[PA-3-8] 小脳梗塞患者に対しADOCを用いた目標設定により復職へと繋がった事例
【はじめに】
今回小脳梗塞を発症し,失調症状を呈した事例に対し,作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いた面接で目標設定を行った.面接では家族のために家事を行う,復職を目指すことが目標として挙がり,結果として自宅での家事の再開,復職に至ったため,報告する.なお,本報告に際し本人に同意を得ている.
【事例紹介】
30代男性,妻と二人暮らし.病前は鉄道関連の仕事に励み,趣味として車の運転や旅行を楽しんでいた.小脳梗塞の発症によって,発話は喚語困難や発話不明瞭を認め,軽度の注意障害,企図振戦,測定障害等の失調症状の症状を認めた.入院時,FIM運動項目44点,認知項目28点で,日常生活活動(以下ADL)は全項目で軽介助を要した.小脳性運動失調に特化した尺度であるSARAの上肢3項目で10.5/12点,MAL1.5, FMA右35/66左40/66, MMSE29/30であった.
【経過】
前期(入院~2ヶ月):初回面接では,「身の回りのことができるようになりたい」と希望が聞かれ,ADL中心に訓練を行った.上肢の空間定位能力の獲得のためにReogo-Jでの訓練を開始した.Reogoは粗大筋に対する反復動作訓練を中心に実施した.
中期(2~4ヶ月):目標の共有を図るためにADOCを使用し,事例の人生観と現状の思いを語ってもらった.事例の語りから,「すぐに運転してもいいか」「自分で歩いて仕事をする」といった現状との乖離や病識の欠如も見られた.そこで,その語りから家族の一員,また職業人としての役割の再獲得のために,目標を段階づけ,難易度を調整した.①「自室内を自由に移動できるようになる(重要度:10,遂行度:3,満足度:4)」,②「パソコンで資料作成をする(重要度:8,遂行度:2,満足度:2)」の目標を設定した.まずは職場復帰のために書類の整理や運搬,仕分けといった粗大な運動中心の作業を実施し,慣れてきた頃にパソコンでのタイピングの練習や図表の作成といった微細な作業訓練を実施した.Reogo-Jの訓練内容は運動の自由度を高め,より少ない抵抗運動の中で,目標方向へリーチできるように訓練内容を設定した.コロナ禍で見学ができない家族とはスマートフォンを通じてテレビ通話を行った.
後期(4~6ヶ月):車椅子での行動範囲の拡大に伴い,Reo-goを自主トレへ移行し,病棟での空き時間を有効活用した.妻との旅行計画を立てるという目標設定し,1泊2日の旅行計画の設定をしスマートフォンを用いて情報収集,パソコンでの資料作成を行い,家族や他者から賞賛され自信をつけた.その後は,県の特産品や観光名所を書き込んだマップを作成し,リハ室でプレゼン発表を行う等復職を目指した活動にも精力的に取り組むようになった.自己評価はそれぞれ①(遂行度:6,満足度:7),②(遂行度:7,満足度:7)と変化した.
【結果】
FIM運動項目77点,認知項目32点,ADLは屋外の歩行以外自立し,自宅退院となった.その他項目はSARA2.5/12,MAL3.5, FMA右60/66左64/66と変化した.退院3ヶ月後通所リハビリにも自力で通うことができるようになり,自宅でも軽食の用意を行うようになった.退院1年後には公共交通機関を利用し復職へと至った.
【考察】
ADOCを用いて本人が価値を置く作業を聴取したことで,退院後の生活イメージの共有や入院中の訓練への内発的動機付けへと繋がった.また,作業の意味を家族とも共有しながら介入を進めることは自己肯定感の向上にも繋がり,復職支援の鍵となった.
今回小脳梗塞を発症し,失調症状を呈した事例に対し,作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いた面接で目標設定を行った.面接では家族のために家事を行う,復職を目指すことが目標として挙がり,結果として自宅での家事の再開,復職に至ったため,報告する.なお,本報告に際し本人に同意を得ている.
【事例紹介】
30代男性,妻と二人暮らし.病前は鉄道関連の仕事に励み,趣味として車の運転や旅行を楽しんでいた.小脳梗塞の発症によって,発話は喚語困難や発話不明瞭を認め,軽度の注意障害,企図振戦,測定障害等の失調症状の症状を認めた.入院時,FIM運動項目44点,認知項目28点で,日常生活活動(以下ADL)は全項目で軽介助を要した.小脳性運動失調に特化した尺度であるSARAの上肢3項目で10.5/12点,MAL1.5, FMA右35/66左40/66, MMSE29/30であった.
【経過】
前期(入院~2ヶ月):初回面接では,「身の回りのことができるようになりたい」と希望が聞かれ,ADL中心に訓練を行った.上肢の空間定位能力の獲得のためにReogo-Jでの訓練を開始した.Reogoは粗大筋に対する反復動作訓練を中心に実施した.
中期(2~4ヶ月):目標の共有を図るためにADOCを使用し,事例の人生観と現状の思いを語ってもらった.事例の語りから,「すぐに運転してもいいか」「自分で歩いて仕事をする」といった現状との乖離や病識の欠如も見られた.そこで,その語りから家族の一員,また職業人としての役割の再獲得のために,目標を段階づけ,難易度を調整した.①「自室内を自由に移動できるようになる(重要度:10,遂行度:3,満足度:4)」,②「パソコンで資料作成をする(重要度:8,遂行度:2,満足度:2)」の目標を設定した.まずは職場復帰のために書類の整理や運搬,仕分けといった粗大な運動中心の作業を実施し,慣れてきた頃にパソコンでのタイピングの練習や図表の作成といった微細な作業訓練を実施した.Reogo-Jの訓練内容は運動の自由度を高め,より少ない抵抗運動の中で,目標方向へリーチできるように訓練内容を設定した.コロナ禍で見学ができない家族とはスマートフォンを通じてテレビ通話を行った.
後期(4~6ヶ月):車椅子での行動範囲の拡大に伴い,Reo-goを自主トレへ移行し,病棟での空き時間を有効活用した.妻との旅行計画を立てるという目標設定し,1泊2日の旅行計画の設定をしスマートフォンを用いて情報収集,パソコンでの資料作成を行い,家族や他者から賞賛され自信をつけた.その後は,県の特産品や観光名所を書き込んだマップを作成し,リハ室でプレゼン発表を行う等復職を目指した活動にも精力的に取り組むようになった.自己評価はそれぞれ①(遂行度:6,満足度:7),②(遂行度:7,満足度:7)と変化した.
【結果】
FIM運動項目77点,認知項目32点,ADLは屋外の歩行以外自立し,自宅退院となった.その他項目はSARA2.5/12,MAL3.5, FMA右60/66左64/66と変化した.退院3ヶ月後通所リハビリにも自力で通うことができるようになり,自宅でも軽食の用意を行うようになった.退院1年後には公共交通機関を利用し復職へと至った.
【考察】
ADOCを用いて本人が価値を置く作業を聴取したことで,退院後の生活イメージの共有や入院中の訓練への内発的動機付けへと繋がった.また,作業の意味を家族とも共有しながら介入を進めることは自己肯定感の向上にも繋がり,復職支援の鍵となった.