[PA-3-14] 脳卒中者に対するリハビリテーション実施時間数と実績指数との関連性の検討
【背景と目的】
回復期リハビリテーション病棟の主要な効果指標の1つは,FIMの運動項目を用いた実績指数である.実績指数の算出方法は,分子はFIM運動項目の改善度であり,分母は在院日数を疾患ごとの算定上限日数で割って算出される.先行研究では,国内外においてリハビリテーション実施時間数に比例しFIM運動項目の改善度に肯定的な影響を及ぼすことが明らかになっている.一方,現在まで,在院日数やリハビリテーション実施時間数と運動機能やFIMに関して報告は多くされているが,リハビリテーション実施時間数と実績指数との関連性は明らかにされていない.本研究の目的は,脳卒中者に対するリハビリテーション実施時間数と実績指数の関連性を明らかにし,今後の回復期病棟の実践の一助とすることである.
【方法】
本研究の対象の包含規準は①脳卒中で入院している②回復期病棟から退棟が決まっている③研究の目的と概要を理解し同意を得られている対象者の3点である.退院(対棟)時のFIM利得,実績指数,在院日数,および理学療法,作業療法,言語聴覚療法のそれぞれの総実施単位数(実施時間数)を変数とした.これらに対し,記述統計,相関係数の算出および,在院日数の長短に応じたFIM利得の差の検定を実施した.統計解析には4Steps Stacel4とSPSS Statics ver.25を用いた.なお,本研究は大学の倫理委員会の承認を得て実施された.
【結果】
データ欠損のない160名を対象とした.データの属性は男性103名,女性57名であった.平均年齢は73.26±11.09歳,平均在院日数は95.01±43.52日,実績指数の平均は63.06±39.19,FIM利得平均は33.76±16.47,合計実施単位数の平均は723.44±444.97単位であった.在院日数と実施時間数には強い正の相関を認めたr=0.88(P<0.01).実施時間数とFIM利得はr=0.29(P<0.01)であった.一方,実施時間数と実績指数の間には有意な逆相関を認めているr=‐0.43(P<0.01).在院日数によるFIM利得の差では,在院日数が短い群(n=83)の平均値は29.96±15.27であり,在院日数の長い群(n=77)の平均値は37.87±16.64であった.統計学的検定の結果,在院日数が長い群が有意にFIM利得は高かった(P<0.01).
【考察】
在院日数の長い群の方が短い群に比べ FIM 利得が有意に高い結果となった.また,実施時間数とFIM利得の間にもr=0.29(P<0.01)の弱い正の相関が認められた.これらから,先行研究の通りリハビリテーション実施時間数はFIM利得に対し肯定的な影響を与えていることが考えられる.一方,実施時間数と実績指数の間には有意な逆相関を認めたr=‐0.43(P<0.01).この理由は,実績指数の分子であるFIM利得がこれ以上あがらない天井効果を認めた後も,在院日数と実施時間数を重ねたことが大きな要因の1つであると考えられる.したがって,FIM利得の向上が見込めない脳卒中者に対しては,漫然と在院日数や実施時間数を増加させることなく,本人・家族の意向を踏まえつつ,退棟するための環境を可及的に整え,在院日数を短縮する必要性が高いと考える.
回復期リハビリテーション病棟の主要な効果指標の1つは,FIMの運動項目を用いた実績指数である.実績指数の算出方法は,分子はFIM運動項目の改善度であり,分母は在院日数を疾患ごとの算定上限日数で割って算出される.先行研究では,国内外においてリハビリテーション実施時間数に比例しFIM運動項目の改善度に肯定的な影響を及ぼすことが明らかになっている.一方,現在まで,在院日数やリハビリテーション実施時間数と運動機能やFIMに関して報告は多くされているが,リハビリテーション実施時間数と実績指数との関連性は明らかにされていない.本研究の目的は,脳卒中者に対するリハビリテーション実施時間数と実績指数の関連性を明らかにし,今後の回復期病棟の実践の一助とすることである.
【方法】
本研究の対象の包含規準は①脳卒中で入院している②回復期病棟から退棟が決まっている③研究の目的と概要を理解し同意を得られている対象者の3点である.退院(対棟)時のFIM利得,実績指数,在院日数,および理学療法,作業療法,言語聴覚療法のそれぞれの総実施単位数(実施時間数)を変数とした.これらに対し,記述統計,相関係数の算出および,在院日数の長短に応じたFIM利得の差の検定を実施した.統計解析には4Steps Stacel4とSPSS Statics ver.25を用いた.なお,本研究は大学の倫理委員会の承認を得て実施された.
【結果】
データ欠損のない160名を対象とした.データの属性は男性103名,女性57名であった.平均年齢は73.26±11.09歳,平均在院日数は95.01±43.52日,実績指数の平均は63.06±39.19,FIM利得平均は33.76±16.47,合計実施単位数の平均は723.44±444.97単位であった.在院日数と実施時間数には強い正の相関を認めたr=0.88(P<0.01).実施時間数とFIM利得はr=0.29(P<0.01)であった.一方,実施時間数と実績指数の間には有意な逆相関を認めているr=‐0.43(P<0.01).在院日数によるFIM利得の差では,在院日数が短い群(n=83)の平均値は29.96±15.27であり,在院日数の長い群(n=77)の平均値は37.87±16.64であった.統計学的検定の結果,在院日数が長い群が有意にFIM利得は高かった(P<0.01).
【考察】
在院日数の長い群の方が短い群に比べ FIM 利得が有意に高い結果となった.また,実施時間数とFIM利得の間にもr=0.29(P<0.01)の弱い正の相関が認められた.これらから,先行研究の通りリハビリテーション実施時間数はFIM利得に対し肯定的な影響を与えていることが考えられる.一方,実施時間数と実績指数の間には有意な逆相関を認めたr=‐0.43(P<0.01).この理由は,実績指数の分子であるFIM利得がこれ以上あがらない天井効果を認めた後も,在院日数と実施時間数を重ねたことが大きな要因の1つであると考えられる.したがって,FIM利得の向上が見込めない脳卒中者に対しては,漫然と在院日数や実施時間数を増加させることなく,本人・家族の意向を踏まえつつ,退棟するための環境を可及的に整え,在院日数を短縮する必要性が高いと考える.