[PA-3-4] 脳卒中患者の家族が目標設定に参加するための効果的な支援に関する予備的調査
【背景】
リハビリテーションの目標を立案していく上で,生活を共にする家族の関わりは必要であり,家族の生活や意見を対象者の目標設定に取り入れることで,家族の生活の質や介護負担にも影響を与えうると考えられるが,それらの報告は少ない.本研究は目標設定に家族が参加する影響や,参加するための有用な手段の検討を目的とした予備的調査であり,脳卒中患者家族の生活の質や介護負担に関して,患者と家族のそれぞれが想定する患者の退院後の生活のイメージとお互いのイメージの共有度合の影響を調査したため報告する.
【方法】
縦断的調査研究であり,対象は回復期リハビリテーション(回復期)病院から自宅退院する脳卒中患者と同居する家族とした.調査期間は2017年2月〜2018年2月であり,退院2週間前に患者の退院後生活のイメージとして,作業選択意思決定ソフト(ADOC)を用いて,患者が退院後に「したいこと」,「する必要があること」,「することを期待されていること」について,ADOCの仕様に基づきADOC内の生活行為のイラストを20枚を上限として家族と患者それぞれに選択してもらった.その他の調査項目として,一般情報(年齢,性別,続柄)と患者情報(病型,退院時の機能的自立度評価法(FIM),在院日数)をカルテより収集した.また,追跡調査として,退院3ヶ月後に家族のZarit介護負担尺度短縮版(Zarit-8)とMOS 8-item Short-Form Health Survey(SF-8)を郵送にて調査した.分析として,分析1にADOCの家族の選択項目,患者の選択項目,家族と患者が一致して選択した項目をADOC内のカテゴリーに沿って分類し,選択割合を算出した.分析2に追跡調査の有効解答者の中で家族と患者が一致して選択したADOCの項目数の中央値をもとに2群に分け,各調査項目を差の検定を用いて群間比較した(p<0.05).本研究は済生会神奈川県病院倫理委員会の承認(承認番号16-12)を得て実施した.
【結果】
退院時にADOCの調査ができた対象者が34組であり,性別は家族が女性27名,患者が女性5名,年齢は家族が61.0±13.0歳,患者が64.3±14.2歳,家族の続柄は妻25名,夫4名,他5名であった.また,患者の病型は脳出血19名,脳梗塞15名,退院時FIMの中央値(四分位範囲)は運動項目76.5 (62.50-86.75)点,認知項目31.5 (25.50-35.00)点であり,平均在院日数が114.7±45.7日であった.ADOC内のカテゴリーでの選択割合は家族,患者,家族と患者の共通選択項目の全てで「移動・運動」が多く,それぞれ25.8%,21.5%,28.9%であった.次いで,家族と患者では「趣味」が19.0%と19.1%,共通選択項目で「セルフケア」が16.5%であった.追跡調査は23組(回収率67.6%)の有効解答があった.家族と患者の共通選択項目が多い多項目群(N=12)と少ない少項目群(N=11)の2群の比較では,Zarit-8と年齢に有意差(p<0.05)があり,多項目群と少項目群がそれぞれ,Zarit-8の中央値(四分位範囲)が7.5 (4.75-12.25),4.0 (2.00-7.50)であり,家族の年齢の平均値が52.7±12.7歳,63.0±11.1歳であった.
【考察】
分析1の結果より,回復期病院退院後の生活について家族と患者ともに移動能力や移動手段への関心が高いことが示唆された.また,分析2の結果では,多項目群は年齢が若く,社会生活や家庭生活における患者の役割への期待が大きく,選択項目数が多くなり,介護負担も高かったと考えられ,家族が目標設定に参加する上で,情報の整理や生活のイメージのすり合わせを支援していく必要があるとが考えられた.
リハビリテーションの目標を立案していく上で,生活を共にする家族の関わりは必要であり,家族の生活や意見を対象者の目標設定に取り入れることで,家族の生活の質や介護負担にも影響を与えうると考えられるが,それらの報告は少ない.本研究は目標設定に家族が参加する影響や,参加するための有用な手段の検討を目的とした予備的調査であり,脳卒中患者家族の生活の質や介護負担に関して,患者と家族のそれぞれが想定する患者の退院後の生活のイメージとお互いのイメージの共有度合の影響を調査したため報告する.
【方法】
縦断的調査研究であり,対象は回復期リハビリテーション(回復期)病院から自宅退院する脳卒中患者と同居する家族とした.調査期間は2017年2月〜2018年2月であり,退院2週間前に患者の退院後生活のイメージとして,作業選択意思決定ソフト(ADOC)を用いて,患者が退院後に「したいこと」,「する必要があること」,「することを期待されていること」について,ADOCの仕様に基づきADOC内の生活行為のイラストを20枚を上限として家族と患者それぞれに選択してもらった.その他の調査項目として,一般情報(年齢,性別,続柄)と患者情報(病型,退院時の機能的自立度評価法(FIM),在院日数)をカルテより収集した.また,追跡調査として,退院3ヶ月後に家族のZarit介護負担尺度短縮版(Zarit-8)とMOS 8-item Short-Form Health Survey(SF-8)を郵送にて調査した.分析として,分析1にADOCの家族の選択項目,患者の選択項目,家族と患者が一致して選択した項目をADOC内のカテゴリーに沿って分類し,選択割合を算出した.分析2に追跡調査の有効解答者の中で家族と患者が一致して選択したADOCの項目数の中央値をもとに2群に分け,各調査項目を差の検定を用いて群間比較した(p<0.05).本研究は済生会神奈川県病院倫理委員会の承認(承認番号16-12)を得て実施した.
【結果】
退院時にADOCの調査ができた対象者が34組であり,性別は家族が女性27名,患者が女性5名,年齢は家族が61.0±13.0歳,患者が64.3±14.2歳,家族の続柄は妻25名,夫4名,他5名であった.また,患者の病型は脳出血19名,脳梗塞15名,退院時FIMの中央値(四分位範囲)は運動項目76.5 (62.50-86.75)点,認知項目31.5 (25.50-35.00)点であり,平均在院日数が114.7±45.7日であった.ADOC内のカテゴリーでの選択割合は家族,患者,家族と患者の共通選択項目の全てで「移動・運動」が多く,それぞれ25.8%,21.5%,28.9%であった.次いで,家族と患者では「趣味」が19.0%と19.1%,共通選択項目で「セルフケア」が16.5%であった.追跡調査は23組(回収率67.6%)の有効解答があった.家族と患者の共通選択項目が多い多項目群(N=12)と少ない少項目群(N=11)の2群の比較では,Zarit-8と年齢に有意差(p<0.05)があり,多項目群と少項目群がそれぞれ,Zarit-8の中央値(四分位範囲)が7.5 (4.75-12.25),4.0 (2.00-7.50)であり,家族の年齢の平均値が52.7±12.7歳,63.0±11.1歳であった.
【考察】
分析1の結果より,回復期病院退院後の生活について家族と患者ともに移動能力や移動手段への関心が高いことが示唆された.また,分析2の結果では,多項目群は年齢が若く,社会生活や家庭生活における患者の役割への期待が大きく,選択項目数が多くなり,介護負担も高かったと考えられ,家族が目標設定に参加する上で,情報の整理や生活のイメージのすり合わせを支援していく必要があるとが考えられた.