motor Activity Log(以下, MAL)とした. MALはAmount of Use(以下, MAL-A)とQuality of Movement(以下, MAL-Q)を用いた. なお, FMA-UEとMALは入院時および退院時に実施した. 作業療法の頻度は, 40~60分/日を週5~7日実施した. 介入内容は, 一部位5分のS-NMESを最大4か所(三角筋前部および上腕三頭筋, 三角筋中部および上腕三頭筋, 総指伸筋および固有示指伸筋, 浅指屈筋および浅指屈筋腱)に実施した. S-NMES実施後, 20~40分の課題志向型訓練を実施した. 対象者の基本属性は記述統計量でまとめた. 介入前後の比較には, 全ての評価項目に対してShapiro-Wilk検定を実施後, Wilcoxonの符号付順位和検定を用いた. なお, 統計学的分析にはEZRを用い, 有意水準は5%とした. 倫理的配慮として, 本研究はオプトアウトにて情報公開を行い, 研究への参加を拒否する機会を保障した.
【結果】対象者は, 男性5名と女性4名の計9名であり, 年齢は61.8±11.0歳(平均値±標準偏差)であった. 発症から入棟までの日数は21.5±10.0日, 治療期間は85.6±29.4日, 入院時FIMは61.2±21.3点であった. 調査データ項目の前後比較では, FMA-UEは27.11±15.03点(p<0.05), MAL-Aは2.21±1.53点(p<0.05), MAL-Qは2.17±1.22点(p<0.05)と退院時に有意差を認めた.
【考察】本研究では, 回復期リハビリテーションにおいて中等度以上の上肢麻痺を呈する脳卒中患者に対してS-NMESを実施した結果, FMA-UEとMAL-A, MAL-Qにて有意な改善を認めた. したがって, Obayashiの先行研究においては, 急性期の中等度麻痺以上の脳卒中患者を対象としていたが, 回復期においてもある一定の効果が得られたと言える. しかし, 本研究は9例と対象者数が少なく, 得られたデータ項目の数値にもばらつきがみられた. 今後は症例数を増やしての検討が必要と考えられる.