[PA-4-14] 主婦役割の再開に至った高次脳機能障害の一事例
【はじめに】高次脳機能障害のリハビリテーションにおいては多角的に症状を捉え全体像を把握し,個々に適した介入をすることが重要とされている.今回,活動を中心に介入したことで高次脳機能障害の改善を認め,主婦役割の再獲得に至った事例を経験したので,以下に報告する.尚,本報告にあたり本人に説明し同意を得た.
【事例紹介】50歳代女性.X年Y月右前頭葉血腫を伴うくも膜下出血を発症しクリッピング術,開頭血腫除去術施行, Y+4月当院回復期リハ病棟に入院.病前は家事全般を担い,事務員として働いていた.夫,義母,子供2人との5人暮らし.家族はADLが自立した上での,自宅退院を希望していた.
【初期評価】軽度左不全片麻痺,軽度意識障害,構音障害,高次脳機能障害として前頭葉障害,注意障害,記憶障害,失行,病識低下などを認めた.車いすを使用し日常生活活動全般に介助を要し,コミュニケーションは理解曖昧で,表出は無声化しており推測を要した.
【経過】前期(2ヶ月半):覚醒状態の変動や口頭指示に従えない場面が目立つため,比較的理解と協力が得られやすい立ち上がりや歩行,排泄,整容練習を実施した.歩行器歩行では注意散漫で左側の物への衝突,下衣操作や歯磨き,手洗いでは保続を認め,誘導や動作の静止などの介助を要した.そのため,動作の反復練習を行い,徐々に介助量を減らすよう努めた.また,孫の話題には反応が良いことから祖母の役割が担えるよう,孫のおもちゃ作りを促しや誘導のもと行った.習慣化されると意欲を示し,作業に集中する時間も延長された.また,家族に対し動画を用いて高次脳機能障害に関する病状説明を適宜実施し,受容できるよう関わった.
中期(2ヶ月):高次脳機能障害の改善を認め, TMT-J A51秒/B153秒,コース立方体組合せテストI.Q.52であった.独歩にて入浴以外のADLが見守りとなるも,歩行時に躓く,他患との距離が保てないなど転倒の危険性があった.食器洗いや洗濯練習などの家事動作においても,洗い残しや動作へ集中すると姿勢まで注意が向かずふらつくなど注意障害を認めた.本人と注意点を確認するなど気づきを与えつつ反復練習を継続して行った.中期後半に歩行は自立したが,リハ時間前より落ち着かない様子が見られるなど予定管理の課題が顕在化した.この課題は予定表と時間の照らし合わせやリハ以外の予定も記載するなどを行うことで改善を示した.さらに,耐久性の低下を自覚し,自ら歩行練習をするなど主体的な生活が送れるようになった.家族面談では,高次脳機能障害への対応や精神障害者保健福祉手帳のサービス利用などを説明し,自宅退院の方針となった.
後期(1ヶ月半):調理練習ではメニューの難易度を段階づけて実施し,包丁操作や火の管理,調理手順には問題は見られなかったが,揚げ物を揚げている時間が待てず促しを要した.また,洗濯や掃除は環境や道具の変更を行い,見守りにて実施可能となった.家族に対し家事活動における注意点を説明し,義母と一緒に行うよう伝えた.
【結果】TMT-J A41秒/ B131秒,コース立方体組合せテストI.Q.85に改善した.自宅退院し入浴以外のADL自立,家事活動は義母とともに行い主婦としての役割を果たしている.また,障がい者福祉施設を週3回利用している.
【考察】多彩な高次脳機能障害を呈した事例に対し,活動を通して高次脳機能障害の改善や気づきを与え動作の定着を図ったことが,主体的な生活に繋がり,主婦役割を担うまでに至ったと考える.また,早期より家族に対し高次脳機能障害や対応方法を説明し,障害への理解と受容期間を設けたことも主婦役割への復帰に有効であったと考える.
【事例紹介】50歳代女性.X年Y月右前頭葉血腫を伴うくも膜下出血を発症しクリッピング術,開頭血腫除去術施行, Y+4月当院回復期リハ病棟に入院.病前は家事全般を担い,事務員として働いていた.夫,義母,子供2人との5人暮らし.家族はADLが自立した上での,自宅退院を希望していた.
【初期評価】軽度左不全片麻痺,軽度意識障害,構音障害,高次脳機能障害として前頭葉障害,注意障害,記憶障害,失行,病識低下などを認めた.車いすを使用し日常生活活動全般に介助を要し,コミュニケーションは理解曖昧で,表出は無声化しており推測を要した.
【経過】前期(2ヶ月半):覚醒状態の変動や口頭指示に従えない場面が目立つため,比較的理解と協力が得られやすい立ち上がりや歩行,排泄,整容練習を実施した.歩行器歩行では注意散漫で左側の物への衝突,下衣操作や歯磨き,手洗いでは保続を認め,誘導や動作の静止などの介助を要した.そのため,動作の反復練習を行い,徐々に介助量を減らすよう努めた.また,孫の話題には反応が良いことから祖母の役割が担えるよう,孫のおもちゃ作りを促しや誘導のもと行った.習慣化されると意欲を示し,作業に集中する時間も延長された.また,家族に対し動画を用いて高次脳機能障害に関する病状説明を適宜実施し,受容できるよう関わった.
中期(2ヶ月):高次脳機能障害の改善を認め, TMT-J A51秒/B153秒,コース立方体組合せテストI.Q.52であった.独歩にて入浴以外のADLが見守りとなるも,歩行時に躓く,他患との距離が保てないなど転倒の危険性があった.食器洗いや洗濯練習などの家事動作においても,洗い残しや動作へ集中すると姿勢まで注意が向かずふらつくなど注意障害を認めた.本人と注意点を確認するなど気づきを与えつつ反復練習を継続して行った.中期後半に歩行は自立したが,リハ時間前より落ち着かない様子が見られるなど予定管理の課題が顕在化した.この課題は予定表と時間の照らし合わせやリハ以外の予定も記載するなどを行うことで改善を示した.さらに,耐久性の低下を自覚し,自ら歩行練習をするなど主体的な生活が送れるようになった.家族面談では,高次脳機能障害への対応や精神障害者保健福祉手帳のサービス利用などを説明し,自宅退院の方針となった.
後期(1ヶ月半):調理練習ではメニューの難易度を段階づけて実施し,包丁操作や火の管理,調理手順には問題は見られなかったが,揚げ物を揚げている時間が待てず促しを要した.また,洗濯や掃除は環境や道具の変更を行い,見守りにて実施可能となった.家族に対し家事活動における注意点を説明し,義母と一緒に行うよう伝えた.
【結果】TMT-J A41秒/ B131秒,コース立方体組合せテストI.Q.85に改善した.自宅退院し入浴以外のADL自立,家事活動は義母とともに行い主婦としての役割を果たしている.また,障がい者福祉施設を週3回利用している.
【考察】多彩な高次脳機能障害を呈した事例に対し,活動を通して高次脳機能障害の改善や気づきを与え動作の定着を図ったことが,主体的な生活に繋がり,主婦役割を担うまでに至ったと考える.また,早期より家族に対し高次脳機能障害や対応方法を説明し,障害への理解と受容期間を設けたことも主婦役割への復帰に有効であったと考える.