[PA-4-10] 急性期脳卒中片麻痺患者に対する新型手指伸展スプリントの効果の検討
【はじめに】脳卒中による麻痺の程度は病変部位によって異なるが,特に痙縮を伴う場合においては,治療に難渋する場合が多い.そこで,我々は,痙縮を伴う運動麻痺に対する治療法のひとつである装具療法に着目し,新しい構造の手指用スプリントを開発した. 既報で本スプリントをⅡ~Ⅴ指に使用した慢性期脳卒中片麻痺患者での効果を検証しており,今回は急性期患者に対する臨床効果について検証し若干の考察を加えここに報告する.なお,発表にあたり本人に書面にて同意を得ている.
【スプリントの構造】超弾性の特性を持つ形状記憶合金を特殊加工して作製しており,手指の痙縮の程度に応じて伸展方向に適切な張力をかけることが可能である.Ⅰ~Ⅴ指まで個別装着可能で,能力に合わせた強度が選択可能である.また,Ⅱ~Ⅴ指については基節骨や末節骨部を支点とする為,MP関節や母指に影響を与えないのが特徴である.さらに,Ⅰ指については手背部に撓側外転方向と掌側外転方向への2つ回転軸を持たせることで母指の伸展を補助する仕様としている.
【症例紹介】60代男性.右利き(小学6年生まで左利き).X日仕事中体調が悪く当院受診し左内包後脚に脳梗塞を認め保存的加療が行われた.
【初期評価X+2日】右上肢・手指の上田式12段階片麻痺テスト:grade11・8,Fugl Meyer Assessment(以下FMA):59/66点,Motor Activity Log(以下MAL)-AOU:0点,-QOM:0点,Box and Block Test(以下BBT):13個,10秒テスト:6回,HDS-R:24/30点であった.
【方法】研究デザインはABAB法を用いたシングルケーススタディとした.ベースライン期(A期),スプリントを使用した介入期(B期)に分け,それぞれ平日5日間の介入を1セットとし合計4週間実施した.A期では通常OTプログラム40分/日後,20分/日の課題指向型訓練を実施した.B期ではA期同様のプログラムを実施し,課題指向型訓練時にⅠ~Ⅴ指にスプリントを装着した.対象期間中,BBT及び10秒テストを経時的に実施し,セッション毎に二分平均値法による回帰直線から傾きを算出し,経過を比較した.
【結果】初期/1週/2週/3週/4週で上田式12段階片麻痺テスト手指grade:8/11/11/12/12,FMA手指項目(14点満点):12/14/14/14,MAL-AOU:0.00/0.45/0.35/4.00/4.00,-QOM: 0.00/0.44/0.45/4.00/4.00,BBT:13/31/36/38/42,10秒テスト:6/14/14/13/15となった.また,二分平均値法による回帰直線では1週/2週/3週/4週の傾きがBBTは4.0/2.0/3.4/5.0となり,10秒テストは3.0/2.3/0.3/1.0となった.
【考察】本症例は3週目以降で手指麻痺はほぼ改善されたように見られたが,動作の質やスピードにおいてスプリントを使用した4週目で更なる改善を示した.急性期における治療においては自然回復の影響を取り除くことが困難であるが,本スプリントを使用したことで,手指の伸展運動が学習されたことが回復の一助になったのではないかと考えられる.今後さらに多数の症例に用い,臨床効果についてより詳細な検証を行っていく予定である.
【スプリントの構造】超弾性の特性を持つ形状記憶合金を特殊加工して作製しており,手指の痙縮の程度に応じて伸展方向に適切な張力をかけることが可能である.Ⅰ~Ⅴ指まで個別装着可能で,能力に合わせた強度が選択可能である.また,Ⅱ~Ⅴ指については基節骨や末節骨部を支点とする為,MP関節や母指に影響を与えないのが特徴である.さらに,Ⅰ指については手背部に撓側外転方向と掌側外転方向への2つ回転軸を持たせることで母指の伸展を補助する仕様としている.
【症例紹介】60代男性.右利き(小学6年生まで左利き).X日仕事中体調が悪く当院受診し左内包後脚に脳梗塞を認め保存的加療が行われた.
【初期評価X+2日】右上肢・手指の上田式12段階片麻痺テスト:grade11・8,Fugl Meyer Assessment(以下FMA):59/66点,Motor Activity Log(以下MAL)-AOU:0点,-QOM:0点,Box and Block Test(以下BBT):13個,10秒テスト:6回,HDS-R:24/30点であった.
【方法】研究デザインはABAB法を用いたシングルケーススタディとした.ベースライン期(A期),スプリントを使用した介入期(B期)に分け,それぞれ平日5日間の介入を1セットとし合計4週間実施した.A期では通常OTプログラム40分/日後,20分/日の課題指向型訓練を実施した.B期ではA期同様のプログラムを実施し,課題指向型訓練時にⅠ~Ⅴ指にスプリントを装着した.対象期間中,BBT及び10秒テストを経時的に実施し,セッション毎に二分平均値法による回帰直線から傾きを算出し,経過を比較した.
【結果】初期/1週/2週/3週/4週で上田式12段階片麻痺テスト手指grade:8/11/11/12/12,FMA手指項目(14点満点):12/14/14/14,MAL-AOU:0.00/0.45/0.35/4.00/4.00,-QOM: 0.00/0.44/0.45/4.00/4.00,BBT:13/31/36/38/42,10秒テスト:6/14/14/13/15となった.また,二分平均値法による回帰直線では1週/2週/3週/4週の傾きがBBTは4.0/2.0/3.4/5.0となり,10秒テストは3.0/2.3/0.3/1.0となった.
【考察】本症例は3週目以降で手指麻痺はほぼ改善されたように見られたが,動作の質やスピードにおいてスプリントを使用した4週目で更なる改善を示した.急性期における治療においては自然回復の影響を取り除くことが困難であるが,本スプリントを使用したことで,手指の伸展運動が学習されたことが回復の一助になったのではないかと考えられる.今後さらに多数の症例に用い,臨床効果についてより詳細な検証を行っていく予定である.