第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-3] ポスター:脳血管疾患等 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-3-17] 当院外来作業療法における脳卒中・頭部外傷患者の復職要因の分析

藤原 謙吾, 神田 龍太, 川口 幹, 淡野 義長 (一般社団法人 是真会 長崎リハビリテーション病院)

【はじめに】
脳卒中患者の復職の促進因子として,患者の身体機能や高次脳機能が良好であること,若年で復職への意欲があり,職場側の配慮や早期からの支援体制があることなどが報告されている.当院外来作業療法では,脳卒中・頭部外傷患者の復職に向けた介入を実施しているが,復職できた患者と困難であった患者の要因の分析が十分になされていない現状である.そこで,脳卒中・頭部外傷患者の復職の状況を調査し,復職に関連する要因を分析することを目的とした.本研究は当院倫理委員会の承認を得ている.
【方法】
2021年1月1日〜2022年12月31日の期間に当院外来に復職目的で紹介があった脳卒中・頭部外傷患者80名のうち,作業療法を実施し,この期間内に作業療法が終了した47名(年齢平均54.3±12.3歳)を対象とした.外来開始前に復職していた患者は除外した.
復職に関連する要因に関しては,先行研究を参考に以下の要因を抽出した.この要因は性別,年齢,脳卒中後うつの有無,障害受容の有無,復職意欲の有無,配偶者や家族の協力の有無,業種(日本標準職業分類),雇用形態,復職先,職場との情報交換の有無,Barthel Index,Brunnstrom recovery stage,Trail Making Test,Rey-Osterrieth複雑図形検査(Rey),Standard verbal paired-associate learning test,Rivermead Behavioural Memory Test,失行・失語症の有無,自動車運転の有無とした.神経心理学的検査の結果は,期間内の最終のものとした.その他に外来作業療法の利用期間,復職した患者の復職までの期間,復職できなかった患者についても分析した.
 統計解析にはSPSSを使用し,復職の有無と復職に関連する要因について相関分析を行い,有意な相関関係が認められた項目をロジスティック回帰分析,ROC曲線を実施した.有意水準は全て5%未満とした.
【結果】
 復職の有無は,復職群41名(平均年齢54.6±12.2歳),非復職群6名(平均年齢52.3±14.2歳)であった.復職の有無と復職に関連する要因の相関関係は,Rey3分後再生(r=-0.46 p=0.005)で関係があり,非復職群で低かった.さらに,ロジスティック回帰分析(判別適中率87.9% オッズ比0.7 p=0.03),ROC曲線(感度0.8 特異度0.8 カットオフ値21.2点)となり,復職に必要なRey3分後再生の点数が分かった.
復職群における復職までの期間は,外来作業療法開始から平均87.4±124.1日であり,復職群の68%の患者が3ヶ月以内に復職した.非復職群6名は,就労支援事業B型を利用した就労や一般就労(アルバイト),友人の仕事の手伝い,自宅の家事に役割を変更し,作業療法終了後も外来診察でフォローしている.
【考察】
 本研究の結果から復職要因には,Rey3分後再生が関係していることが分かり,視覚的記銘力が低いと復職に影響を与えることが考えられた.しかし,対象者の復職先の業種は様々で,今回の研究ではどのような業務に視覚的記銘力の低下が影響しているかまで把握できなかったことが課題である.この業務などの要因が復職に関与している可能性がある為,さらにこれらの分析も必要である.今後,復職に必要な要因を分析するにあたり,業種の特徴や業務に必要な機能の分析,機能低下を補う代償手段に関するデータの蓄積と評価時期を統一することで,より根拠のある分析ができると考える.それによって患者個人にあった適切な介入につなげることが出来ると考える.