第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-5] ポスター:脳血管疾患等 5

2023年11月10日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-5-19] CI療法後の上肢機能および使用感覚に対する12か月間の経時的変化について

野口 貴弘1, 溝脇 菜緒1, 山中 信人1, 戸嶋 和也1,2 (1.偕行会リハビリテーション病院リハビリテーション部, 2.名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻)

【はじめに】CI療法は上肢機能の改善に寄与するエビデンスに基づくメソッドである.CI療法は反復による機能の改善を主とするのではなく,生活上での麻痺手の使用を教育することにより麻痺手を改善させることに主眼が置かれている.実生活上で麻痺手の使用を促すことにより,麻痺手の参加に対する意思決定を定着させる.それがその後の生活に麻痺手の使用量を確保する要因となり,継続的な機能改善に繋がる.つまり,継続的な上肢機能の改善に影響を与えることが可能となる.当院においてもCI療法終了後に12ヶ月間の追跡を行った.麻痺手の機能と麻痺手の使用量および満足感に焦点を当て経時的変化を確認した.なお,本研究は当院倫理審査会の承認を得て実施した.
【方法】対象者は,当院のCI療法を完遂した脳卒中患者36名とした.なお,当院のCI療法は回復期病棟入院を原則としている.1日2.5時間の集中練習を18日間連続で実施し,合計40時間とした.各日時にはTPを対象者に対して設定した.日々の様子は日記として記録し,常に状況を共有できるようにした.経時的変化については,CI療法前後,1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月,12ヶ月を調査時期とした.評価項目はFugl-Meyer Motor Assessmentの上肢項目(FMA),Simple Test for Evaluating Hand Function(STEF)を実施した.またMotor Activity Logを用いて,ADLにおける上肢の使用量Amount of Use(AOU)と動作の質Quality of Movement(QOM)の4項目について調査した.分析については各評価変数に対して,混合モデルの一元配置分散分析を実施し,経時的変化を調査した.各時期間の違いについてはBonferroni法を用いて調査した.次に変数間の関係が時期により変化するかを調査するため,時期別に相関分析を行った.統計学的な解析については有意水準を5%と定義した.
【結果】混合モデルを使用した分析からFMA(p<0.01),STEF (p<0.01),AOU(p<0.01),QOM(p<0.01)と評価時期に対して変化を認める結果を得た.Post-hoc分析において,AOUとQOMはCI療法終了後1か月で改善を示し,FMAとSTEFは3ヶ月後から違いを示した.機能と使用感覚の改善には時期の違いを示した.さらに各評価変数の相関関係は時期により違いを示した.また,QOMのみ他の評価変数との相関関係を認めなかった.
【考察】CI療法後からも上肢機能改善を示した報告は存在する.この効果は,CI療法のメソッドである麻痺手の使用を教育することの効果と考えることが出来る.本研究の結果も先行研究で報告されている通りであったと考える.また,今回は評価変数において改善時刻に差が生じた.機能改善に先行し麻痺手の使用感覚が改善する結果を示した.この結果は,環境の変化に順応するタイムラグに影響を受ける可能性があると考える.そしてQOMのみ他の評価変数との相関を示さず,独立的な因子の介入を示唆した.この点については意識的に使用することが,クオリティーに影響を与えるわけではないことが要因であると考える.また,QOMのみ独立した因子を含んでいることを意味していると考える.
【結語】当院CI療法は経時的変化を認めた.しかし,各評価変数の経時的変化には違いを認めた.改善効果は各因子が並列的に時間経過を成すのではなく,独立的に経過する可能性があり,各変数に対して着目して経過を追う必要性が示唆された.