[PA-6-6] 重度上肢麻痺を呈した脳卒中患者に対する対面リハビリテーションに追加した遠隔リハビリテーションによる介入
【はじめに】遠隔医療とは情報通信機器を活用した健康増進,医療に関する行為である(厚生労働省).海外では遠隔医療の運用が実践されている.リハビリテーション(以下,リハ)分野においても情報通信機器と通信技術を活用して,療法士が物理的に離れた環境でのリハ介入(以下,遠隔リハ)が2000年代から実践され,脳卒中患者においても遠隔リハに関する報告がなされている.(Lumら,2004)今回,脳卒中で重度の上肢麻痺を呈した方にリハ施設において週1回の対面リハと情報通信技術(Information and Communica-tion Technology:以下,ICT)を活用した遠隔リハを行った.その結果,上肢機能と日常生活場面での麻痺手の使用頻度向上を認めたので報告する.
【事例紹介】事例は脳出血(左被殻)にて右片麻痺を呈し,医療機関での入院を経て,発症から142日後に当保険外リハ施設の利用を開始された50歳代右利き男性である.開始時はFugl- Meyer assessment(FMA)の上肢項目10/66点,Motor Activity Log(MAL)のAmount of use(AOU),Quality of movement(QOM)0.07/点.筋緊張はModified Ashworth scale(MAS)肩外旋1,肘伸展1+,手関節背屈,手指2であった.なお本報告に際して,事例に同意を得ている.
【経過・介入】対面リハ:第1期(介入〜1ヶ月):対面リハは1回/週で75分間実施した.上肢の随意性向上を目的に近位部と末梢部に対して機能的電気刺激を用いた単関節運動を肩〜手指に開始した.テーブルで両手を使用した肩屈曲・肘伸展運動を伴うタオルワイピングも実施した.同時期に病院にて痙縮の軽減を目的に上肢に対するボツリヌス毒素療法がなされた.第2期(1ヶ月〜2ヶ月):上記の単関節運動に加え機能的電気刺激とスパイダースプリントを使用してお手玉を使用してのリリースが可能となりその反復練習を行った.第3期(2ヶ月〜3ヶ月):単関節運動は継続しつつ,ブロックの移動は前方下垂位で肘伸展運動を伴うお手玉移動を実施した.ICTを使用した遠隔リハ:第1期(介入〜1ヶ月):REHASAKU(株式会社リハサク)というクラウド型Webサービスを利用した.このサービスでは,自主練習で実施してもらいたい内容の運動を動画で送信することができる機能や,チャット機能を使用することができる.利用者はスマートフォンやタブレットなどの電子機器からこちらを使用することができ,療法士とのやりとりが可能となる.これらを用いて,自主練習動画を送信し,チャット機能では適宜練習の指導や修正を行った.内容としては臥位で両手動作の肩屈曲動作,両手動作でタオルワイピングを依頼した.第2期(1ヶ月目〜2ヶ月目):手関節・手指随意性向上を目的にミラーセラピーを追加した.第3期(2ヶ月目〜3ヶ月目):スパイダースプリントを使用したお手玉運びを追加した.また,これらの動画を送信し自宅で平均6日/週は自主練習を実施するよう指導し,加えて1回/週(15分〜30分),Zoom Cloud Meetings(Zoom Video Communications,Inc)を用い,上記の自主練習内容の動作確認・指導を行った.
【結果】FMAの上肢項目(介入時→3ヶ月):10→15/66点,MAL-AOU:0.07→0.6/5点,QOM:0.07→0.5点. MAS肩外旋0,肘伸展,手関節背屈,手指1.実生活においては上衣の袖の上げ下げや,タオルを使用した洗顔,小物(財布など)を把持する際に左上肢の参加が見られた.
【考察】先行研究では,慢性期のFMAの臨床的に意義のある最小変化量Minimum Clinical Importance Difference(MCID)を4.25点,MAL-AOU0.5点と報告しており,本事例においてMCIDを超える改善を認めた.重度上肢運動麻痺に対し,対面リハに追加したICTを用いた遠隔リハアプローチは機能改善及び,実生活での麻痺手の使用頻度向上の一助となる可能性がある.
【事例紹介】事例は脳出血(左被殻)にて右片麻痺を呈し,医療機関での入院を経て,発症から142日後に当保険外リハ施設の利用を開始された50歳代右利き男性である.開始時はFugl- Meyer assessment(FMA)の上肢項目10/66点,Motor Activity Log(MAL)のAmount of use(AOU),Quality of movement(QOM)0.07/点.筋緊張はModified Ashworth scale(MAS)肩外旋1,肘伸展1+,手関節背屈,手指2であった.なお本報告に際して,事例に同意を得ている.
【経過・介入】対面リハ:第1期(介入〜1ヶ月):対面リハは1回/週で75分間実施した.上肢の随意性向上を目的に近位部と末梢部に対して機能的電気刺激を用いた単関節運動を肩〜手指に開始した.テーブルで両手を使用した肩屈曲・肘伸展運動を伴うタオルワイピングも実施した.同時期に病院にて痙縮の軽減を目的に上肢に対するボツリヌス毒素療法がなされた.第2期(1ヶ月〜2ヶ月):上記の単関節運動に加え機能的電気刺激とスパイダースプリントを使用してお手玉を使用してのリリースが可能となりその反復練習を行った.第3期(2ヶ月〜3ヶ月):単関節運動は継続しつつ,ブロックの移動は前方下垂位で肘伸展運動を伴うお手玉移動を実施した.ICTを使用した遠隔リハ:第1期(介入〜1ヶ月):REHASAKU(株式会社リハサク)というクラウド型Webサービスを利用した.このサービスでは,自主練習で実施してもらいたい内容の運動を動画で送信することができる機能や,チャット機能を使用することができる.利用者はスマートフォンやタブレットなどの電子機器からこちらを使用することができ,療法士とのやりとりが可能となる.これらを用いて,自主練習動画を送信し,チャット機能では適宜練習の指導や修正を行った.内容としては臥位で両手動作の肩屈曲動作,両手動作でタオルワイピングを依頼した.第2期(1ヶ月目〜2ヶ月目):手関節・手指随意性向上を目的にミラーセラピーを追加した.第3期(2ヶ月目〜3ヶ月目):スパイダースプリントを使用したお手玉運びを追加した.また,これらの動画を送信し自宅で平均6日/週は自主練習を実施するよう指導し,加えて1回/週(15分〜30分),Zoom Cloud Meetings(Zoom Video Communications,Inc)を用い,上記の自主練習内容の動作確認・指導を行った.
【結果】FMAの上肢項目(介入時→3ヶ月):10→15/66点,MAL-AOU:0.07→0.6/5点,QOM:0.07→0.5点. MAS肩外旋0,肘伸展,手関節背屈,手指1.実生活においては上衣の袖の上げ下げや,タオルを使用した洗顔,小物(財布など)を把持する際に左上肢の参加が見られた.
【考察】先行研究では,慢性期のFMAの臨床的に意義のある最小変化量Minimum Clinical Importance Difference(MCID)を4.25点,MAL-AOU0.5点と報告しており,本事例においてMCIDを超える改善を認めた.重度上肢運動麻痺に対し,対面リハに追加したICTを用いた遠隔リハアプローチは機能改善及び,実生活での麻痺手の使用頻度向上の一助となる可能性がある.