第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-6] ポスター:脳血管疾患等 6

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PA-6-19] 食材サンプルを使用した非利き手での卵焼き調理訓練の効果検証

中川 友紀 (大阪人間科学大学保健医療学部)

≪序論≫脳血管疾患患者に非利き手で調理訓練を実施することがあるが,感染症対策により食材を使用した調理訓練ができないことがある.代替として,食品サンプルは入手できるが,食材サンプルの販売はほとんどない.
≪目的≫安価で手に入れられやすい材料を使用した食材サンプルを作成して調理動作を行い,その調理訓練の効果を検証すること.
≪方法≫卵の食材サンプルを作成して卵焼き調理訓練を実施した.材料は,水,ホウ砂(健栄製薬株式会社),PVA合成洗濯のり(大創産業株式会社),白色,黄色,オレンジ色の水彩絵の具 (大創産業株式会社)を使用した.食材サンプルは,a,黄身サンプル,b,白身サンプル,c,卵生地サンプルとした.健常大学生6名を対象に非利き手で食材サンプルを使用した卵焼き調理訓練を連続5日間実施した.調理工程は6つであった:1,黄身サンプルと白身サンプルを菜箸で混ぜ合わせる,2,フライパンに流し込む,3,準備されている卵生地サンプルを菜箸で束状に巻いていく,4,まな板へ移す,5,四等分に切る,6,お皿へ盛り付ける.評価では,調理開始から終了時点までの速度(秒)を計測した.撮影した動画をもとに動作分析を実施した.本研究は大阪人間科学大学の倫理委員会の承認を得て実施された(承認番号: 2022-12).
≪結果≫
1日目の調理速度をベース(100%)として5日目の変化率(%)を示す.6名の変化率の平均値±標準偏差は52±19%(最小値31% - 最大値79%)であった.黄身と白身の混ぜ方が円滑になったりして全対象者ともに調理速度が減少した.箸の操作性は,上肢から手指にかけて過剰な握り込みが減少し,対象物をつかみ損ねることやつまみ直すといったエラーが減少した.
≪考察≫卵の食材サンプルを使用した非利き手での卵焼き訓練を5日間実施することで,調理速度の減少や箸の操作性の向上といった効果が得られた.今回の食材サンプルを使用することで,臨床現場での調理動作に応用できる可能性が示唆された.