[PA-4-15] 高次脳機能障害を呈した脳卒中片麻痺患者が,習慣的に自主練習を実施するに至った要因
【序論・目的】高次脳機能障害者は自主練習の定着が難しい.本報告の目的は,日常生活で麻痺手を使用しない高次脳機能障害患者が,自主練習を定着するまでの作業療法士の関わりについて振り返り,要因を考察することである.尚,本報告は,当院臨床研究倫理審査小委員会の承認および患者の同意を得ている.
【対象】70代男性,右利き,妻と2人暮らし,既往はアルツハイマー型認知症で,病前はADLが自立していた.今回,右放線冠から被殻の脳梗塞を発症し,第15病日に当院回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟に入院した.第43病日の身体機能は,BRSが左上肢Ⅲ手指Ⅳ下肢Ⅲ,FMAが上肢運動項目31/66点であった.日常生活での麻痺手の使用頻度はMALの採点方法を参考とし,「左手でおしぼりを押さえる」はAOU0/QOM0,「両手で手を洗う」はAOU3/QOM2,「左手で車椅子のブレーキを操作する」はAOU2/QOM2であった.精神機能は,MMSEが28/30点,TMT-Aが189秒,Bが337秒であった.FIMは76/126点(運動44/91点,認知32/35点)であり,立位関連動作は介助が必要であった.第23病日から実施した自主練習は,OTが十分に方法を説明し,病室に紙面を掲示することで実施出来たが,開始3日から方法の忘れや誤りがあった.また,練習は3日に1回の頻度であった.朝・昼・夕の実施を指定していたが,車椅子に乗車するためには介助が必要である上,離床時間が不規則であり,毎回は実施していなかった.
【方法】事例が自主練習を適切に継続出来ることを目的とし,方法を以下のように変更することとした.課題指向型練習は単一動作とし,日常生活で麻痺手を使用する練習とともに,課題数は各4項目から3項目に減らすこととした.課題は,動作方法をイラストで描き,机上に紙面を掲示することとした.実施時間は,事例が定時で車椅子に乗車する食前とし,全ての項目が集中して行える10-15分とした.実施場所は,職員の目が届く病棟ロビーで,事例が食事を摂る時の席とし,壁を向く状態で実施することとした.実施状況の確認は,昼食前に作業療法士が自主練習の様子を確認し,個別療法の際にMALの採点方法を用いて事例とともに振り返り,課題の調整をすることとした.
【結果】
改変した自主練習は第45病日から14日間実施した.第59病日の身体機能は,FMAの上肢運動項目は36点,日常生活での麻痺手の使用頻度(AOU/QOM)は「左手でおしぼりを押さえる」4/5,「両手で手を洗う」5/5,「左手で車椅子(左側)のブレーキを操作する」5/5であった.自主練習は毎日実施し,自ら規定回数より多く実施するようになった.
【考察】
高次脳機能障害患者は,疲れやすい,集中力がない,方法を忘れる等の要因で自主練習の継続が難しい.今回の取り組みでは,患者の生活の中で習慣となっている時間帯に自主練習を組み入れ,第三者が患者を見守る場所を設定することで,練習を開始するきっかけ作りが可能となったのではないかと考える.また,高次脳機能障害患者は練習の振り返りをこまめにする必要があり,動作の習得は時間がかかる.複雑な内容は避け,注意が持続できる範囲での課題調整が必要なため,課題の変更や追加は注意が必要である.
【対象】70代男性,右利き,妻と2人暮らし,既往はアルツハイマー型認知症で,病前はADLが自立していた.今回,右放線冠から被殻の脳梗塞を発症し,第15病日に当院回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟に入院した.第43病日の身体機能は,BRSが左上肢Ⅲ手指Ⅳ下肢Ⅲ,FMAが上肢運動項目31/66点であった.日常生活での麻痺手の使用頻度はMALの採点方法を参考とし,「左手でおしぼりを押さえる」はAOU0/QOM0,「両手で手を洗う」はAOU3/QOM2,「左手で車椅子のブレーキを操作する」はAOU2/QOM2であった.精神機能は,MMSEが28/30点,TMT-Aが189秒,Bが337秒であった.FIMは76/126点(運動44/91点,認知32/35点)であり,立位関連動作は介助が必要であった.第23病日から実施した自主練習は,OTが十分に方法を説明し,病室に紙面を掲示することで実施出来たが,開始3日から方法の忘れや誤りがあった.また,練習は3日に1回の頻度であった.朝・昼・夕の実施を指定していたが,車椅子に乗車するためには介助が必要である上,離床時間が不規則であり,毎回は実施していなかった.
【方法】事例が自主練習を適切に継続出来ることを目的とし,方法を以下のように変更することとした.課題指向型練習は単一動作とし,日常生活で麻痺手を使用する練習とともに,課題数は各4項目から3項目に減らすこととした.課題は,動作方法をイラストで描き,机上に紙面を掲示することとした.実施時間は,事例が定時で車椅子に乗車する食前とし,全ての項目が集中して行える10-15分とした.実施場所は,職員の目が届く病棟ロビーで,事例が食事を摂る時の席とし,壁を向く状態で実施することとした.実施状況の確認は,昼食前に作業療法士が自主練習の様子を確認し,個別療法の際にMALの採点方法を用いて事例とともに振り返り,課題の調整をすることとした.
【結果】
改変した自主練習は第45病日から14日間実施した.第59病日の身体機能は,FMAの上肢運動項目は36点,日常生活での麻痺手の使用頻度(AOU/QOM)は「左手でおしぼりを押さえる」4/5,「両手で手を洗う」5/5,「左手で車椅子(左側)のブレーキを操作する」5/5であった.自主練習は毎日実施し,自ら規定回数より多く実施するようになった.
【考察】
高次脳機能障害患者は,疲れやすい,集中力がない,方法を忘れる等の要因で自主練習の継続が難しい.今回の取り組みでは,患者の生活の中で習慣となっている時間帯に自主練習を組み入れ,第三者が患者を見守る場所を設定することで,練習を開始するきっかけ作りが可能となったのではないかと考える.また,高次脳機能障害患者は練習の振り返りをこまめにする必要があり,動作の習得は時間がかかる.複雑な内容は避け,注意が持続できる範囲での課題調整が必要なため,課題の変更や追加は注意が必要である.