[PA-4-20] 非利き手での箸操作練習下での母指の各関節角度と箸操作能力との関係
【はじめに】
作業療法士は,脳血管疾患などにより利き手が障害された対象者に対して,非利き手で箸を使用する練習を行うことがある.箸操作においては,手で箸を持ち,それを続けながら動かす必要がある.箸操作を指導するためには,箸の持ち方を指導することに加えて,箸の動きを成立させる手指の関節角度とその経時的な変化を把握することが必要である.
そこで,本研究の目的は,非利き手での箸の操作方法を的確に指導することを目的として,非利き手での箸操作練習における母指の各関節角度と箸操作能力との関係を調査した.
【方法】
対象者は,左手での箸操作経験がなく,左上肢・手指には箸操作の障害となる構造・機能の障害がない健常者8名(19~22歳,全員右利き)とした.対象者には,本研究の主旨を十分に説明し,協力の同意を得た.
計測の対象は,先行研究(上谷ら,2017,2022)に倣った左手での箸操作練習を7日間連続で実施し,操作を十分に獲得したと考えられる能力水準の者の手指の運動とした.箸操作時の手指の運動の計測について,課題は,椅子座位にて,左手で木製の丸箸を把持し,箸先間隔5cm幅に開いた状態から閉じていき,机上に置かれた直径30mmの球体を箸でつまんだ後,それを持ち上げることとした.この際,母指および箸には赤外線反射マーカーを貼付し,課題実施中の各マーカーの位置を三次元動作解析装置(MAC3D Motion Analysis社製)により経時的に記録した.記録された各マーカーの位置データより,箸で球体をつまみ上げた時の①母指指節間関節(IP関節)の屈曲角度,②母指中手指節関節(MP関節)の屈曲角度を算出した.箸操作能力の測定について,課題は,椅子座位にて,左手で木製の丸箸を把持し,机上に置かれた直径30mmの球体をつまみ,机上から30cmの台の上に,正確にそれをできるだけ速く移動することを3分間実施した.その際の移動個数をビデオ撮像からカウントした.箸操作時の母指の各関節角度と箸操作能力の測定は,練習1日目の終了後と7日目の終了後に実施した.
【結果】
つまみ上げた時のIP関節の関節角度と球体移動個数との関係は,7日目のIP関節の関節角度は10.1度から27.8度の範囲,球体移動個数は65個から117個の範囲に分布した.1日目のIP関節の関節角度が25度以上の5名の者は,7日目にはその角度が小さくなり,球体移動個数が増加した.それ以外の3名の者にはそのような傾向は認められなかった.
つまみ上げた時のMP関節の関節角度と球体移動個数との関係は,7日目のMP関節の関節角度は7.1度から28.1度の範囲に分布した.1日目と比べて7日目の関節角度が小さくなり球体移動個数が増加した者,1日目と比べて7日目の関節角度が大きくなり球体移動個数が増加した者など,その変化に一定の傾向は認められなかった.
つまみ上げた時のIP関節の関節角度とMP関節の関節角度との関係および球体移動個数は,7日目のMP関節の関節角度が21.6度から28.1度に分布し,かつ,IP関節の関節角度が18.1度から24.1度に分布した者が5名おり,その者の球体移動個数が多い傾向が認められた.
【考察】
本結果より,練習初期のIP関節の関節角度が25度以上の者はその角度が小さくなること,また,MP関節の関節角度が21.6度から28.1度,IP関節の関節角度が18.1度から24.1度の範囲に近づくことで箸操作が上達するものと推察された.
作業療法士は,脳血管疾患などにより利き手が障害された対象者に対して,非利き手で箸を使用する練習を行うことがある.箸操作においては,手で箸を持ち,それを続けながら動かす必要がある.箸操作を指導するためには,箸の持ち方を指導することに加えて,箸の動きを成立させる手指の関節角度とその経時的な変化を把握することが必要である.
そこで,本研究の目的は,非利き手での箸の操作方法を的確に指導することを目的として,非利き手での箸操作練習における母指の各関節角度と箸操作能力との関係を調査した.
【方法】
対象者は,左手での箸操作経験がなく,左上肢・手指には箸操作の障害となる構造・機能の障害がない健常者8名(19~22歳,全員右利き)とした.対象者には,本研究の主旨を十分に説明し,協力の同意を得た.
計測の対象は,先行研究(上谷ら,2017,2022)に倣った左手での箸操作練習を7日間連続で実施し,操作を十分に獲得したと考えられる能力水準の者の手指の運動とした.箸操作時の手指の運動の計測について,課題は,椅子座位にて,左手で木製の丸箸を把持し,箸先間隔5cm幅に開いた状態から閉じていき,机上に置かれた直径30mmの球体を箸でつまんだ後,それを持ち上げることとした.この際,母指および箸には赤外線反射マーカーを貼付し,課題実施中の各マーカーの位置を三次元動作解析装置(MAC3D Motion Analysis社製)により経時的に記録した.記録された各マーカーの位置データより,箸で球体をつまみ上げた時の①母指指節間関節(IP関節)の屈曲角度,②母指中手指節関節(MP関節)の屈曲角度を算出した.箸操作能力の測定について,課題は,椅子座位にて,左手で木製の丸箸を把持し,机上に置かれた直径30mmの球体をつまみ,机上から30cmの台の上に,正確にそれをできるだけ速く移動することを3分間実施した.その際の移動個数をビデオ撮像からカウントした.箸操作時の母指の各関節角度と箸操作能力の測定は,練習1日目の終了後と7日目の終了後に実施した.
【結果】
つまみ上げた時のIP関節の関節角度と球体移動個数との関係は,7日目のIP関節の関節角度は10.1度から27.8度の範囲,球体移動個数は65個から117個の範囲に分布した.1日目のIP関節の関節角度が25度以上の5名の者は,7日目にはその角度が小さくなり,球体移動個数が増加した.それ以外の3名の者にはそのような傾向は認められなかった.
つまみ上げた時のMP関節の関節角度と球体移動個数との関係は,7日目のMP関節の関節角度は7.1度から28.1度の範囲に分布した.1日目と比べて7日目の関節角度が小さくなり球体移動個数が増加した者,1日目と比べて7日目の関節角度が大きくなり球体移動個数が増加した者など,その変化に一定の傾向は認められなかった.
つまみ上げた時のIP関節の関節角度とMP関節の関節角度との関係および球体移動個数は,7日目のMP関節の関節角度が21.6度から28.1度に分布し,かつ,IP関節の関節角度が18.1度から24.1度に分布した者が5名おり,その者の球体移動個数が多い傾向が認められた.
【考察】
本結果より,練習初期のIP関節の関節角度が25度以上の者はその角度が小さくなること,また,MP関節の関節角度が21.6度から28.1度,IP関節の関節角度が18.1度から24.1度の範囲に近づくことで箸操作が上達するものと推察された.